花梨への連絡
僕に対して花梨が偽のプロフィールを言っていた理由は納得できたが、何故、歯の矯正程度の理由で風俗店で週末に1年間も働いていたのだろうか?
果たして鍵付きのインスタは見つかったが、彼女からしてみれば僕からのアプローチは人生崩壊の恐怖でしか無く、ここまで辿り着いたは良いが、連絡して良いものなのか。そもそも花梨は僕ともう会う気が無いから連絡してこなかったのではないか。また僕は上場企業の社員でもあり、彼女に連絡することで脅迫ととらわれてしまい、トラブルに巻き込まれないだろうか、などと考えて逡巡してしまった……。
1日考えても答えは出ず、悩みに悩んだが、これだけの秘密を知ってしまったことを彼女に伝えたい欲求には抗えず、結局、僕は彼女の鍵付きインスタに出来るだけ丁寧にDMを送ることにした。
「ご無沙汰しております。ヒロキです。花梨さん(梨奈さん)にとっては大変迷惑な話なのでしょうが、どうしてももう一度貴女にお会いしたい一心でここまで辿り着いてしまいました、ご容赦ください。可能であれば、お店での報酬程度のお金はお渡ししますので、一度だけでもお会いしていただくことは出来ないでしょうか?ご連絡お待ちしております。」
その後、10日経っても何の返信もなく、諦めていたところ、ある日の夜中、突然彼女から返信があった。
「夜分に失礼いたします。そして、ご無沙汰しております。お返事遅くなってしまい申し訳ありません。インスタのリクエスト機能に気づくのが遅かったこともありましたが、いただいたメッセージに気づいてからは、色々と考えておりました。恐らく、私のインスタに気づかれたということは、色々とご存知になっていることと思います。以前お会いしたときは、自分という人物を偽っていたので、知られたときは相当驚かれたことと思います。良くしていただいたにも関わらず、嘘ばかりで申し訳ありませんでした。何としても、他者に知られるわけにはいかず、、ご容赦ください。一度携帯の方に050から始まる番号で、電話をかけたのも私です。自分の中で、一度かけて繋がらなかったら、今後一切連絡もしないし、もし連絡があったとしても受けないと決めていました。折り返し電話があったことも気づいていましたが、自分で決めたことだから、、と思い、かけ直すこともやめ、050から始まる携帯電話も解約しました。今回ご連絡をいただいた際は、正直驚きました。何一つ正確な情報をお伝えしていなかったにも関わらず、鍵付きであるアカウントを見つけられていたので、どうして分かったのだろうか?と、単純に驚きと疑問がありました。しかし、それと共に、相当な時間を割いて、私とコンタクトを取るために探してくださったのだろうと感じております。今、こうして連絡があり、お会いするかどうか悩んでいるのが正直な気持ちです。」お嬢様らしい丁寧な返信だ。内容からしても恐らく何度も推敲の上で返信してくれたのであろう。それだけでも彼女に対して感謝と申し訳ない気持ちが溢れた。
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【〜DMを発見した梨奈〜】
梨奈はヒロキからのDMを発見して動揺していた……。
デリヘル時代、一番の常連だったヒロキから突然の連絡……。彼からのDMを見つけた時、正直、血の気が引く思いがした……。
(何で……、)ヒロキはデリヘル時代毎週欠かさず来てくれる良いお客だったし、性的指導をしていた生徒でもある。生徒としては真面目で、1年間で随分と彼の成長は実感できた。
何よりデリヘル退職後も、私からの電話が繋がれば会っても良いと思ってた相手だ……。けれども、それも半年も前のことだし、連絡先も教えてないのに……、私の鍵付きのインスタアドレスをどうやって知ったのだろう……、どうやって?どこから?
私の場合、とにかく身バレのリスクが大き過ぎる!女子校の教師がデリヘル勤務なんてバレたら人生の終わりだ、、新聞ネタやニュースになるかもしれない……、友達は皆、お嬢様ばかりだから相談なんて出来ない。父や妹にも言えないし、バレたら迷惑かけちゃう……。こんな事、誰にも言えない……。自分で解決するしかない……。
ヒロキは上場企業に勤めてて素性も分かっている。奥さんは居るが単身赴任だし割といつも清潔にはしてる人だ。私の秘密と比べると対等ではないけれども一応お互いに秘密を共有してる状態で、1年間お客として彼に好かれるよう振る舞ってきたので彼は私に夢中だし……、彼からバラされる事は無いと思うけど……、
ヒロキと2人で会えばきっとSEXを求められる……。秘密の事があるから、迫られたらお店の時と違って断れない、、
どうしよう……、でも彼からのDMの文面だけを読めば、ヒロキは秘密を盾にして脅すのでは無く、お金を払って私に会うつもりのようだ。毎週、1年も私を指名してた位だから、お金の面は大丈夫だろう……。
……2人で会うのは怖い……、でもこのまま放置する方がリスクだし、ヒロキは私に夢中だから、私にならヒロキの行動を操る事が出来るはずだ!
そうして、梨奈は丁寧に何度も下書きの上で、ヒロキへの返信を行ったのだ……。