14 糖度??(ライバル令嬢にハプニング発生中!!少々お待ち下さい)
ポツ……ポツ……。
地面が水玉模様になっていく。
(あ、雨?)
ザーー。ザーー。
(降ってきた)
先程できた可愛い水玉模様を必死で隠すように雨は地面を濡らしていった。
雨はついでに私の涙も流してくれたようだった。
(部屋に戻らなきゃ)
部屋に戻らなくてはいけないとは思っても身体が動かなかった。
「キャメロン?! キャメロン!! 何をしている!!」
どこからかディラン様の声が聞こえた気がした。
私が立ち上がると、必死でこちらに向かって走っているディラン様の姿が見えたように思えた。
(ディラン様がここにいるはずないわ。ディラン様は主人公と一緒にいるはずよ。私は幻を見ているのね……)
きっともう、ディラン様は主人公とハプニングキスイベントを済ませて恋に落ちたはずだ。
(どうして、私はライバル令嬢に転生してしまったの? 主人公じゃないの??)
「どうして!! ディラン様のお相手が私じゃないの!! どうしてディラン様はディラン様なのですか?!」
私は決してディラン様には聞こえないだろうが言わずにはいられなかった。
「くっ!! ルビィ!!」
ピィーーーーーー。
ディラン様が何か笛のような物を吹いた。
クカァーーーーー!!
バサバサバサバサ!!
すると大きな鳥が空から現れると、ディラン様の元に一直線に飛んでいった。ディラン様はその鳥の足元に捕まると、空へ舞がった。
「え?」
スタンッ!!
私が驚いていると、ディラン様はバルコニーに飛び降りるとすっと立ち上がった。
いつの間にか雨は上がっていたようでディラン様の背後には大きな虹がかかっていた。
「ど、どうしてここに? 本物……ですか?」
(ディラン様は主人公と一緒にいるはずじゃ……)
「君が雨の中1人で泣いているんだ。どこへだってかけつけるさ。なぜ1人で泣いているんだ? 何があった?!」
私はディラン様に抱きしめられていた。
視界から虹が消え、ディラン様必死な顔が見えた。
「私、やっぱり無理です。笑顔でディラン様とナターシャ様を応援なんてできません。ディラン様のおそばに……いたいです」
私は情けないと思いながらも涙をこらえて、ディラン様の顔を見つめて言った。
ディラン様が驚いた後、悔しそうな顔をして、私に顔を近づけてきた。
「ナターシャを私の妃にしようと画策している一派がいるいう噂を聞いてしまったのか?!
くっ!! キャメロンの耳に入らないようにしていたのに!!
キャメロン、聞いてくれ。私は君を愛している。誰がなんと言おうが私の妃は君だけだ!!
生涯、君と共に歩みたい!!」
私は思わず耳を疑った。
私はまたしてもゲームの裏設定を知ってしまった。
(え? そんな一派がいたの?! 知らなかった!! でも、ディラン様は私を愛してると言ってくれるの?)
「本当に? 本当に私で良いのですか? ナターシャ様の方が……」
「他の誰でもない君を愛しているよ。私のそばにいほしい」
「……はい!!」
すると大きな虹を背景にしてディラン様の顔が近づいてきた。
私はゆっくりと目を閉じた。
夕暮れ迫る薄紫色と桃色に染まった空に大きな虹がかかる湖で、私たちは初めてのキスをした。
私たちはまるで永遠か思えるほど長い間、お互いの唇を感じていたのだった。




