15 糖度10(激甘です)
私たちは雨に濡れてしまったので、着替えて温まるために暖炉の前のソファーに座っていた。
…………///。
大変恥ずかしい格好だが!!
私は今、ディラン様の膝の上に横抱きに抱えられていた。
しかもそれだけじゃない。
私たちは先程からずっと、唇を合わせるキスをしていた。
髪や耳を優しく撫でてられながら、受ける甘い刺激に私の身体は沸騰寸前だった。
「ふぁ……ディラン様……」
キスの合間を狙って私は声を上げた。
「っん……なに?」
ディラン様が私の声を聞いて、キスをやめて甘くとろけそうな視線を向けてくれた。
今までは一度も唇へのキスはしたことのなかった私たちだったが、一度キスをしてしまうと、際限なく唇を重ねていた。キスというのがこんなに気持ちのいいものだとは知らなかった私は夢中になっていたが、このままでは理性が持ちそうになかったので、意を決してディラン様に話かけることにした。
「少しお茶でも飲みませんか?」
「ふふふ。そうだね。キスをしすぎて、目が潤んでるし、頬も赤いものね。少し休憩しないと、僕も止められなくなりそうだしね」
「…………!! では」
私が膝から降りようとすると、ディラン様に抱きしめられ、膝から降りようとするのを止められてしまった。
「ここにいて?」
「しかし、お茶の準備で人が……」
ディラン様が私を抱きしめながら私の頭にキスをしていた。
「大丈夫だよ。今はキスもしてないし、みんな気にしないよ」
ディラン様はそう言うが、もし私だったら男性の膝の上に乗った女性を見たら『うっわ~甘い空気で居たたまれない』って思うはずだ。そんなのは申し訳ない。
「ですが……お茶を飲んだら、また……その、ディラン様の好きなようにして頂いて構わないので……」
ディラン様は私を離してくれそうになかったので、苦肉の策を提案した。
「うっ!! それって僕の理性を試しているのかな? 本当に僕の婚約者が可愛すぎて困る」
ディラン様はぎゅっと私を抱きしめ髪にキスの雨を降らせた後、名残惜しそうに私を隣に座らせてくれて、侍女を呼んだ。侍女たちはテキパキとお茶の準備を終えると部屋から出て行った。
私はディラン様にどうしても気になっていたことを聞くことにした。
「あの……ナターシャ様は無事に見つかったのですか?」
「ああ、そう言えば伝えていなかったね。無事だよ。私たちが捜索チームに合流してすぐに、ブルーノが見つけて保護したとの連絡が入ったんだ」
「ブルーノ様が見つけられたのですか?」
3章でブルーノ様が主人公を見つけるという展開はゲームにはなかった。
そもそも、ブルーノ様が上級騎士に合格するのも個人ルートだったはずだ。3章で上級騎士になったことはなかった。だが今回はなぜか3章で上級騎士に合格している。
だから主人公の捜索にも同行したのだろう。
「うん。ケガもなくて、元気そうだったよ。ナターシャに何かあったら……叔父上が怒り狂うだろうから……本当に無事でよかったよ……」
ディラン様がどこか遠い目をして言った。
「怒り……ナターシャ様、本当に無事でよかったですね!!」
私はまたまたゲームの裏設定を知ってしまった。
つまり先程、ディラン様が慌ててナターシャ様を探しに行ったのはもちろんナターシャ様が心配ということもあるが、辺境伯の怒りを恐れての行動でもあったようだった。
「なぜはぐれてしまったのですか?」
私は念のためゲームの設定と変化があるのか知るための尋ねた。
「なんでもケガをしたタヌキを助けたらはぐれてしまったようだよ」
そこはゲームと同じだったようで私は少しだけほっとした。
(そこはゲームと同じだったのに、同じ展開にならなかったんだ……でも、ハプニングキスイベントが起こっていないということは……もうディラン様が、主人公ナターシャ様の運命の相手になることはないと思ってもいいのかな?)
「タヌキを……そうですか。でも、本当にご無事でよかったです」
私はゲームの設定と同じ展開にならなかったことに、もう一度、ほっとして胸をなでおろしたのだった。




