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優しいだけの嘘つきは今日もラブコメを演じる ~幼馴染、義妹、婚約者、金髪碧眼、親友に迫られてます! 俺? ごくごく普通の陰キャモブですが……  作者: なつの夕凪
~第一章 天使同盟編~

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第216羽♡ 刹那との邂逅

 

 (まずいな……)

 

 天候不良により東海地方某所で停車した新幹線がもう30分も動いていない。

  

 こんなところで足止めを食っている場合ではないのに。

 

 リナが突然いなくなった。

 行き先は分かっているから行方不明ではない。

 中国地方にある実家に帰っただけ。

 

 今は、東京から離れてもらうわけにはいかない。

 戻ってもらわないと今までやってきたことが全て無駄になる。

 

 それだけじゃない、誰も救われない結末が訪れるかもしれない。

 

 だからリナが嫌がろうと、俺が嫌われようと関係なく東京に戻ってもらう。


 7月31日に白花学園で会うために……。

 

 ――自分でも焦っているのはわかっている。

 

 アイドルレッスンから帰宅後、実家に帰るというリナの書置きを読んだ俺は、最低限の荷物だけを持ち、すぐに家を飛び出した。

 

 そして東京駅から博多行きの新幹線に乗る。しかし悪天候でまさかの足止め。文字通り天に見放されているのかもしれない。

 

 新幹線が復旧し動き出したとしても、目的地のOY県OY駅に到着する頃には在来線の最終電車が終わっているかもしれない。

 

 もし最終電車に乗れなかった場合、今日中にリナの実家に辿り着く方法がなくなる。

 

 そして宿泊先もないまま、深夜の繫華街に放り出されることになるかもしれない。

 

 季節は夏、一晩外にいたとしても汗まみれで気持ち悪いことを除けば、大きな問題はない。

 

 だが深夜に街中をふらふらしてて、家出少年として補導されたらマズい。

 

 日頃の行いが悪いのは認めます。

 反省もしてます。だから早く運行を再開してほしいです。


 ……などと心中で願ったところで、どこかに届くことはない。

 

 



 そう言えば、以前も天候不良で新幹線の一次運航停止に出くわしたことがある。

 

 確か小学校五年生の夏休み、例年と同じように赤城家で一週間だけ親父と過ごし、リナの実家に戻る途中、今日と同じように静岡周辺で三時間ほど一時停車した。

 

 俺は戻るだけで、特段急いで帰る理由はなく、のんびりと復旧するのを待っていたが、手元に時間をつぶすものもなく辟易としていた。

 

 だから通路を挟んで反対側の席に座っていた同世代の女の子に話しかけてみた。

 

 女の子は最初、戸惑っていたけど、時間が経つにつれ、和やかな雰囲気になり、色々な話をした。

 

 女の子は役者をしているらしい。

 

 今回初めて大きな役をもらったけど、新幹線が止まってしまい現場に行く事が出来ず困っている。

 

 物心がついた頃から役者をしており、オーディションや収録の都合で学校が休みがちのため、友達が中々できないらしい。

 

 いつもオーディションで一緒になる小さくて元気な女の子が大好きなこと。

 

 今回の役に選ばれた時、その子が自分のことのように喜んでくれたこと。

 

 間もなく、その子が役者を辞めてしまったこと。

 

 その子が辞めたことにしばらく落ち込んだが、自分は一生役者を続けると決意したこと。

 

 『()()は誰にも負けない、いつかもう一度あの子と喜びを分かち合うまで』


 女の子は力強くそう語っていた。

 

 一人称が「ボク」なのが、女の子として珍しいと思い聞いてみたら、オーディションでいつも一緒になる女の子が自分のことを「オレ」というので、その子は「ボク」にしたらしい。

 

 「ボク」になってからは、「オレ」という女の子から勇気が貰えている気がして、何事にも前向きになったとか。

 

 『ありがとうカスミ君、またね』

 「うん。またね()()()()()

 

 新幹線が動き出した後、カナちゃんは新大阪で降りて行った。

 

 ……そうだ。

 あの子はカナちゃんという名前だった。

 

 顔はうろ覚えだけど、すごくかわいい子だったと思う。

  

 

 ……ってあれ?

 

 そう言えばカナちゃんってボクっ子だったな。

 大好きな女の子はオレっ子で……。

 

 カナちゃんは役者で、オレっ子も役者だったけど途中で辞めた。それは俺がよく知っているふたりと経歴が似ている。

 

 『風見刹那かざみせつなというのが恐らく本名だろう、一般には遠野奏多とうのかなたで知られている』

 

 ――奏多だからあの時はカナって名乗ったのか?


 『やぁ初めまして緒方霞君、ボクは一年F組風見刹那』

 

 五年前に新幹線で会ってたよね? 初めてじゃないよ。

  

 『そこの前園さんとは……あれ? どんな関係だったかな?』

 『友達だろ友達!』 

 『そうか……ボク等は友達だったのか』

  

 大好きな前園から友達と言われたのが嬉しくて、笑顔を浮かべていたのか。

 良かった……風見さんと前園と再会できて。


 『しかし君は実に興味深いね。できれば違うカタチで出会いたかったよ』

 『以前は僅かばかりだが因果を感じたけど、今のボクと君との間には何もない』

 

 ――何が因果だよ。厨二病じゃあるまいし。

 とっくに俺のこと、気づいてただろ?

 

 『君に会えてよかった。次はボクから声を掛けるから』

 

 あの日の別れ際にそう言ってたよね?

 気づいた時点で声を掛けてくれば良かったのに。

 

 俺はどうして気づかなかったのだろう。

 クラスが違くても何度か校舎ですれ違っているはずなのに。

  

 ごめんカナちゃん。

 東京に戻ったら必ず第二ピアノ室に行くよ。


 でも今はリナを迎えに行くから……。


お越しいただき誠にありがとうございます。


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凛ちゃんモテるなぁ……。

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天候はどうしようもないですよね。しかも遠距離、果たして着くのか……? 補導される前に不埒な輩に目をつけられそうなのが心配です。 後書きのひと言にも頷きましたが。 カスミ、こんなところにもフラグを立て…
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