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とりあえず短編

作者: 克夏礼

現在誠意執筆中!

 病院の廊下を歩きながら、僕は眉間に皺を寄せ小さなメモ用紙を睨みつけていた。一棟と二棟を繋ぐ三階の連絡通路。両側は窓になっており、そこから午後のお日様を燦々と取り込んでいる。リノリウムの廊下は、太陽の光を正確に反射し、僕のゴム底スニーカーがそれを叩くと、淡々と小さな足音を返した。平日の昼間ということもあってか、先程から誰ともすれ違わない。遠くからいくつかの足音が微かに聞こえるが、人の姿は確認できなかった。

 連絡通路の真ん中より少し行ったところで僕は足を止めた。折り目の付いたメモ用紙には、三〇三と書かれていて、それを見れば直ぐ友人の病室に着ける筈だった。しかし、まさか一棟、二棟、三棟に加え、建増しまで含める巨大病院だったなんて、全くの初耳だった。そして何より、一棟、二棟、三棟にはそれぞれ三〇三号室が存在し、話を聞けば建増し分にも三〇三号室はあるらしい。それを知らずさっきは一棟の三〇三号室へノックも無く踏み込んでしまい、ヨガ中の中年おばさんと遭遇してしまったのだ。あの時のおばさんの顔がまだ頭を離れない。病人なのか疑いたくなるくらいいい汗をかいていたのも、深く記憶に刻まれている。

 一つ大きなため息をついて、右側の壁に背中を預けた。それから少しだけ誰もいないことを確認し、そのまま背中を滑らせ床に腰を下ろす。奮発して買った御見舞いのフルーツ盛りを床に置き、だるくなった腕をグテッと投げ出す。ふとみれば、フルーツ盛りの天辺に乗っている真っ赤な林檎が光を浴びてテカテカ輝いていた。

 一呼吸置き、汗で若干軟くなったメモをお日様にかざしてみた。当然、そんなことで道案内が浮き出てくるわけも無く、ただ薄くなっただけの黒いボールペンの文字が、僕を憂鬱にする。相変わらず下手糞な文字だと自分に悪態をつきながら、暫くぼうっとそれを続けた。

 今年は暖冬だったが、代わりにその肌寒さが長引き、結局四月の終わりまで冬物のコートを使う日があった。だから五月頭に来て、ようやく現れた夏を彷彿とさせるこの春の日差しが、なんとなく喜ばしかった。あぁ、こんな天気のいい日には、外で思い切り体を動かしたい。四肢を精一杯振るい、風を受け、清々しい空気を胸いっぱい吸い込み、大声を出し、汗を振り撒きながら……。それはもう気持ちがいいだろう。しかし実際、僕はこんなところで何をしているのだろうか。どこにいても変わらない独特の薬臭さ、生温い気温に設定された室内温度。そしてなにより、浮世離れしたこの雰囲気が、僕の気持ちを谷底に向け突き落とそうとしていた。そんな中、無駄に広い院内を折角ここまで歩いてきたのに、受付まで戻り、何棟なのかを聞き、また戻ってくるなど不愉快極まりない。

 あぁ、偶々友人の病室を知っている看護婦さんが通りかかったりしないだろうか。しかしそんなのは都合の良過ぎる妄想であり、実際は先程から誰ともすれ違わないほど人は少なく、その中そんな偶々見つけるなど、万馬券のような確率の低さであるのが、考えなくても分かった。

 その時だった。ふっ、とお日様が遮られ、僕の前に小さな影が現れた。


時間がーー無い編集中orz

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