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2 糖度1 (甘くありません)




 ディラン様が帰って、しばらくすると頭がだいぶはっきりとしていた。


(私ったら、大事な場面で噛むなんて……しかも、2回もキスって……心臓壊れる!!

 血管頑張れ!!)


 私は思わずベットの中でゴロゴロとのたうち回りながら先程のことを思い出していた。


 ディラン様は想像を絶する美しさだった。

 顔も声も最高だ。

 まさにこの世界の生み出した至高の芸術だと言えるのではないだろうか?

 いや、言えるはずだ!

 それほど美しく、優しさに満ち溢れていた。


(私、よく鼻血出なかったな~。きっとキャメロンは幼い頃から見ていたから鼻の粘膜に耐性があるのね……)


 「ああ、好きすぎる……」


 私は枕を抱きしめながら呟いた。


 ディラン様の美しさにのたうち回りながらも、同時に私は自分が主人公のライバル令嬢であるキャメロンであることも思い出していた。


 この乙女ゲームは2人が付き合ってからを楽しむというコンセプトだったので、付き合うきっかけが簡単すぎるのだ。ディラン様はあまりに簡単に主人公に落ちるので『チョロヒーロー』と呼ばれていた。

 そこもまたいいのだが♡

 乙女ゲームの主人公は辺境伯の娘、ナターシャだが、プレイヤーが名前は自由に変えられる設定だったのでナターシャ(?)という名前ではない可能性があるので、『転校してきた辺境伯の令嬢』と思っていた方がいいかもしれない。

 その主人公ナターシャ(?)が偶然、ディラン様とハプニングキスをしてしまうことで、2人は恋に落ちてしまうのだ。このゲームの凄いところは好感度が全くなくてもハプニングキスイベントを起こせば恋人になるところだった。


 この主人公、なかなかの凄腕の令嬢で、頭はいいし、語学は堪能。社交性に優れ、ディラン様を後に賢王と呼ばれる程にまで引き立てるハイスペック令嬢なのだ。


 一方私はというと、途中から入学して、ディラン様の愛を奪った主人公が許せずに、何かと主人公に張り合おうとするライバル令嬢だ。

 

 ここで確認したいことは、私は『ライバル令嬢』というところだ。

 決して『悪役令嬢』ではない。

 つまり、言い方を変えるとヘタレ令嬢でもある私は、ダンスやテストの時にあくまで主人公と張り合うだけなのだ。

 

 だから主人公を虐めて断罪されたり、卒業式の日にみんなの前で婚約破棄を言い渡されたり、幽閉されたりという過激な結末ではない。

 最後は、『あなたになら、ディラン王子殿下をお任せできるわ』と言って、かっこよく主人公と握手を交わし、身を引くのだ。

 さらに主人公との恋愛成就した4章以降では、王妃教育に悩む主人公を『あなたのディラン王子殿下への想いはその程度なの?!』と言って、落ち込んでいる主人公に発破をかけ、2人の恋を応援したりするのだ。



《 模 範 的 な 当 て 馬 令 嬢 》



それが私なのだ!!



冷静になって自分の今後を考えてみた。



ーー…………私つらくない?



 今日、実際ディラン様にお会いしてわかったが、ディラン様は私にも、とても、とても優しい。しかも、わざわざお見舞いに来てくれたり、背中をさすってくれたり、おでこにキスをしてくれたりとかなり、私たちの仲は良好のように思える。


 なのにこれからディラン様は主人公と偶然、キスをして恋をするのだ。

さすがに恋をしたらこんなに優しくはしてくれないだろう。婚約者として表向きにはお見舞いには来てくれるかもしれないが、背中をさすってくれたり、おでこにキスをしてくれたりはしないだろう。


 つまり、私は今日、ディラン様との貴重な甘い思い出作りをしたのだ。ディラン様と一緒にいられないのはかなり悲しいし、寂しいが、主人公はかなりのハイスペック令嬢だ。彼女が王妃になれば、ディラン様は確実に幸せになれるだろう。


 ちなみにゲームではライバルの私のバロメーターを高くすれば高くするほど、エンディングの後のご褒美エピソードが出現する仕組みになっていた。つまり私が手ごわい令嬢になればなるほど、ディラン様は主人公と幸せになれるのだ。


「最愛の人の幸せのために頑張ろう!」


 こうして私は、ディラン様の幸せのためにライバル令嬢として頑張ることを決意したのだった。





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