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優しいだけの嘘つきは今日もラブコメを演じる ~幼馴染、義妹、婚約者、金髪碧眼、親友に迫られてます! 俺? ごくごく普通の陰キャモブですが……  作者: なつの夕凪
~第一章 天使同盟編~

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225/262

第213羽♡ 君の名はセバスチャン、僕はカスミン

   

 ――7月26日木曜日午後21時36分。


 前園家を後にして俺は宮姫を自宅に送る。緒方家は前園家と宮姫家のおおよそ中間点くらいにある。

 

 今日は池袋で沢山買い物をしたため買い物品で両手が塞がっていた。一旦荷物を自宅に置いてから宮姫家に向かう。


 「タクシーかバスで帰るつもりだったから送ってくれなくてもいいのに」

 「朝も会ったから()()()()ってわけにはいかないだろ」

 

 「……そうだよね」

 

 今日分のノルマ……非公式生徒会にキス写真を送るが残っている。先ほど前園家で宮姫に会わなかった場合、どうにかして宮姫に会いに行かなければならなかった。

 

 「ノルマの前にちょっとだけ話を聞いててくれる?」

 

 「あぁ」

 

 少し沈んだ表情の宮姫はゆっくりと語り出した。


 「お凛ちゃんが家に下宿しないのは何となくわかってた。中等部の頃、美術部にはわたしとお凛ちゃんの他にも何人か部員がいたの、でも気づいたら誰も来なくなった。嫌な空気をわたしが出してたんだと思う」

 

 「下宿先はさくらちゃん家が一番良いと思う。でも毎日凛ちゃんにおはようとおやすみが言えるのは羨ましい」

 

 「あの子のことになるとブレーキが利かない、自分でもやだなぁって思う、この気持ちはホント面倒くさくて嫌」

 

 「前園のことが大切ってことだろ」

 「そうしないと不安なだけだよ」


 「ところで普段わたしに業務連絡しかしてこないね」

 「協力関係を結ぶときに慣れ合いはしないって決めただろ」


 堕天使遊戯がスタートとした頃、宮姫と協力関係を結ぶ条件が、必要以上に慣れ合わないことだった。実際、しばらくは必要以上の接触を避けていた。最近はそうでもないけど。

 

 「意外と真面目だよね緒方君は」


 言われた条件通りやっているのになぜか不服そう。

 ……なぜ?

 

 「宮姫さんどうすりゃいいの?」

 「そんなの自分で考えて」


 

 プイとそっぽを向いてしまう。

 答えを教えてくれるほど幼馴染は優しくない。塩対応はいつも通りだ。

 

 「たまには業務連絡なしで電話する」

 「いいよ、出ないかもしれないけど」

 

 「なら次の日も掛ける」

 「次の日も次の日も出なかったら?」

 

 「その時は宮姫に会いに行く」

 「それはちょっと困るかも」

 

 「どうして?」

 「雰囲気に流されそうだから」

 

 視線を落とす寸前の琥珀色の瞳は潤んでいるように見えた。

 ――今ならいけそう。


 周囲を確認し、誰もいない事を確認した上で、形のいいあごをつまむ。

 宮姫の瞳が閉じられた後、ゆっくりと唇を重ねる。


 今日もその唇は柔らかくて、甘くて、そしてどこか切ない。

 

 さっさとキス写真を撮って終わらせなくていけないのに離れたくない、すーちゃんも拒まない。

 

 息が続かなくなったところでようやく今日分のキスを終える。


 緒方霞と宮姫すずの間は言い訳が多過ぎるかもしれない。


 十年前に離れなければ、もっと素直になれたかもしれない。

  

 「さっき、お凛ちゃん緒方君のことを好きって言ってたね、付き合うの?」

 「できるわけないだろ! これもシナリオかもしれないし」

 

 「非公式生徒会の……でも、もし違ってたら?」

 

 「その()()は成立しないよ、堕天使遊戯がなければ前園が俺に話しかけてくれたかもわからない」

 

 「非公式生徒会や堕天使遊戯がなくてもお凛ちゃんと緒方君は仲良くなれたと思う」


 「前園は大抵の男子と仲が良くできるからな、俺みたいな陰キャも含めて」


 前園のコミュ強ぶりは半端ない。仮に友達が1000人いると言われても前園ならいるのが当たり前だと思い、疑問にすら感じない。


 加えて「前園と俺、良い感じじゃね?」と勘違いしている男も沢山いそう、こちらは少し心配だ。

 

 「そういうのじゃないよ……緒方君だからだよ」

 「逆に聞くけど、俺が前園と付き合うと言ったら、宮姫はどうする?」


 「……どうもできないよ。ふたりを止める権利はないし、ちゃんと応援できればいいけど」

 

 「じゃあ俺と宮姫が付き合うことになったら、前園にどう説明する?」

 

 「え? 緒方君はわたしと付き合いたいの?」

 

 「例えばの話だよ、例えば」

 

 「……そうだよね、多分だけどお凛ちゃんになかなか言えないと思う、でも勇気を出して言えばあっさり許してくれそう、優しいからね」


 「そっか」

 

 「でも緒方君はわたしに告白なんて絶対しないから心配無用」

 「それはわからないだろ、小さい頃の俺はすーちゃんのこと大好きだったし」

 

 「あの頃のかーくんならね、今は緒方君の回りに女の子がたくさんいるし」

 「すーちゃんを大切だと思う気持ちは変わらないよ、今も昔も」

 

 「……わたしも変わらないと言えたら良いのに、送ってくれるのここまでで大丈夫、家はすぐそこだし」


 「了解、じゃあこれ、大したもんじゃないけど」

 

 楓や加恋さんと同様に宮姫にもルナシャインシティで買ったプレゼントを渡す。先ほど前園家を出る前、前園にも渡した。

  

 「ありがとう、これは?」

 

 「アリスモチーフのチャーム、あとごめん、すーちゃんに貰ったウサきちをリナに渡しちゃって」

 

 「え? ウサきちって何?」

 

 「リナの部屋にあっただろ、三月うさぎのぬいぐるみ、昔すーちゃんに貰ったの忘れてて」

 

 「あの子のことか……ってでも違う、セバスチャンだよ! ウサきちなんて名前じゃない、間違えないで」

 

 「す、すみません」


 「もう……わたしだと思って大事にしてねって言ったのに」


 言われてみるとすーちゃんに、この子はセバスチャンだよと言われたような気がする。でもそんなハイセンスな名前は覚えづらくて、ウサきちに改名したような。


 かーくんはズボラだったみたい。今も変わっていないけど。

 

 ともあれ、ウサきちの真名はリナに共有しておかないと。


 何はともあれ、ウサきち改めセバスチャン、俺はお前の元ご主人様をこれからも大切にする、代わりに寝相の悪い義妹もどきを頼む。


 割に合わないって? 

 そこを何とかセバスチャン先輩バイセン……。


お越しいただき誠にありがとうございます。


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