第42羽♡ ネコミミメイド楓にゃん
リナを部活に送り出した後、俺も前園と出かける用事があるため家を出た。
新宿に向かう電車の中でスマートフォンを操作し、RIMEに届いているメッセージを確認する。
すずすけ「シュークリームの作り方を教えて。今日忙しいなら明日連絡頂戴。あと良識と常識のある行動を」
洋菓子の名前は天使同盟を示す隠語で、第三者に宮姫と俺がやりとりしている内容を見られても勘ぐられないように使う。
ひょっとして非公式生徒会の手がかりを掴んだのか?
だとしたら、なるべく早く連絡を入れた方が良さそうだ。
あと『良識と常識のある行動』ってところも気になるな。
心配しなくても俺は前園に変なことをするつもりはないけど。
「了解。シュークリームは生地を作る時少しコツがいる」とメッセージを送る。
さくら「発情したら即刻去勢する。これで↓」
メッセージの次に画像が添付されていて、とてもよく切れそうな園芸用の鋏が映っていた。
以前、家に出入りしている庭師からよく切れる鋏を譲ってもらったと言ってたけど、どうやら本当のことだったようだ。
本当によく切れそうですね。
これだと確実に去勢されちゃいそうですね……。
――嫌だ。
堪忍して。
お願いだよ、さくらたん――!
決して悪いことしないから――!
恐怖のあまり、悪い心は欠片もなくなりました。
浄化されたボクは今度こそ真人間に生まれ変わりました。
今後、女性をえっちぃ目で見ないことを約束します。
恐らくこの公約は十分と続かないと思いますが……それはさておき。
「ご心配なく、部活頑張ってください」とだけ、さくらにメッセージを送る。
さくらにしろ、宮姫にしろ……俺のこと信用してないのかな。
今までのことがあるから仕方ないか。
でもそんなに悪いことしたっけ?
無自覚なだけで、普段から女子たちの気分を逆なでするようなことをしているのか?
だとしたらマズいな……。
もう少し色々なことに注意するようにしよう。
続けて楓から届いていたRIMEメッセージも確認する。
楓「おはようカスミ、今日はいい天気のお出かけ日和だね。良かったね。
姉さんに『二時間ご休憩七千円の暖簾』の意味を聞いたんだけど、わたしたちはまだ高校生だしそういうことは早いと思うの、校則にも書いてあるよね。
自分たちに合う付き合い方があると思う。
もちろん互いの気持ちが通じ合っていれば、そういう場所でそういうことをするのもいずれはありなのかもしれないけど。
まずはお互いの家族にご挨拶をして了承と誓いを立てた上で順々に進むべきだと思う。
でもカスミがそれじゃ我慢できないって言うならせめて、そういうところではなくて家とか安心できるところでならわたしは……。
カスミも凛ちゃんも信用してるけど、一時の気の迷いで変なことをしないようにね。
よくわからないけど何かの事情で『暖簾の中に入る』ことになりそうなったら『その暖簾をくぐることにはのれん』と言ってちゃんと断ってね!
じゃあ道中気を付けて」
楓「念のため、三分に一回RIMEで連絡頂戴」
楓「やっぱり一時間に一回で良いです」
楓「何度もごめんね。おうちに帰ってからの一回で良いからRIMEで連絡くれるかな。お願いします」
楓「ひょっとしてめんどくさいとか思ってる?」
楓「カスミ?」
楓「にゃ~」
……楓は心配してくれてるんだな。
楓のお姉さん……加恋さんは言っちゃったのか暖簾の真実を。
それにしても三分に一回の連絡は多くないか?
付き合い始めのラブラブカップルでも多分それはひくと思う。
まぁ、本人が途中で気づいたみたいで訂正してるけど。
それより”超”が付くほど真面目な楓が冗談……いやダジャレを言ってる!?
これは異常事態だ。
今は六月だけど雪とか雹が降るんじゃないか?
なんか不吉なものを感じる。
前園とのお出かけ……俺は無事に帰れるのだろうか。
しかも最後に「にゃ~」って。
あげくネコになってるし。
でも楓ネコまたはネコ楓はいいかもしれない。
いや待て……妖気を纏う猫又楓も捨てがたい。
とりあえずネコミミと尻尾、首に鈴を付けてもらった上で、目の前でねこじゃらしを揺らしたら楓ネコはネコパンチ出してくれるかな。
服装はやはりゴシック系メイド服だな。
合わせて中学時代の黒眼鏡をかけてもらうと更に良いかも。
眼鏡を外した今の楓もすごくかわいいけど、何もない平坦な道でなぜか転ぶドジっ子眼鏡だった頃の楓もあれはあれで趣きがあり、とても良かったです。
特別眼鏡フェチではないと思うけど、メガネっ子楓は別腹。
あれで白飯三杯はいける。
ドジっ子猫ミミ付きメガネっ子メイド楓。
ちょっと属性増し増しにし過ぎかな?
でも最強だな。戦国時代なら天下を捕れるかも。
「ご主人様……また失敗してしまいましたにゃ。どうか不出来な楓めにお仕置きをしてくださいにゃ」
「フッ楓はいけない子だね。さぁいつものようにハンケチをくわえなさい」
「はいにゃ。その……優しくしてくださいにゃご主人様」
「それは無理な相談だ……ほらほら」
……とか言っちゃたりして。
すると潤んだ瞳と頬を赤くした楓が吐息と共に……。
「にゃああ~ご主人様ぁ、楓はご主人様にお仕置きされて嬉しいです、にゃぁあん♡」
ぐはっ……これはやばい。
妄想が飛躍しすぎて天国への階段を昇ってしまう。
そもそもこんなことは絶対起こりえない。
大切な親友でこんなことを考えてはいけない……。
でもどこか奥ゆかしい雰囲気のなる楓とメイドコスの親和性の高さと淫靡な背徳感。
それらがもたらす破壊力が半端ない……。
本人には絶対に言えないけど。
とりあえず変なこと考えてごめん楓。
しばらくメイドさんが出てくれる深夜アニメを三週間は控えます。
もうすぐテストだし。
さて……。
とりあえず楓にRIMEの返事を出すか。
『了解、帰ったら必ず連絡する。めんどくさいなんて思った事は一度もない。いつも心配してくれてありがとう親友』っと……。
あと二駅で新宿に着く、前園はもう着いているだろうか。一応連絡しておくか。
カスミン「おはよう。もう着いてる?」
――ピンポーン! RIMEの着信音が響く。
返事はすぐ返ってきた。
お凛ちゃん「今着いたとこ」
カスミン「もうすぐだから少しだけ待ってて」
――ピンポーン!
お凛ちゃん「OK」
前園早いな。
俺もなる早で移動しないと……。
最後に昨日の『天使メール』を確認する。
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