4_雨上がりの告白
湊との再会を重ねるうちに、彩香の心は次第に揺れ動いていた。
湊の優しさ、彼の静かな強さが、彩香の中に積もり積もっていくのを感じる。
だけど、どこかで自分の気持ちを封じ込める自分がいる。
過去に恋をして傷ついたことが、まだ深く心に残っていたからだ。
それでも、ある日突然、彩香は湊からの思いがけない言葉を受け取った。
「彩香、少しだけ話せるかな?」
湊が静かに告げたその一言に、彩香はドキッとした。
いつも通り、軽やかな言葉で交わしていたつもりが、今日は湊の声に何かが違う気がした。
二人は近くの公園のベンチに腰掛けた。
夕暮れ時、空は薄紅色に染まり、静かな風が吹いている。
湊は少しの間、何も言わずに黙っていた。
その沈黙が、彩香の胸を締め付ける。
「彩香、実はずっと考えていたんだ。」
湊が静かに口を開いた。
「考えていた?」
「俺、君に言いたいことがある。」
湊はそう言って、少しだけ目を伏せた。
彩香はその言葉を耳にした瞬間、心臓が速く打ち始める。
自分の予感が確信に変わるその瞬間、目の前で湊が何を言うのか、思わず息を呑んだ。
「俺、彩香のことが好きだ。昔から、ずっと。」
その言葉が耳に届いた瞬間、彩香は思わず目を大きく見開いた。
湊が、あの優しい目で見つめながら、こんな言葉を告げてくるなんて…。
「でも、どうして?」
彩香は無意識に問いかけた。
湊の告白に驚き、そして少し戸惑った気持ちが込み上げていた。
「彩香と過ごした時間は、俺にとってすごく大切だった。それに、君が昔からずっと特別だったんだ。あの頃も今も、変わらずに。」
湊は少し照れくさそうに笑ったが、その目は真剣そのものだった。
その瞬間、彩香の心の中で何かがはじけた。
ずっと心の奥で湊のことを気にしていた自分。
それを認めたくなかったのに、湊の告白が全てを明確にしてしまった。
湊の気持ちが、自分に向けられていることに気づいたからだ。
けれど、彩香はまだ答えを出せないでいた。
過去の恋愛が彼女に深く影響していた。
恋に踏み込むことへの恐れや、再び傷つくことへの不安が心の中で渦巻いている。
「湊、私、どうしたらいいのか分からない。」
彩香はつぶやいた。
湊はしばらく黙っていたが、優しく彩香を見つめると、静かな声で言った。
「無理に答えを出さなくてもいい。今はただ、君がどう感じているかを聞きたいだけなんだ。」
その言葉に、彩香は少しだけ心を軽くしたような気がした。
湊は、自分の気持ちを押し付けることなく、ただ彩香の心を尊重してくれている。
それがどれほど彼女にとって大きな安心感となったことか。
「ありがとう、湊。」
彩香はそっと目を閉じて、深呼吸した。
しばらくして、湊がもう一度言った。
「もし、君が少しでも俺を見てくれるなら、嬉しい。でも、今は無理しないで。」
その言葉に、彩香の胸の中で何かが震えた。
湊の優しさが、彼女の中に新たな感情を芽生えさせていた。
「うん。ありがとう。」
彩香はようやく、湊に向かって笑顔を見せることができた。
雨が上がり、空は澄み渡り始めていた。
その空の下で、二人は静かに並んで歩き出した。
どこか新しい未来が始まる予感を感じながら。
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