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第5話 地下猫神殿にゃぱりぱーく②

「さて吾輩が主張したいことだが――」


「――え〜と雪見大福ちゃんちょっとストップや」


「キャラメルマキアートか。どうかしたのか?」


 涙目のブラックサンダーの横に、いつの間にかふわふわした猫耳少女が立っていた。

 茶色いと白のふわふわしたエプロンドレスに身を包み、お願いと胸の前で両手を合わせている。

 人化する瞬間を見せなかったが当然猫だ。

 品種はキンカロー。

 関西弁訛りだが住んでいるところは知らない。

 最近、吾輩やブラックサンダーと一緒にいることが多かった。

 ブラックサンダーは無視してもよいが、さすがにキャラメルマキアートは無視できない。

 喧嘩中ではないからな。


「あんなぁ〜もうちょっとだけブラックサンダーちゃんに時間もろていい? さっきまでウチに泣きついとってん。雪見大福ちゃんと仲直りするにはどうすればいいかいうて」


「ちょっとキャラメルマキアート!」


「ふむ……迷惑をかけたようだなキャラメルマキアート。だが断る!」


「みにゃ!?」


「あかんかぁ〜」


 吾輩の拒絶にブラックサンダーが大きく目を見開いている。

 しかし吾輩にも許せないことはあるのだ。


「そもそもキャラメルマキアートは喧嘩の原因を聞いているのか?」


「いや聞いとらんな。雪見大福ちゃんが急に不機嫌になったって」


「ブラックサンダーが原因さえ理解できていないのに仲直りもなにもないだろう」


「正論やね〜」


「ちょっとキャラメルマキアートは私の味方じゃないの!?」


「あーブラックサンダーちゃんはちょっと黙って。さっきさんざん話聞いてあげたやん。今は雪見大福ちゃんの話を聞くターンやから」


「みゃっ……」


 キャラメルマキアートにまで粗雑に扱われて凹んでしまった。

 まあ此奴は自業自得である。


「だいたいブラックサンダーは空気が読めないところがあるのだ」


「うんうん少しわかるわ」


「……にゃん」


 ブラックサンダーが胸を押さえて膝から崩れ落ちる。


「そこがバカ可愛いとも思うのだが」


「今度は褒めるやな」


「にゃ!」


 今度は立ち上がり笑顔を浮かべる。

 単純な奴だ。


「吾輩にも許せることと許せないことがある」


「それで喧嘩の原因はなんなん? その様子やとブラックサンダーちゃんの無神経さが原因みたいやけど」


「うむ。此奴は吾輩に語ってきよったのだ。まだ未発売の新商品ちゅーとろの味の感想を」


「ちゅーとろ? しかも未発売って」


「ブラックサンダーの飼い主がコラボという仕事の関係でもらった宣伝用の試供品らしい。しかも普通よりも高い豪華版で名前を『大間のマグロ激闘編』という」


「新商品は『大間のマグロ激闘編』か。美味そうやな。でもまだ発売されてない。……ブラックサンダーちゃんあかんよ。そういうところやで。そういうところホンマ気いつけな」


 味方だと思っていたキャラメルマキアートにまで責められてしまい、ブラックサンダーが言い訳を始めた。


「だ……だって雪見大福はちゅーとろ好きだし。新商品出るなら教えてあげようと思って」


「それで未発売の新商品ちゅーとろの味の感想を延々と聞かされたわけか。吾輩は食べることもできないのに」


「ご、ごめんなさい。でももうそろそも発売のはずだから」


「発売されてもニャコが買ってくるとは限らんのだがな。通常のよりも高い豪華版のようだし」


「……みゃ〜」


「そんなわけで新商品の豪華版ちゅーとろ『大間のマグロ激闘編』が吾輩の口に入るまでブラックサンダーとは喧嘩することにしたのだ。いつになるか分からぬがな」


 やはりちゅーとろ。

 ちゅーとろが全てを解決する。

 ニャコのアラサーの呪いが解ければ、ちゅーとろを奮発する気にもなるはずである。

 そうすればブラックサンダーとも仲直りしてやってもいい。


「そういうわけだ。キャラメルマキアートよ。納得したか?」


「うん……そういう事情ならしゃーないな。ずっと喧嘩するつもりはないみたいやし。断る言うたのにちゃんと答えてくれてありがとうな。やっぱり雪見大福ちゃんは優しいわ」


「吾輩は常に寛大であるからな」


「ブラックサンダーちゃんも反省しいや。相手の食べることができひん好物の話を自慢気に語るなんて、下手すれば絶交もんやで」


「みゃ……わかった」


 ふむ。

 これでようやく本題に入れそうである。

 ……本題?


「………………」


「どないしたん? 指を顎に当てて首捻って。いつもの尊大さが鳴りを潜めて、ただただ可愛いだけの存在になってんで」


 可愛いだけの存在?

 吾輩の愛くるしさは今更言及されても困るが。

 さて、吾輩はなにをプレゼンしようとしていたのだったか。

 考え込んでいるずっと黙っていた猫の王が口を開いた。


『猫の未来をかけたプレゼンをするのではなかったのか? このままでは犬に負けると聞いたが』


「うむ確かに言った。正直、犬に負けようとどうでもいいが」


『おい』


「このままで闇ちゅーとろの奪いあいが始まり、ギャング猫社会が到来して」


「や、闇ちゅーとろ? 私そんな新商品は知らないけど」


「黙るのだ! ブラックサンダーが横槍を入れてきたから本題が逃げたのだ」


「ご、ごめんなさい?」


「だいたいブラックサンダーはいつもタイミングが悪いのだ。吾輩がダイエットを強要されている時期に豪華版ちゅーとろ『大間のマグロ激闘編』の自慢話するから話が拗れたのだ」


「ダイエット?」


「そうである。ニャコがアラサーの呪いにかかって婚期とやらを気にしだし、お酒が入ると『出会いがない』と嘆くようになり、テレビで猫の飼い主は未婚率が……そう婚活ニャ!」


「……こんかつ?」


「婚活」


『婚活?』


「そんなわけで我々家猫は飼い主の婚活を斡旋しないといけないのである!」


 ようやく言えた。

 これで吾輩は満足だ。

 けれど吾輩の理路整然とした話をなぜか理解できない猫が多かったらしく。


『わけがわからぬ。雪見大福よ。最初から説明せよ』


 猫の王にそう命じられてしまった。

 解せぬ。

 


100%趣味で書かれた猫視点の猫小説です。

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