第2章:朝市に現れた闇と、銀の救い
土日で第10章くらいまで投稿できる様、準備進めてます。
朝の王都北区は、すでに活気に満ちていた。
石畳の道に並ぶ露店からは、
焼きたてのパンや香ばしいスパイスの香りが漂い、
商人たちの威勢のいい声が飛び交う。
朝市のざわめきの中、アレンは籠を肩にかけ、森へ薬草採取に向かって歩いていた。
「今日はあの辺りを中心に…うん、あの花は昨日より少し大きくなってるかも。」
独り言をつぶやきながらも、意識は周囲の人々の笑い声や荷車の音に自然と耳を傾ける。
日常のざわめきの中で、アレンは穏やかな時間に浸っていた。
――その瞬間、冷たい気配が迫る。
「っ…!」
突然、紫のフードを被った影が現れ、アレンに手を伸ばした。
手がかすめそうになった途端、魔力が吸い取られる予感
――直感で危険を感じたアレンは、咄嗟に後ろへ飛び退く。
「っ……?!」
声を上げる間もなく、街道の喧騒は一瞬止まったように静まり返る。
露店のパンの匂いも、荷車の軋む音も、すべてが遠くなる。
かろうじて避けれたが、触れられるとまずいかもしれないと心がざわめく。じりじりと後ずさり影から距離をとる。
再度、影に狙われる。
後方は壁でこれ以上さがることができない。
(だめだ!避けれない!)
アレンは身体をこわばらせる。
そのとき、低い声が響いた。
「伏せろ!」
銀髪の長身が、風のように駆けてアレンと影の間に
素早く入り盾で防いだ。
長く伸びたマントが舞い、石畳に影を落とす。
レオン・ローゼリア、魔法騎士団長の姿だ。
軽く指先を振ると、紫のローブの影が吹き飛ばされ、
街道沿いの露店が一瞬揺れた。
アレンは目を見開き、戦闘の迫力に息を飲む。
「……騎士様…!」
「落ち着け、安全なところへ!」
レオンの声は冷静で、しかし鋭く響く。
視線は、ただ戦う相手に向けられているわけではなかった――アレンを守るためだ。
闇魔導士は再び手を伸ばすが、レオンの剣に弾かれた。
紫のフードは少しずれ、口元だけが見える。
性別不明、冷たくて不気味な雰囲気が漂う。
「引き時か。」
紫のフードの人物は小さく呟き、一瞬で姿を消した。
「転移魔法か…」
レオンは無表情で、アレンの方をちらりと見る。
アレンは魔力の特異性を悟られたのかと少し動揺するが、
胸の奥ではほっとした気持ちもあった。
守ってくれる存在――安心感が体に広がる。
(――もう、大丈夫)
アレンは心でつぶやき、背を伸ばして立ち上がる。
籠も見ると無事なようだ。
レオンは戦いを終えると、街道沿いの露店や石畳を軽く見回す。
混乱は最小限、商人たちは目を丸くしつつも、
レオンの的確な指示により普段の朝市の喧騒に戻りつつあった。
「……毎日、何かしらトラブルに巻き込まれているのか?」
レオンの声に、アレンは少し笑って答える。
「……いつもは違うんですが」
(我ながら説得力がないな。一昨日も森で見られているし……)
二人の間に微妙な沈黙が流れる。
視線は自然と合い、アレンはほんの少し顔を赤くし視線を逸らした。
レオンはその微妙な反応を見逃さず、
心の奥で小さな興味が芽生える。
「……自宅まで送る。」
「え?」
アレンの驚きに、レオンは微かな笑みも見せずに、
ただ静かに一歩前へ出た。
薬屋へ向かう道すがら、朝の光が二人の影を長く伸ばす。
「――騎士様、ありがとうございます。」
アレンは素直に感謝を述べ、隣で頼もしげなレオンの姿を感じていた。
――魔力の高さに目を付けられたことは不安だったが、
守られる安心感に胸が少し温かくなる。
薬屋の前に着くと、黒猫が背中の白い月模様を見せて伸びをした。
アレンは籠を置き、猫に軽く触れる。
「……今日も、騎士様のおかげで無事に帰れました。」
「ふむ。」
レオンは静かに頷き、朝のざわめきに溶け込むように去っていった。その背中に、アレンは何か言いようのない胸の高鳴りを感じた――
アレン→ 騎士様が駆けつけてくれなかったら、どうなってたんだろ。あの魔導士、絶対ヤバい。……こわ。
レオン→まさか、あの青年が闇魔導士の標的とは。警戒を怠らぬよう見守らねばなるまい。




