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花梨との出会い


単身赴任に来て初めての冬が過ぎた。西日本の温暖な街出身の僕にとって、雪国の冬の暮らしは苦痛でしかない。


雪国用の重い革靴や冬タイヤ装着、朝起きると愛車に15cm積もっている雪、日常的な雪掻きと雪降し……、全て嫌悪の対象だった。


そもそも子供がいないのに……、単身赴任になるとは……。大手保険会社の都心の大店舗の係長から課長として一応の栄転でもあり、派遣社員の妻は当然僕と一緒に来てくれると思い込んでいた……。でも、1年前の妻の反応は僕の思い込みを吹き飛ばす。


「……私、やっぱり行きたくない。貴方一人で行ってくれないかな……。」妻の杏奈は申し訳なさそうに言ってきた。


「……杏奈の仕事、急に辞められないだろうから、直ぐ来れなくても半年くらい遅れても良いよ。」杏奈も僕と同じ瀬戸内の出身で、雪国が決して歓迎されない転居先である事は理解できたが、なだめれば落ち着いて納得してくれるだろうと高を括っていた。然し杏奈は僕の予想に反し、なだめても時間が経っても雪国行きに首を縦に振らない。僕も転勤スケジュールがタイトで焦っていたこともあり、


「そんな無茶言わないでくれよ!」と少し声を荒げた。すると、


「……無茶言ってるのはそっちだよ!そりゃ、そろそろ転勤覚悟してたけど、いくらなんでも雪国なんて……、寒いところホント嫌なの……。」杏奈の目には涙も滲んでおり、説得できる雰囲気は感じ取れなかった。


「……わかった。会社には単身赴任で行く事を改めて説明するよ……。……わかった……。」


杏奈とは地元で勤務していた時、友人の紹介で僕が35歳の時に結婚した。杏奈は基本的には夫を立て、家事も確りこなす良い妻であるが、頑くなな面もあり、一度言い出すと聞かないところがある。


杏奈は元々セックスが好きでは無く、結婚前から夜の相性は良くなかったのだが、朝はブラックコーヒーから始めるなどの生活スタイルの相性が良かった事、会話がない時もストレスを感じなかった事、美人である事から、「……結婚相手ってこんなものかな」と考えて籍を入れたが、結婚後4年経った頃、自分から子供を諦め『もうセックスしない』と宣言してきた。以来、6年間妻とはセックスレスである。会社で管理職の僕にとって、社内のセクハラは致命傷になる為、社内恋愛も御法度だ。家庭でも会社でもエロに関わる事が一つも無い状況で過ごす毎日であるが、もし僕に性欲が無ければ何の問題も起こらなかったのだろう……。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


単身赴任後、約1年が過ぎた頃、平日は仕事で昼も夜も忙しく過ごしていた。週末には時折、風俗を利用していたが、大抵は可愛くもなく事務的なデリヘル嬢と性欲発散のみの虚しいものだった。


そんなある土曜日、デリヘル店のHPを何気なく見ていたところ、田舎特有の顔出ししていない新人のプロフィールが現れた。「新人:花梨かりん22歳、152cm、B84cm、W57cm、H84cm、女子大生のような可憐な清楚さ」とあった。


(ホントだったらお会いしてみたいもんだ……。年齢、体型、性格のどこか、あるいは全部問題あるに決まってる、せいぜい正しいのは身長くらいか。)等と諦めつつも事務的にネット予約で90分コースを予約し、風俗店が勧める安モーテルに入室すると、程なくインターホンが鳴った。ドアが空き、トントンとゆっくり階段を上って来る音が聞こえる。そしてドアが開くと、


花梨かりんです、よろしくお願いします!」


………衝撃だった。


女子大生どころかホントにキー局の女子アナかと思うような大きな瞳で色白、黒髪ロングにワンピースのロングスカート、清楚で礼儀正しいお嬢様が現れたのだ。世の中には、こんな可愛らしい風俗嬢が存在するのか……!


「本日はご指名ありがとうございます。90分コース、ご一緒させていただきます。指名料1,000円合わせて19,000円になります。」……僕は少しの間、見とれてしまっていた。


「あっ、お金ですね……。あの……、もう少し長い時間のコースに変更できないですか?」


「えっ、よろしいのですか?まだお店に入ったばかりで変更できるかよくわからないのですが、お店に聞いてみます。」花梨が、お店に連絡すると、120分までなら変更可能とのこと。


「料金は28,000円になるみたいなのですが、よろしいんですか?」正面から大きな瞳で見つめられ、


「……はい、そのくらいなら。花梨さん、……想像以上に可愛い方なので……。少し長い時間にしたいな、と。」僕は大人の余裕を見せたくて平静を装って答えた。


「嬉しいです!ありがとうございます!頑張りますね!」花梨は、『何を頑張るのかわかっているのか!』と、こちらが心配するくらい、向日葵の様な笑顔で僕に微笑んだ。

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