17 折角転生したのに、婚約者が好きすぎて困ります!【最終話】
「まぁ!! ナターシャ様とブルーノ様の婚約が正式なものになったのですか!!」
「そうだよ」
私は今、王妃教育が終わって、ディラン様の私室に遊びに来ていた。
ディラン様は優雅にお茶を飲みながら重大な事を教えてくれた。
私は嬉しくて大きな声を出してしまった。
「それで、式はいつですの? ディラン様はもちろんご出席されるのですよね? ああ、ナターシャ様、絶対に絶対にブルーノ様と末永くお幸せになってほしいですわ~~♪ これはお祝いですね!!」
私が主人公であるナターシャ様のお相手が決まったことを喜んでいると、ディラン様が少しだけ不機嫌そうに言った。
「はぁ~。これだから教えたくなったんだ。教えたら絶対に君はナターシャの婚約話に夢中になるだろう?」
私がナターシャ様の動向を気にしているのは、あくまで主人公の今後を気にしているだけだった。なぜなら、突然ディラン様がお相手になるというような不測過ぎる事態が起きないとも限らない。でも主人公がブルーノ様という運命の相手を見つけたのだ。
これで絶対にディラン様が主人公のお相手になることはない。
「当然です。私、ずっとナターシャ様の幸せを見守って来たのです!! それがようやく叶ったのです!! こんなに嬉しいことはありません!!」
実は正直、少しだけヒヤヒヤした。もう一人の攻略対象であるディラン様の護衛のヘンリー様とブルーノ様2人で揉める展開になったのだ。こうなっては主人公がバットエンドの可能性もある。そうなると、困ったことになるかもしれない。
私はそうならないように、ディラン様に何度もお願いして、主人公が好きな人と幸せになるように裏から手を回したり、表からも手を貸したり、とにかく必死で主人公の幸せのために動いたのだ。
それがようやく報われたのだ!! こんな嬉しいことはない。
「ナターシャとブルーノが君に凄く感謝していたよ」
「2人が幸せになってくれればいいのです」
私がそう言った後、ディラン様は少し拗ねたように言った。
「確かにナターシャとブルーノの婚約は嬉しいことだけど……もうすぐ卒業式と卒業舞踏会があるだろ? 必要な物があるだろう? 何も言わないの??」
そうだ。ゲームのクライマックスも卒業舞踏会だった。
その時に、主人公は運命の相手に送られたパーソナルジュエルのついたアイテムを身に着けて出席する。
パーソナルジュエルとは、その人の瞳と同じ色をした石のついた装飾品のことをいうのだ。
ちなみにディラン様は瞳と同じ色の深い藍色のネックレスだった。
(ディラン様のお相手は主人公では、ないわよね……)
私は少しだけ不安になってディラン様を見つめた。
「はい。あの……ディラン様は私と一緒に出席してくれますか?」
するとディラン様の声が少しだけ低くなった。
「ふ~ん。そんなこと言っちゃうんだ? 僕の愛、伝わってないってことだね」
「きゃあ」
私はディラン様に抱き上げられ、笑っていない瞳で笑いかけられた。
「キャメロン、今日はもう何も予定がなかったよね?」
「は、はい」
私が恐る恐る答えると、ディラン様にベットに連れて行かれ、仰向けに寝かされて両手を絡めると唇にキスをされた。
チュッツ♡
私はキスだけで、ディラン様のことしか考えられなくなってしまった。
ディラン様はキスをすると、繋いでいた手を離して私の左手を取った。
すると指に、藍色に輝く美しい宝石のついた指輪をはめてくれた。
「え? 指輪?」
私が寝たまま、指にはめてもらった指を見ていると、ディラン様が優しく微笑んだ。
「卒業舞踏会ではそれをつけてね」
「これはもしかして、パーソナルジュエルですか?」
「うん」
私は驚いてしまった。このゲームでは卒業舞踏会で運命の相手が主人公に自分の瞳の色であるパーソナルジュエルのついたアイテムを贈る。
ディラン様のアイテムはネックレスだったはずだ。それなのに私の左手には、まるでディラン様の瞳のように美しく輝くパーソナルジュエルのついた指輪が輝いていた。
チュッ♡
ディラン様が私の横に寝っ転がって、私の左手にキスをすると、少し照れくさそうに笑った。
「ネックレスと指輪どっちにしようかと迷ったんだけどね……指輪なら君の目にも映るだろ?
君はいつの間にかナターシャの事や、王妃教育のことで頭が一杯になって僕のことを忘れそうだし。いつも君にこれを見て僕を思い出して貰えるように指輪にしたんだ……ネックレスは首にかけちゃうと中々自分じゃ見えないだろ? だから……」
(ええ~~!! いつも見て思い出して貰えるように指輪って!! ディラン様が可愛い~~~!!)
私は嬉しすぎて、身体を起こしてディラン様のお顔を見下ろした。
チュッ♡
「え?!」
私はそのままディラン様の唇にキスをした。私からは滅多にキスはしないし、今は私がディラン様を押し倒しているようなので、ディラン様は目を丸くして驚いていた。
「ああ、もう、好きです。好きです!! 好きすぎて困ります。指輪見るたび好きだって想って困るじゃないですか!!」
ディラン様は顔に掛かる私の髪を手に取るとその髪に妖艶に口付けをして……その後、私の髪や耳を撫でながら、ゆっくりと私の頭を引き寄せ唇を合わせた。
「それは……んっ……僕のセリフなんだけど…な」
そう言ってまた唇を合わせた。
窓の外にはディラン様の瞳のような美しい藍色の空が広がっていた。
【完】
お忙しい中、お読み頂きありがとうございました!
またどこかで皆様にお会いできますことを楽しみにしております♪




