7 糖度2 (ほとんど甘さはありません)
困ったことが起きました。
ダンスバトルイベント発生できませんでした……。
なぜなら、私はディラン様にエスコートをされてダンスパーティーに出席することになったからです。
そもそもダンスバトルイベントは、ディラン様が主人公をエスコートすることになり、学院のダンスの授業中にディラン様と主人公が練習することになって、今までずっとディラン様のダンスのパートナーを務めていた私ことキャメロンの相手役がいなくなったことが発端で起きたイベントだった。
ーー……ところが!!
私のお相手は、ディラン様。
そして主人公であるナターシャ様のお相手は、ブルーノ様。
みんな相手がいる。
みんなハッピー!!
みんな幸せ。
なんの問題もありません。
お互いパートナーとダンスの練習しています。
ーー……そう、バトルのしようがないのです!!
しかし、私はライバル令嬢。
これではいけないと思って『ナターシャ様のダンスが見たいですわ』と言ってみたところ、ナターシャ様は『わかりました』と微笑んで、ブルーノ様と踊っている姿を見せてくれた。
流れるような優美な動きに思わず拍手を送ってしまった。
きっとこれなら、ご褒美も貰えるだろう。
ただ、これはダンスバトルか? と聞かれれば10人中9人は違うと答えるかもしれない。
ナターシャ様とブルーノ様が踊られた後、私がナターシャ様のダンスを褒めちぎっていると、ディラン様が少しだけ拗ねた様子で『私たちだって優美だろ?』とおっしゃって本気ダンスをナターシャ様とブルーノ様に披露したのでこれがバトル(?)だったかな?と思うことにしました!!
ただ『私たちだって優美だろ?』と拗ねた様子で言ったディラン様は可愛すぎた!!
いつもは美しくてカッコイイのに、可愛いなんて……。
ディラン様は本当にどこまで行っても得難い人類の宝だ。
どうしてこんなに可愛いのだろう? 本当に素敵だ。
ああ、好きすぎる!!
「ディラン様がご到着になりました」
と、私はドレスに着替えて玄関でディラン様のご到着を待ちながら、数日前のことを思い出していた。
そして今日はいよいよ、ダンスパーティーの日だ。
今日はディラン様が自宅まで馬車で迎えに来て下さるというので甘えることにした。
「キャメロン、今日も綺麗だね。こんな美しい君の隣に立てるなんて私は幸せ者だな」
そう言うと、私のおでこにキスをしてくれた。
こんなに褒められて舞い上がってしまいそうになるが、今の私には舞い上がるヒマはない。
なぜなら、ディラン様の正装姿が目の前に!!
普段にお姿もそれはもう素敵だが、正装姿の破壊力は凄まじい。
美しい!! 神々しい!! ビューティフルだ!!
身体中の血液がぐるぐると高速で入れ替わっている気がする。
今、1歳半は確実に身体中の細胞が若返った気がする。
「ディラン様こそ!! 鍛えた方でないと似合わないその服をそんなにもさりげなくでも壮麗に着こなし、胸に輝く飾緒より美しく煌めく瞳!! ディラン様の日頃の努力の賜物ですそのお姿その物が芸術品の様ですわ!! 私もディラン様のお傍にいられて幸せです!!」
私はディラン様の初めてみた正装姿につい熱く語ってしまった。
するとディラン様が固まっていた。
(しまった!! こんなの怖すぎるよね!! つい暴走してしまった!!)
私がやってしまったという反省していると、小さめの声が聞こえた。
「……ありがとう」
お顔を見るとディラン様が首まで真っ赤にして、照れた顔をして首を触っていた。
最近気づいたのだが、ディラン様は困ったり、恥ずかしい時に首を触る癖がある。
「いえ……」
つられて私まで恥ずかしくなってしまった。しばらく2人でもじもじと視線を彷徨わせた後、ふと目が合った。
「行こうか」
ディラン様がまだ赤い顔で私に手を差しのべてくれた。
「はい」
私はディラン様の手を取って馬車に向かった。