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優しいだけの嘘つきは今日もラブコメを演じる ~幼馴染、義妹、婚約者、金髪碧眼、親友に迫られてます! 俺? ごくごく普通の陰キャモブですが……【第一章完結】  作者: なつの夕凪
~第一章 堕天使遊戯編~

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幕間8♡ 義妹もどき、義妹のリアルに嘆く!


 ……ある日の午後。


 冬の陽が斜めに差し込む俺の部屋で、電気ストーブの赤い光だけがやけに主張していた。


 ベッドの上では、義妹もどき――この呼称は俺がつけたものだが、本人はなぜか気に入っている――のリナが、勝手に陣取り、クッションを抱えながらコミックを読みふけっている。足元には開封済みのお菓子袋が散乱し、俺の生活圏をじわじわ侵食していた。


 俺はというと、PC(パソコン)のファンが低く唸る音をBGMに、ネトゲのデイリーを淡々と消化していた。


「なぁ兄さまよ」


 リナがコミックを伏せ、こちらに向かって身を乗り出す。

 この呼びかけの時点で、ろくでもない話題が始まるのは経験則で知っている。


「なんだ、妹よ」


「最近お菓子のバリエーションが適当じゃありませんか? ポテチ、クッキー、うまか棒、ロックスターラーメン……」


 リナは指折り数えながら、まるで重大な社会問題でも語るような口調で言う。

 

「だったら自分で買ってこい」

「……義妹もどきは、外に行きたくないようだ」


 RPGのメッセージウィンドウみたいな返答をしてきた。

 

「買い物ぐらい自分で行け」


「なんだとぉ。もし、わたしが外を歩いてて、悪の組織に誘拐されて異世界転移でもしたら、兄ちゃん泣くでしょうが」


「……まぁ、そりゃ泣くけど。なぜに異世界転移?」


 リナの妄想は、だいたいテンプレの寄せ集めだ。

 こういうところは、時代の波に乗っている。


「まぁそんなことはどうでもいい」

「いいのかよ」


 リナは急に真顔になり、コミックを閉じた。

 こういうときは、たいていろくでもない話題を持ち出す。

 

 長年、お兄ちゃんもどきをやってきた俺の勘が、そう告げていた。


「わたしは大変なことに気付いてしまったのだよ、緒方君」

「ほう……それはいかなることかな、高山さん」


「最近、アニメもコミックもゲームも、義妹ものが少なくない?」

「……言われてみるとそうかもしれないな」


「男の子は皆、かわいい義妹が欲しいもんでしょ?」

「皆が皆そうとは限らないだろ」


「でも、血の繋がっていない妹がいるシチュに人様には言えない劣情を抱くものでしょうが」


「いや……そんな感情持ってたら、義妹が困るだろ」


「いいの! 仕方ないことなの! だって義妹はかわいいから! もっと皆で、義妹を推してほしいわけよ!」


リナは布団の中でバタバタと足を動かし、抗議の意思を示す。


「ベッドの上では大人しくしろ」

「……その言いっぷり、どこか淫靡いんびだにゃん」


「ぬかせ」


「しかしどうして、義妹ものは覇権アニメにならないのだ?」

「義妹ものとか関係なく、覇権アニメは各シーズンで1本だけだから、狭き門ってだけだろ」


「なぜなんだぁーーー!?」

「いや、だから話を聞け」


 ……うるさい。

 こうなると中々言うことを聞かない。


 暴れる妹は放っておいて、俺はゲームをやっているのとは別のPCで手早く調べものをする。アホの子に()()()()するために。


「……なるほど、そういうことか」

「どうしたのだ、兄ちゃん」


「義妹作品を取り巻く現状を調べた。結論から言うと、あんまり流行ってないな」


「えぇーーー!? なんでやぁー!?」


「ラブコメ作品だと義妹キャラは定番だけど、逆に言うと目新しさがないというか……」


「そんなことあるか! 義妹は神秘に満ちてるだろうが! お兄ちゃんへの秘めた願いや想いとか、ぐへへへっ」


「それが、もう定番すぎるって話だろ」


「そんなことない! まだまだイケるよ! 義妹キャラの潜在パワーは無限大だよ!」


「だといいけど……どうしてそんなに義妹キャラの肩を持とうとするんだ?」


「そんなの当然だよ。だって、わたしが義妹だから。義妹キャラを否定する=自己否定、これすなわち死活問題よ!」


リナは胸を張るが、布団に包まっているせいで説得力が皆無だ。


「そんなに大きな問題なのか」

「そうだよ。だから兄ちゃんも真面目に考えて!」


「わかった」


 逆らうとまたむくれるから、とりあえず適当に合わせておく。


「ちなみに今どういうキャラが流行ってるのだ?」


「チルカワみたいなゆるかわマスコットキャラとか、異能バトル系ヒロインとか、ラブコメだと知略系みたいだな」


「なんと?! 義妹は、ゆるかわマスコットや異能バトル系ヒロインと同じ土俵で戦わないといけないのか!?  なんてこったぁーーー!!」


「……まぁ、エンタメ全体で見るとそうなるな。ゆるかわマスコットの方が、義妹キャラよりコラボとかグッズ展開しやすいらしい」


「義妹キャラだって、フィギュアとか抱き枕カバーとかでグッズ展開できるし、コンカフェコラボとかあるでしょうが!」


「できるけど、フィギュアとか抱き枕カバーはお値段高めだから」


 リナは拳を握りしめ、布団から飛び出した。

 その勢いで、さっきまで読んでいたコミックが床に落ちた。


「ぎ、義妹は、ゆるかわには負けんぞ! 全国のお兄ちゃんとお姉ちゃんが、義妹を応援してくれるはず! だから義妹は決して屈しないのだぁ!」


 高らかに宣言するその姿は、無駄に勇ましい。

 口のまわりにお菓子のクズをつけたままじゃなければ、もう少し説得力があったかもしれない。


「一つ言っていいか?」

「なんだね、緒方君」


「お前は、義妹もどきだから、そもそも義妹じゃない」

「ぎゃぁああああーーー! それを言ってはダメぇぇぇぇ! ぐはっ」


 リナはそのまま床に崩れ落ちた。

 布団ごと倒れたので、巨大な芋虫が転がったように見える。


「だから、部屋で暴れるのはよせ。危ないだろ」


 ――ちなみに、高山莉菜は俺の親戚にあたるため、義妹ではない。


 義妹もどきという呼称は、義妹のような立ち位置で俺の生活圏に居座るのを見て、俺が適当に名付けたものだ。


 本人はその呼び名をなぜか気に入っていて、最近では自分から「義妹もどき」を名乗る始末。もはやツッコミを入れる気力もない。


 ……うるさいし手も掛かるけど、いないとそれはそれで寂しい。

 

 うちの義妹もどきは、宇宙一かわいいから。


 今日もまた、俺の部屋にはストーブの赤い光と、

 布団の中で暴れる義妹もどきの声が、妙に馴染んでいた。


お越しいただき誠にありがとうございます。


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ここまで読んで頂きありがとうございます。


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