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首の誉  作者: しめさば
3/15

3

「桜井さーん、警察の人が来てるよー」

 仕事中に、同僚の男が桜井を呼びに来た。

「警察?」

 髪の薄い男はニタニタ笑っている。

「何か悪いことでもしたの?」

 隣で作業をしていた黒江が神妙に言った。

「してませんよ」

 桜井はわざとらしく言った。

「ふーん」

「あはは、捕まったら、もう会えなくなっちゃうかな」

 男は下衆な笑みを浮かべて去っていった。


『ここの人にしては珍しいね、(ネック)が綺麗でよ』


 いつか言われた言葉を思い出した。

 男の後ろ姿を眺め、首元を見る。

 シャツの襟が少し黒ずんでいるくらいで、いたって普通の(くび)だった。

 うなじにチップは見えない。

 保護皮膚に覆われているからだ。


「ちょっと、行って来ます」

「はーい、がんばー」

 黒江は興味無さそうに、屈んで背を向けたままだった。

 その首元を注視する。

 黒江のうなじは綺麗だった。


「何見てるの?」

 桜井の心臓は跳ねた。

「え、いや」

「早く行きな?」

 彼は全てを飲み込み、そそくさとその場から立ち去った。

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