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優しいだけの嘘つきは今日もラブコメを演じる ~幼馴染、義妹、婚約者、金髪碧眼、親友に迫られてます! 俺? ごくごく普通の陰キャモブですが……  作者: なつの夕凪
~第一章 天使同盟編~

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幕間5♡ アイを請うふたり


 ――時は7月26日木曜日午後23時11分に遡る。

 

 とある男女が電話で話をしていた。

  

 「どういうつもりだい?」

 『さて、何のことですか?』

 

 「しらばっくれないでくれ、どうして君があのカフェで働いている?」

 『これまでの仕事が一段落ついたので、一度やってみたかった接客バイトをしているだけですよ』

 

 「ならディ・ドリームじゃなくてもいいよね」

 『小学校からの友人に紹介されたんですよ、近場で良いところがあるって』

 

 「では凜や望月先輩がいた、あの場に君がいたのは偶然だというのかい?」

 『そうです。時任さん』

 

 「佐竹さんにディ・ドリームを紹介した人が誰か教えてもらえるかな?」

 『……あなたの後輩の一人ですよ』

 

 「白花の生徒ってことだね」


 『まぁそうですね、わたしからも伺いたいのですが、今を時めく若手実力派俳優のあなたが素顔を隠し、宮姫さんを連れてわざわざ来店した理由は何ですか? まさか前園さんの仕事ぶりだけを見に来たわけではないですよね?』

 

 「そのまさかだよ、すずちゃんに一緒に行かないかと誘われたからね」

 『本当ですか?』

 

 「あぁ、他意はないよ」


 『……まぁいいでしょう、言えないことがあるのはお互い様ですから、わたしに会いに来てくれたわけではないのですね』

 

 「何度ボクが会おうとしても君は拒否し続けてきただろ」

 『それもお互いのためですよ』

 

 「今もあの家で暮らしているのかい?」


 『あの家……あぁ用賀のことですか? この春から父が稽古場として使っていたマンションに越しました』

 

 「では一人暮らし?」

 『いいえ、父とのふたり暮らしですよ』

 

 「実際は?」


 『週二日、父が泊まりに来ることになっています。実際はどこにいるのか知りませんが』

 

 「でも用賀の人達は、君の住むマンションにあの男がいると思っている訳だろ。相変わらず最低だな」


 『衣食住はちゃんと用意してくれるので、最低かもしれませんが最悪とは思いませんよ』

 

 「そんなの当然のことだろ、そのマンションに君がいる限り、あの男のアリバイ作りに利用されることになる。もし用賀の人達に知れたらどうする?」


 『良くはないですね。だから9月辺りに今の家からも越そうと思っています。幸いわたし一人なら困らない程度のお金は貯まったので、今度こそ静かな一人暮らしを』

 

 「……もし良ければウチの実家に来ないか? 嫌なら、どこかを家を借りてボクとふたりで暮らすでもいい」


 『ありがたいお話ですが、遠慮させて頂きます。時任さんとわたしが一緒に暮らす理由がありません』

 

  

 「理由ならあるだろ、()()()()()()()()()()()()なんだから」



 『……優しいんですね。でも、わたしはあなたからお父さんを奪った女の娘ですよ。好意を受けるのには値しませんよ』

 

 「君のせいではないだろ、結局、あの男は君の母親とも別れて、その後も結婚離婚を繰り返している、家族の幸せなんてこれっぽちも考えていない」


 『父と母の離婚は、父以上に母に問題があったからですよ。父の四度目の結婚生活は上手くいってます、子宝にも恵まれ、世間評価もプレーボーイから子煩悩パパに代わり仕事も絶好調ですよね』

 

 「人を欺くことだけは上手いから、ホント虫唾が走るよ」

 『父のことは話すだけ不毛ですよ。先ほどの申し出ですが、やはりお受けできません。わたしは前園さんの代わりにはなれませんし』

 

 「凜は関係ない、あの子は……」

 『()()()()()()()()()()()とは言えませんよね、実の妹に』

 

 「……」

 

 『ごめんなさい、意地の悪い物言いでした』


 「……別にかまわないよ」 


 『()()()に聞きたいことがあります』

 

 「何かな?」


 『ご存知かと思いますが、前園さんとアイドル対決をすることになりました。もちろん勝つつもりです。前園さんもこの勝負にはカスミン先輩が掛かっているから仕上げてくるでしょう。兄さんから見て、わたしに勝ち目はありますか?』

 

 「ボクの言うことなんて何の参考にもならないよ」

 『今も舞台に生きる人間としての客観的な評価が聞きたいです』

 

 「凜はね特別なんだよ……今、あの子が舞台にいないのは大人達に見る目がなかったから……君には悪いけど」

 

 『ありがとうございます。一度だけオーディションで一緒になったことがありまして、今でもあの時のことを夢で見るんです。膝から崩れ落ちた無様な自分の姿を……今度はわたしが勝たなければいけません』

 

 「凛に拘る理由は本当にそれだけ?」

 『ええ、だから兄さんには、わたしに敗れた前園さんを慰めてほしいです』

 

 「君が勝ったとしても、その役目はボクじゃないよ」

 『それなら大丈夫ですよ、カスミン先輩はわたしがもらうので』

 

 「本気で言っているのかい?」

 『もちろんです』

 

 「……やる気だけじゃ勝てないよ」


 『そうですね、でも兄さんにも悪い話ではないですよね? 兄妹で仲良く美味しいパイを分け合う、ただそれだけのことです』







 

 「……ボクは何をすればいい?」

 『話が早くて助かります。ではまず……』



 

 佐竹葵はその日、初めて時任蓮司のことを兄と呼んだ。


 葵の話は節々に不明瞭なところがある。

 また時任の事情を知り過ぎている。

 どうしても不信感が拭えない。

 

 それに彼女の提案に乗ることは、部分的に協力関係にある緒方霞を裏切ることになるかもしれない。


 それでも時任蓮司は拒むことができなかった。

 前園凜をただ一人の女の子としてアイしていたから。

 

お越しいただき誠にありがとうございます。


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まさかの繋がりが。 色々わかり、同時にわからなくなりました……。 葵ちゃん、アイドル対決に関しては店長さんとも何やら企みがあった様子でしたよね。 もしかして、店長さんより一枚上手……? カスミが目的…
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