表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
美貌の騎士団長は、黒髪の薬屋しか見えていない。 ― 黒髪の青年に一途な騎士団長の止まらない溺愛 ―  作者: ぷにまる


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

8/8

第8章:護衛という名の過保護



王都ヴァルディア。

朝市の時間になると、石畳の通りに露店が並び、

焼きたてのパンの香りが辺りを満たす。

野菜、果物、布地、香辛料――王都らしい喧騒と活気が広がっていた。


その中を、黒髪の青年が歩いていた。

アレンだ。


背には薬草採取用の籠。

今日はこのあと、少し離れた森まで足を運ぶ予定だった。


「よし」


北区から森へ向かう街道を歩く。

慣れた道。

普段なら危険は少ない。

……普段なら。


「アレン」


背後から、低く落ち着いた声がかかる。


振り向くと、銀髪の騎士――レオンが立っていた。


「騎士様」


アレンは思わず声を上げる。


「こんな朝から巡回ですか?」


レオンは短く答えた。


「そうだ」


嘘ではない。

だが目的は“ここに来ること”だった。


「森へ行くのか」

「薬草採りです」


アレンが籠を示すと、レオンは一拍置いて言う。


「同行する」

「え?」


アレンは瞬きを繰り返す。


「騎士様が?」


「危険がある」


「そこまでですか?」


「ある」


即答。

アレンは苦く笑った。


「でも忙しいですよね、騎士団長なのに」

「問題ない」


レオンは歩き出す。


「行くぞ」


完全に“同行”が確定している口調だった。

慌ててアレンも追いかける。


「騎士様」


「レオンでいい」


まただ。最近よく言われる。

アレンは困ったように笑って首を振る。


「恐れ多いので騎士様で」


レオンは小さく息を吐いた。


「……好きにしろ」


二人は街道を歩く。

朝の街道は静かで、時折馬車が通るのみ。


やがて森の入り口が見えてきた。


「この辺りです」


アレンは森の中へ入っていく。


薬草の香り、湿った土の匂い、鳥の声。

アレンは慣れた手つきで薬草を摘んでいく。


「これ、解熱薬になります」

「こっちは傷薬に」


レオンは無言で見守っていた。


手際の良さ。

迷いのない動き。

そして――やはり濃い魔力。


悪意の気配はまるでない。

むしろ穏やかで澄んだ魔力だ。


その時――

レオンの視線が一瞬だけ鋭くなった。


森の奥。

微かな“気配”。


濁った魔力。


(……いる)


レオンの表情が変わった。


「アレン」

「はい?」


「近くにいろ」

「え?」


次の瞬間。


森の奥――

木の影で、紫のローブがひらりと揺れた。

ほんの一瞬。

すぐに消える。


転移魔法。


レオンの瞳が細くなる。


(闇魔導士……)


確信だった。

しかしアレンはまったく気づいていない。


「騎士様、どうしました?」


「今日はここまでだ」


「え?」


「帰る」


レオンはアレンの腕を軽く掴み、


「今すぐだ」


その声は明らかに急いでいた。

アレンは驚きつつ頷く。


二人は森を抜け、街道へ戻る。


少し歩いたところで、レオンが立ち止まった。


「……狙われている」


「え?」


「お前だ」


アレンの顔が固まる。


「闇魔導士。魔力搾取の犯人だ」


静かな声が告げる。


アレンはしばらく沈黙し、やっと呟いた。


「……僕?」


「魔力が高い」


レオンは真っすぐに言葉を投げる。


「だから狙われる」


アレンは苦笑した。


「そんな……そこまで高くないですよ」


しかしレオンの表情は変わらない。


「冗談ではない」


その真剣さに、アレンは何も返せなかった。

しばらく沈黙が続き、アレンはふと顔を上げる。


「……騎士様」


「何だ」


「守ってくれてるんですね」


レオンはわずかに視線を逸らした。


「仕事だ」


アレンはふ、と笑う。


「ありがとうございます」


その笑顔を見た瞬間――

レオンの胸の奥が、不意にざわついた。


理由の分からないざわめき。

それでもただ一つだけはっきりしていた。


(守りたい)


何があっても。


◆ ◆ ◆


同じ頃、森の奥――。


薄暗い木陰に、紫のローブをまとった男が佇んでいた。

闇魔導士だ。


「……厄介な奴だ」


低く呟いた声音には、苛立ちと愉悦が混じる。


思い浮かべているのは銀髪の騎士。

魔力の塊のような、あの規格外の男。


しかし闇魔導士は、すぐに口元をいやらしく歪めた。


「だが……本命は別だ」


黒髪の青年。

あの澄んだ魔力の波動。


「――古代血統かもしれない」


呟きは確信に近かった。

瞳が妖しく細まり、ローブの奥で呼吸が震える。


「皇帝陛下が……お喜びになる」


ぞくりとした笑いが森に溶ける。


静かに、確実に。

闇は王都へ――そして、ひとりの青年へと迫っていた。




アレン→僕、そんなに狙われてるの? もしかして気づかれてる……? それはまずいな。どうしよう。

レオン→巡回を強化する必要があるな……主にアレンの周辺だが。

エドガーに頼むべきか? ……いや、あいつに“お願いする”のは、正直気が進まない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ