13 糖度??(ライバル令嬢にハプニング発生!動揺中のため計測不能)
ディラン様が雨具を持って行ってくれる事を約束してくれたので、私は少しだけほっとした。
「ディラン王子殿下、参りました!!」
ディラン様の護衛騎士のヘンリー様とカーター様がディラン様の元にやってきた。
「ああ、すまないな。状況は聞いているだろう?」
ディラン様が王族の威厳を見せながら凛々しい様子でお2人に尋ねた。こんな凛々しい姿を見られて嬉しいはずなのにどうしても私の心は晴れなかった。
「はい。もちろんです。王子殿下、こちらの地図をご覧ください。この辺りまではナターシャとお話していたというご令嬢が……」
ディラン様は護衛騎士の方々と入念な打合せをしていた。
ふと窓の外を見ると先程まで晴れ渡っていた空が灰色になっていた。
(まだ降ってはいないみたいだけど……)
今のところは曇り空だ。
だがいつ雨が降り出してもおかしくはない空だった。
「では行こう」
「はっ」
ふと窓の外を見ているとディラン様たちの声が聞こえた。
私がディラン様に顔を向けると、ディラン様に手を握られた。
「キャメロン、すまない。ナターシャを見つけたらすぐに戻る」
私は無意識にディラン様の手を握りしめていた。
「どうか!! ……どうかお気をつけて」
チュッ♡
気がつくとディラン様におでこにキスをされていた。
「ありがとう。必ずナターシャを無事に見つけて帰るからそんなに泣きそうな顔をしないでくれ。
大丈夫、ナターシャは必ず連れて戻るよ。ふふふ。こんなに泣きそうになるほど君に心配かけたんだ。今度彼女には君が満足するまでダンスを見せるように言っておく。では、行ってくる」
「いってらっしゃいませ!! ディラン様」
「ああ」
ディラン様は微笑むと部屋を出て行った。
私はまだ雨の降っていなかったので、バルコニーに出た。
おそらくこれでハプニングキスイベントは確実に起きるのだろう。
先程美しいと思ったはずの景色が急に哀愁漂う景色に見えた。
「あれ? おかしいな……さっきはあんなに、綺麗に……見え……」
今度は景色が歪んではっきりと見えなくなった。
私の目からとめどなく涙が流れていた。
覚悟していたはずだった。
ディラン様の幸せのためにはゲームのライバル令嬢のように颯爽と主人公に婚約者を譲り、2人の恋を応援する予定だった。
それなのに……。
「主人公を祝福なんてできないよ……」
ディラン様の優しい笑顔を思い出した。
「私って心が狭いな……」
ディラン様の嫉妬した可愛い顔を思い出した。
「苦しいよ……」
ディラン様の照れた笑顔を思い出して私はとうとうバルコニーに座り込んでしまった。
「好き……好きです……好きなんです……」
そして私はいつのまにかバルコニーで泣き崩れていたのだった。




