第7章:黒翼の戦場 ― 烏(からす)と連の共闘、影群の正体
夜の街が、ざわり、と音を立てた。
風もないのに木々が震え、電柱の影が細かく波打っている。
「……来る」
連が呟いた瞬間、さやの背後の壁から“黒い手”がぬるりと伸びた。
「さや、伏せろ!」
連が飛び込み、さやを抱き寄せた直後——
壁の影はひしゃげた肉塊のように歪み、そこから影の化け物が這い出した。
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◆ 影群の正体の一端
影は人型をしていない。
だが“人の形だったもの”のようでもあった。
ひゅう、と空気が吸われる。
> 『——あれは、我が一部を喰ったモノだ』
頭の奥に烏の声が響く。
「烏……あれが、何なんだ?」
> 『かつて我が黒き怒りが漏れ落ちた“影の残滓”。
それが人間の負の感情に触れ、形を得た異形……それが影群』
連は息を呑む。
“烏の怒りの成れの果て”——それが、今さやを狙っている。
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◆ 黒翼の片鱗がさらに開く
影群が連とさやへ同時に飛び掛かった瞬間——
連の背後から、黒い羽根が爆ぜた。
連の影が膨れ上がり、床を叩く黒い衝撃波となる。
> 『行くぞ、連。
我はお前の影——お前は我の器。
今だけは一つになれ!』
黒い影の腕が連の右腕と重なり、
連の拳が“影ごと”発光したように見えた。
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◆ 初の本格的“共闘”
連が拳を振り抜いた瞬間、
黒翼の羽根が円弧を描きながら影群を切り裂いた。
その動きは、まるで烏自身が戦っているようで——
同時に、連の肉体がその力に耐えきれず震えた。
「う……ぐっ……! 力が……!」
> 『耐えろ、連! これはお前が望んだ力だ』
影群が再び四方から襲う。
床から、天井から、壁から、影が獣のように飛び出してくる。
さやを背後に庇いながら、連は叫ぶ。
「さやには……触らせないッ!!」
黒翼の影が羽ばたき、影群を一斉に吹き飛ばす。
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◆ 影群の“本当の狙い”
烏が低く呟いた。
> 『……狙いは、連ではない。
影群の目的は“さや”。
今の彼らは——前世の烏が愛した彼女の魂を喰らおうとしている』
「な……なんで……!」
さやの顔から血の気が引く。
> 『前世で我が愛した者……その魂を再び汚染し、
“怒り”を完全に再誕させるためだ』
連の胸が熱くなった。
「そんなこと、絶対にさせるかよ……!」
影群が一斉に咆哮した。
黒い波がさやに迫る——
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◆ 烏と連の“同時咆哮”
連と烏の声が重なった。
「「——消えろッ!!」」
黒翼が解放され、
部屋から外へ向けて巨大な影の奔流が放たれる。
黒い嵐は影群を飲み込み、
渦の中心で影が悲鳴をあげながら霧散していく。
光が戻ったとき——
さやの目には、
黒翼を背負った連の姿が映っていた。
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◆ 黒翼の戦場の終わり
連は膝をつき、大きく息を吐いた。
「……はぁ……はぁ……終わった……のか……?」
> 『いや、始まったばかりだ。
影群はただの“残滓”。
本体が現れるのは——これからだ。』
連は、
震えるさやの手をしっかりと握った。
「何が来ても……俺が守る。
今度こそ、絶対に失わない」
さやの目に涙が浮かぶ。
その背後で、連の影が静かに揺れた。
烏はそこにいる。
連の影として——
そして、連の怒りと願いの力として。




