第223羽♡ 元カノと義妹と夏祭り (#7 危なすぎる水着)
むにゅっ……。
潰れても押し返してくる柔らかな感触が、頭をくらくらさせる。
絶対にお風呂の床ではない。もっと別のいけないやつだ。やや視線を上げると、僅かに身体を起こしたセナが茫然とした表情で俺を見下ろしていた。
「……カスミ?」
「セナ、ご、ごめん! お、俺、もう上がるから!」
「待って! まだ泡がついたままだよ」
その場から去ることだけを考えた俺を、セナが呼び止める。だが、冷静さを欠いたのはセナも同じだったらしい。
「……え?」
セナが反射的に、俺の腰に巻かれたタオルを掴んでしまった瞬間、無情にも結び目が解けて――俺のありのままが、セナの眼前に晒された。
中腰のセナが、20センチ先で俺の股間と向き合い……驚いた表情のまま凝視している。
そして、二度ほど瞬きした後に、我を取り戻したのか、「あっ、ごめん」と漏らした声を聞いて頭が真っ白になる。
「うわぁーーーーっ!」
悲鳴をあげた俺は、股間を手で隠しながら、背中を向ける。湯気に混じった湿った空気が肌にまとわりつき、ますます逃げ出したくなる。
……終った。
もうお婿にいけない。
いや、俺の未来なんてどうでもいい。
「セナ……何て言えばいいかわからないけど……すまん!」
「……う、うん」
「タオルは返して」
「あ、そうだね、はい」
受け取ったタオルを腰に巻き直す間も、セナの視線を感じる、目を合わせるのが怖くて、冷静に考える余裕はない。
「洗ってもらうのは、もう大丈夫だから」
意を決して振り向くと、セナは身に着けたパステルイエローのビキニを整えていた。お湯で濡れた水着の生地が、窓からの朝日を反射し微かにきらめいている。
……そして、先ほどお世話になった白い谷間は実に柔らかそう。
「ううん、続けるよ」
「また、タオルが取れたらやばいだろ!?」
「今ので、だいぶ慣れたから大丈夫だと思う」
(……それ慣れない方が良いことだよね)
「セナが大丈夫でも、俺は大丈夫じゃないから!」
「じゃあ、代わりにカスミがわたしの身体を洗ってくれる?」
「ダメに決まってるだろ」
「じゃあ、このままわたしが、カスミの身体を洗うのを続ける」
「それもダメ」
「どっちかは選んで」
セナは声を荒げたりはしない、穏やかな口調で大胆なことを言う。
「どうしても?」
「早く決めてくれないと両方になるよ」
先ほど倒れた時に乱れた髪をゴムで結び直しながら、栗色の瞳は、熱を帯びたまま笑みを浮かべる。
(――この究極の二択は何っ!?)
あの柔肌に触れたら、俺の理性が確実に崩壊する。
だったら……。
「ボクの身体を洗ってください」
「うん……わかった」
背中に続き、前側をスポンジとボディソープで泡泡にしてもらう。
細い指が肌に触れる度にこそばゆい。
「かゆいところある?」
「だ、大丈夫だから」
早く終わってほしい……色々な意味で、やばい。
「シャワーで流して終わりね」
「お願いします」
温めのお湯で、まんべんなく泡を落としてもらう。
気持ち良いけど、緊張からか疲れが溜まっていく。
「はい、きれいになりました」
「ありがとうございます。じゃあ俺、先に上がっているから」
「わたしもすぐ洗い終わるから、一緒に上がろうよ」
「いや、ドライヤーを借りたいし」
「そう……わかった」
やや不満そうだが、ようやくセナが納得してくれた。
こうして、刺激の強過ぎる朝風呂は、何とか乗り越えられた……はずだった。
お風呂から出る俺を横目に、セナが自分の身体を洗うために、シャワーを浴びる。パステルイエローのビキニが濡れた肌に張り付いていく。
そして、水着が徐々に透けて、中身が浮かび上がってくる……椀の上の先っちょや、形の良い腰回りとか……。
「なぁセナ」
「ん?」
「それ、本当に水着?」
「……泳ぎに行く予定ないから買ってないよ」
「じゃあ今着ているのは?」
「聞きたい?」
「いえ、間に合ってます」
「ねぇカスミ」
「ん?」
「今なら誰も見ていないよ、カスミがしたいことをしている間は、大人しくしてる」
「え、遠慮させていただきます!」
昨晩と同じように、セナが俺を誘う。
俺は大慌てで、お風呂場を飛び出した。
セナが身に付けていたのは、パステルイエローのビキニではなく、普通の下着だった。
濡れた肌にぴったりと張り付き、身体のラインや生地の向こう側を、完全に隠すことはできなかった。
何も身に付けていないよりも、刺激的だったかもしれない。
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