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優しいだけの嘘つきは今日もラブコメを演じる ~幼馴染、義妹、婚約者、金髪碧眼、親友に迫られてます! 俺? ごくごく普通の陰キャモブですが……  作者: なつの夕凪
~第一章 天使同盟編~

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第244羽♡ 非公式生徒会 2

 

 ――7月30日、日曜日、午後7時30分。


 20XX年度第31回非公式生徒会WEBミーティング。


 出席者は会長1名、副会長1名、議長1名、会計1名、書記1名、広報1名、庶務1名、監査2名の計9名となる。


 副会長ポストは本来は2つだが、前回から変わらず1つは空席のままだ。


 「メンバーは揃ったようだね。では議長、始めてもらってもいいかな?」

 

 副会長の一声で、ミーティングは定刻通りに始まった。

 いつも通りの始まり方だ。


 「それでは20XX年度第31回非公式生徒会WEBミーティングを開始します。 まず皆さんにご報告することが二点あります。先の第30回で報告した通り櫻花の天使(赤城さくら)が、そして、先日、最後となる気ままな天使(高山莉菜)の翼の”傷”が塞がれました。明日7月31日午前11時より、白花学園第二校舎屋上にて、緒方霞は5人の天使のいずれかに告白するようです」

 

 議長の抑揚のない声もいつもと変わらない、事実だけを淡々と読み上げる。

 

 出席者は今日も、顔は映さず、声も音声ソフトで加工済み、性別も年齢などの経歴も一切が不明のままだ。

 

 「ありがとう……これで条件は揃ったね、会長、ご意見はありますかな?」


 しばらくミーティングを欠席だった会長が今日は出席している。それだけで一同の緊張が高まる。

  

 「いや……皆これまで、ありがとう、堕天使遊戯は予定通り進んでいる」

 

 「お言葉ですが会長、向井瀬夏むかいせなの件、我々は何も聞いてません。一言あって然るべきでは? 危うくこちらの計画が全て台無しになるところでした」

  

 広報は苛立ちを隠さず、進行を無視し、会長に質問を投げかけた。


 ここのところシナリオから逸脱した事態が頻発している。

 

 向井瀬夏の件も非公式生徒会メンバーは寝耳に水だった。


 その結果、非公式生徒会は状況確認と対応に追われ、ようやく終息したが不眠不休の日々が続いた。

 

 「向井瀬夏が緒方霞と接触した事案は、こちらも想定外だった。また、彼女と一緒にいたバイト先の男は調査の結果、彩櫻さいおうのグループと接触していたことを確認した」

 

 「つまり、我々とは無関係だと?」

 「その通り」

 

 「都合が良すぎます。絶対におかしいです。6月まではこんなことはなかった。7月に入ってから大小の想定外が多発しています」


 「シナリオの的中率は99.98%、誤差は生じるものだ」

 

 「1%未満の想定外が、短期間で発生なんてありえないです、それに会長、ミーティングに参加せず、これまで何をしていたのか教えてください」


 「悪いが言えない、知っての通り、非公式生徒会では情報の機密性を厳守のため、各々の業務内容は非公開としている」

 

 「この期に及んで、守秘義務ですか!? 大したお方だ、緒方霞の決断次第で、明日、我々の命運が尽きるかもしれないというのに」


 「その心配はない、緒方霞は我々のシナリオ通り動く……いや、動かざるを得ない」

 

 「ですが会長、現在の予測では、緒方霞は月明かりの天使(望月楓)を選ぶ可能性が濃厚です。これでは……」


 会計が広報の間に割って入り、苦言を呈する。

 音声ソフトで声を変えていても、会計が動揺していることは明らかだった。


 「堕天使遊戯が終わらない……だね、そして沈黙の7月が過ぎ、黄昏の8月が始まる、これは我々の望むところではない」

 

 「気ままな天使や放課後の天使(前園凜)を選ぶ可能性はないでしょうか?」

 「あるよ、だが、このふたりは我々にとってはセカンドプランだ、できれば他を願いたい」

 

 「櫻花の天使か癒しの天使(宮姫すず)……ですがそれでは……」


 「多くの犠牲を払うことになる、ふたりの天使は贄になるだけ。ただシナリオ通りなら仕方ない、恋をしたために地に堕ちた天使の白き翼を空に戻れぬように折る狂った遊戯、それが明日、終わりを告げる」

 

 「我々は見守る以外ないのですか?」

 

 「あぁ、我々は緒方霞と天使達の即興劇エチュードを支える舞台装置にすぎない」

 

 「本当に即興劇ですか? これは即興劇のふりをした脚本劇、緒方霞はシナリオを知っているのでは?」

 

 「広報、君はこの中に裏切り者がいると?」

 

 「えぇ、怪しいのは極端にミーティングの出席率が低い人物です」

 

 「発言を慎みたまえ、君の意見は根拠に乏しく、推測の域を出ていない。今はメンバー同士で仲違いしている場合ではない」

 

 これまで、黙っていた副会長が重々しい口調で広報を制した。

 

 「副会長、広報の苦言ももっともだ、だが、明日になれば全て露わになる。もうすぐだ」

 

 そう告げる会長は、達観しているようであり、何かを諦めているようでもあった。


 非公式生徒会の現体制が発足して以降、会長とともにメンバーたちは思うところがありながらも、力を合わせて堕天使遊戯を進めてきた。

 

 圧倒的な指導力、カリスマ性を持つ会長を疑問に思う人間など、これまで一人もいなかった。

 

 だが、ここ1カ月ほどで、万全だった権威は揺らいでいる。

 

 声には出さないが、広報だけでなく誰もが疑心暗鬼の視線を、ミーティングソフトの向こうにいる会長に向けていた。

 

 とはいえ、残されたのは一日だけ。

 

 今更できることは何もない。

 

 非公式生徒会メンバーは、互いのことを知らないまま、明日で堕天使遊戯が終わることを願っていた。


 そして、地に堕ちるしかない哀れな天使のことは考えないようにした。



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