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美貌の騎士団長は、黒髪の薬屋しか見えていない。 ― 黒髪の青年に一途な騎士団長の止まらない溺愛 ―  作者: ぷにまる


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第6章:王都の違和感

目標までもうちょい。頑張れ、自分。



王都ヴァルディア南区。

朝の市場は今日も活気に満ちていた。


「アレンー!」


八百屋の店主が大きく手を振る。


「今日も薬草か?」

「はい。良いのがあれば」


アレンは笑顔で返した。

黒髪を軽く束ね、肩には布袋。

すっかり市場に馴染んだ薬屋の青年らしい姿だ。


「ほら、これ持ってけ」


店主が差し出した籠には、新鮮なミントがぎっしり。


「え、いいんですか?」


「余ってんだよ。薬屋なら使うだろ」


「ありがとうございます」


丁寧に頭を下げる。

地方から出てきた頃は心細かったが、

今ではこの王都の温かさにもすっかり慣れていた。


――平和だなぁ。


そう思いながら歩いた、その瞬間だった。


ぞわり。


背筋を撫でるような嫌な感覚。


「……ん?」


立ち止まり、周囲を見回す。


賑やかな市場。

人々の声。

いつも通りの景色。


だが――空気の“流れ”が違う。


普通の人なら気づかない。

だがアレンには、空気に溶け込む魔力の癖がなんとなく分かる。

その流れが乱れている気がした。


(……なんだろう)


胸に小さな不安が残る。


だがその不安は――


「アレンくん!」


パン屋の娘が元気よく手を振った瞬間、日常のざわめきに溶けていった。


「焼きたてあるよー!」

「行きます!」


アレンは笑顔で応じ、市場を後にした。


――けれど。


昼過ぎ、薬屋の扉が開く。


チリン。


「いらっしゃ……」


言いかけて、言葉が止まる。


銀髪。

長身。

黒い外套に刻まれた紋章。


魔法騎士団長、レオン。


「また来てくれたんですね」


アレンが小さく笑うと、レオンは店内を一周見回し――


「異常はないか」


開口一番、それだった。

アレンは苦笑する。


「いきなりですね」


「闇魔導士の被害が出た。南区で魔力搾取だ」


短く告げられた言葉に、アレンの表情が僅かに揺れる。


「……そうなんですね」


「ここから近い訳ではないが、警戒しろ」


アレンは目を丸くした。


(心配……されてる?)


一瞬よぎる。

だがすぐに頭を振り、心の中で訂正した。


(違う、仕事だ。騎士団長の職務だよ)


「気を付けます」


レオンは何も言わない。

沈黙が少しだけ落ちる。


アレンは棚から薬瓶を手に取り、話題を変えた。


「そうだ。この前の薬、どうでした?」

「良かった。効いた」


相変わらずの即答だ。

アレンの口元がふわりと緩む。


薬屋として、これほど嬉しい言葉はない。


レオンはふと棚を眺める。

整然と並ぶ薬草や瓶。

落ち着いた静けさ。


「……平和だな」


ぽつりと漏れた声に、アレンが笑う。


「薬屋ですから。怪我人が来ない方がいいんですよ」


確かに。

騎士団とは真逆の世界だ。


レオンが何かを言おうとした時――


外から悲鳴が上がった。


「きゃあ!」


二人の動きが止まる。

レオンの眼差しが鋭くなった。


「外だ」


すぐに扉へ向かい、アレンも後を追う。


通りの奥では、男が倒れていた。


「大丈夫ですか!」


アレンが駆け寄り、男の顔色に息を呑む。

青ざめ、震えていた。


「ま……魔力が……」


レオンは状況を見てすぐに判断した。


「……またか」


男の魔力は空。

魔力搾取の特徴そのものだ。


周囲がざわつく。


「闇魔導士……?」

「王都でこんな……」


レオンは気配を探る。

だが――犯人はすでに遠くへ逃げた後だった。


「副団長に連絡しろ」


騎士団員が急ぎ魔法通信を飛ばす。


アレンは倒れた男の脈を確かめた。


「命は大丈夫です。でも……魔力がほとんど……」


回復には相当な時間がかかるだろう。

レオンは治療するアレンを見て、ほんの一瞬考えた。


――この青年は。

――確実に狙われる。


強すぎる魔力。

隠しきれない善良さ。

そして何より――あまりに無防備だ。


レオンは決心した。


「アレン」


「はい?」


「しばらく……夜、一人で出歩くな」


アレンは一瞬きょとんとする。


「え?」


レオンは真顔だった。


「危険だ」


ただ、それだけを端的に。


アレンは肩をすくめ、苦笑する。


「過保護ですね」


レオンは否定しなかった。

むしろ。


「そうかもしれない」


と静かに言った。

アレンの胸に、なぜか微かに温かいものが灯る。


――しかし。


誰も気づいていない。

王都の影。

紫のローブが揺れる。


「……面白い魔力だ」


闇魔導士の口元が吊り上がる。


「こちら、か」


その瞳が――

まっすぐに薬屋の方角を見据えていた。





アレン→最近、襲われる人が増えてきて心配だ。自分のことより、周りの人たちのほうが気になるんだよな……。誰も傷つかなきゃいいんだけど。

レオン→気づけば、あの青年を名で呼んでいた。気安さが過ぎたかもしれん……。

王都を揺るがす被害は見過ごせないし、国民であれ守るのは騎士団長としての務めだ。

それでも――アレンが傷つくことだけは、何よりも容認できない。

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