5_新しい扉
湊からの告白の後、彩香の心は少しずつ整理されていった。
最初はあまりにも突然で、湊の気持ちを受け止めきれなかった自分がいた。
しかし、その後の日々で、湊の真摯な言葉が胸に響き、彼の優しさに支えられている自分に気づき始めた。
二人はそれからも何度か会い、共に過ごす時間が増えていった。
カフェでのひととき、街を歩きながらの何気ない会話――どれもこれもが彩香にとって、日常の中で少しずつ大切なものになっていった。
ある日、二人で公園を散歩していると、ふと湊が言った。
「彩香、俺、もう一度ちゃんと君に伝えたいことがある。」
その言葉に彩香は少し驚き、足を止めた。
湊の真剣な眼差しを見つめると、何かが高鳴るのを感じた。
「もう、言ったじゃない。」
彩香が少し照れくさそうに言うと、湊は少し顔を赤らめながらも、しっかりとその視線を向けた。
「いや、違うんだ。君が本当にどう思っているのか、ちゃんと聞きたくて。」
彩香は言葉に詰まった。
湊の期待の眼差しが、少しプレッシャーに感じられる。
しかし、心の奥底では、湊のことをもっと知りたい、自分の気持ちに素直になりたいという思いが芽生えていた。
「湊、私は…」
彩香は少しだけ躊躇しながらも、湊の目を見て言った。
「私は、もう迷っていない。」
その言葉に、湊は驚いたように目を大きく見開いた。
「彩香…?」
「湊のことが好き。あの時から、ずっと心の中で気づいていた。でも怖かったんだ、また傷つくのが。でも、湊のことを知るうちに、その気持ちがどんどん大きくなって、今はもう、それが私の答え。」
彩香は心からの言葉を口にした。
それは、湊の告白を受け入れることでもあり、過去の傷を乗り越えて未来に踏み出す決意でもあった。
「俺も、怖かったんだ。でも、君に伝えてみてよかった。」
湊の目に、ほんの少し涙が浮かんでいるのを見た彩香は、胸が締めつけられる思いを感じた。
二人はそのまま、公園のベンチに腰掛けた。
静かな時間が流れ、遠くの空に夕日が沈みかけていた。
湊は彩香の手をそっと握り、微笑んだ。
「これからも、ずっと一緒にいたい。」
湊の言葉に、彩香は頷いた。
「私も。だから、これから一緒に歩いていこうね。」
その言葉と共に、二人は新たな一歩を踏み出した。
過去の傷が完全に消えることはないだろう。
でも、湊となら、その傷も癒しながら、明るい未来を共に歩んでいけると、彩香は心から感じていた。
空はすっかり夜空に変わり、星が一つ、また一つと輝き始めた。
その中で、二人の手がしっかりと重なり合い、新しい未来へと進んでいく。
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