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1 恋愛糖度7〖10段階評価(ライバル令嬢の私見100%)〗

 




 ある朝起きたら、私は乙女ゲームの中のライバル令嬢になっていました。



ーー…………?



 『そっか~』って納得して下さったあなたは器の大きな方です。

 順を追って説明しますね。

 

 私はいつものように目を覚まし、いつものように布団でゴロゴロしていたら、メイドの服を着た美人の女性に囲まれて「お嬢様、お仕度を」と言われた。


 なにぶんベットの中の出来事だったので「これは夢かな?」と思っていたので素直にメイド服をきた美人女性について行き鏡の前に座った。

 そして、驚愕した。

 そこには私が今、ハマりにハマっている乙女ゲームのライバル令嬢キャメロンそっくりの綺麗なのに可愛い令嬢が驚いた顔で座っていた。


「あれ? この人……キャメロンに似てる」


「キャメロンお嬢様? どうされたのですか?」


「鏡にキャメロンそっくりな女の子が……」


 私がそう言った瞬間、部屋の空気が変わり重苦しい雰囲気になった。私を取り囲む美人女性たちがいかにも困惑した表情で私を見ていた。

 空気を読むことをモットーにブラック寄りのギリギリブラックじゃないグレーな会社で社畜として働いていた私は、すぐに悟った。


(あ、これ、騒がない方がいいやつじゃない?)


「ごめんなさい……なんでもありません」


 するとさらに美女たちは急に慌てだし、「お嬢様、もしかしてお加減が悪いのかもしれません。本日はベットでお休み下さい」「ゆっくり休まれて下さい」と私はもう一度ベットに戻されてしまった。

 何度も言って申し訳ないが、空気を読むことをモットーにており、さらにベットの中が大好きな私は、抵抗もせずに頷くと、もう一度ふかふかの豪華な天蓋付きのベットに潜り込んだ。


(はぁ~、面白そうな夢ではあるけど……布団幸せ……こんなふかふかの布団に入っていいって言われたら……寝る……しか……ないでしょ……だ……めだ、眠い。起きて考え……よう)


 こんなおかしな状況にも関わらず、社畜として疲れ切っていた私はぐっすりと眠ってしまった。



+++++



「キャメロンは寝ているのか?」


「はい。朝からずっとお休みになられています」


「そうか……そんなに体調が悪いのだな。顔を見たら失礼する」


「畏まりました」


 聞き置覚えのあるセクシーエロエロヴォイスが耳に入って来て、意識が少しずつ浮上してきた。


(あれ? ディラン王子の声が聞こえる……何これ? 最高!!)


 私はゆっくりと目を開け……そして固まった。

 サラサラのグレーの髪。深い夜のような藍色の目。そして艶々の唇。


「ディ、ディ、ディラン王子?! ああ、私はとうとう働きすぎて天国に来てしまったの?!」


 私が驚いて飛び起き、布団を掴んだまま大きなベットの壁際の方の端に寄ると、ディラン王子にそっくりな超絶美青年が優しく微笑んだ。


「キャメロンが体調が悪いと聞いたから見舞いに来た。もう大丈夫なのか?

だが、そうか……働きすぎと言うほど王妃教育はつらいのだな……考慮してみよう」


(え? この方、私をキャメロンって言った? 王妃教育??)

 

 その瞬間、私の中にキャメロンの記憶が流れ込んできた。


(私……婚約者?! ディラン王子の婚約者のキャメロンなの?! え? え? どうしよう、どうしたらいい??)


 私がパニックになっている間も、王子は優しい眼差しを向けてくれていた。小さく深呼吸をして恐る恐る男性に尋ねてみることにした。


「あの……ディラン王子?」


 すると男性が困ったように微笑んでくれた。


「どうした? ふふふ。今、起きたところだから寝ぼけているのか? 2人きりだというのに『ディラン王子』などと……」


ーー…………。


 鼻血が出るかと思いました。

 私の心臓動いてるよね?!

 至近距離での推しの笑顔の破壊力は爆薬級でした。



「う……」


 私は思わず胸を押さえた。


「キャメロンどうした?」


 ディラン様がベットの横の椅子から立ち上がると、ベットの端に寄っている私に身体を近づけるためにベットに乗って私の背中をさすってくれた。


「ひゃう!!」


 社畜である私の生きる希望である大好きな、大好きなディラン様に触れられて私は切実に心臓が痛くて冷静ではなかった。


「ディラン様の笑顔が素敵です。体温を感じて……ドキドキします。もう、本当に好きすぎて……つらいです」


「え?」


 私の言葉を聞いたディラン様が顔を真っ赤にして固まった。その顔がまたクラクラして、もしカメラを持っていたら容量の限界まで激写していた自信がある。


(ディラン様の照れ顔!! 私の持ち物全ての待ち受けにしたい!!)


 私がよこしまな考え抱いていると、ディラン様が困ったように口を開いた。


「そう言ってくれるのは……その……私も嬉しいが…。 

 こんなベットの上でそんな可愛いことを言われると、私も我慢するのがつらいな……。

 誘いを断るようで申し訳ないが、やはり結婚までは、節度を……だから今日は……」


チュッ♡


(え? え? 今、柔らかい感触がおでこに?)


なんと私は、ディラン様におでこにキスをされていた。


「幸せ過ぎて死にそうです~~~~!!でも恥ずかしい~~~!!」


私は恥ずかし過ぎて、思わず布団を頭からすっぽりかぶってしまった。


「(キャメロンはやはり熱があるのか?! そんな可愛い反応をしないでくれ! 病人相手に色々と我慢できなくなりそうだ……ああ、だがずっとこんな可愛いキャメロンだったらどんなにいいだろう……)」


 ディラン様は無言でベットから降りたようだった。


 私はついやってしまったとはいえ失礼な態度を取ってしまったことを反省しながら顔を布団から出すと、離れたディラン様に視線を送った。


「申し訳ございません」


(ああ、困った顔で見下ろされるのもいい!!)


私が見とれていると、ディラン様がベットに手を着くと、私のおでこにおでこをくっつけた。


「熱はないのか……キャメロン、明日は来れそうか?」


 ディラン様との距離。


……0!!



 おでことおでこがくっついている状況で上手く取り繕えるはずもなく、私はまるで魚のように口をパクパクとしながら言葉にならない言葉を発していた。


「あ、あ、あし、あした、は、い、いきたいでちゅ」


(わ~~噛んだ!! 噛んだ!! ッ大好きなディラン様に残念な子って思われた!!)


 ディラン様はこんな私に優しい視線を送ってくれた。私は居たたまれなくなって目を閉じてしまった。


「そうか……よかった。待ってる」


チュッ♡


 そうして再びおでこにキスをされた。


「ふぇ~~~」


 私は思わずベットにうずくまってしまった。


「(可愛い)」


 ディラン様が何か呟いたように思えたが、私は大好きな好きすぎるディラン様からのキスに身体の力を全て失ったのだった。




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