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優しいだけの嘘つきは今日もラブコメを演じる ~幼馴染、義妹、婚約者、金髪碧眼、親友に迫られてます! 俺? ごくごく普通の陰キャモブですが……  作者: なつの夕凪
~第一章 天使同盟編~

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第207羽♡ 姉妹デート (#2 男の娘のお買い物)

 

 「どう?」

 「うん……ちょっと普通過ぎるかな」

 

 「バイト先に着ていくから派手なのは無理だよ」

 「普通のバイトだとそうだろうけど、お姉ちゃんの場合、お客さんやファンに見られるなら華やかな方がいいと思う。アイドルだし」

 

 「そうかな……じゃあリナが選んでよ」

 「いいよ。じゃあ何枚か見繕うから少し待っててね」

 

 「うん、お願い」

 

 ルナシャインシティは池袋東口から徒歩10分ほどのところにある商業複合施設だ。水族館やプラネタリウムだけでなく各種ショップや映画館、室内テーマパークなど充実しており、一日中楽しめる。

 

 わたし達は今、フロア三階の専門店街にある女性向けのファッションショップにいる。夏休みに入りカスミンとして過ごす時間が急増しているため、どうしても女の子……もとい男の娘としての服が必要だ。

 

 普段緒方霞として服を買う時は、値段とサイズだけを見てデザインはほとんど気にしない。


 だから霞からカスミンに変わったからと言って、いざかわいい服を選べと言われてもできるわけもなく、何を選んだらいいかよくわからない。


 ローマもファンションコーデも一日にして成らず。

 お洒落さんは普段から良いアイテムをマメにチェックしているから買う時に失敗しないのだろう。


 着るものに無頓着なわたしでも、奇跡的に自分に合う服を選ぶ可能性が半分だとすると、家に帰ってからどうして自分に合わない服を選んでしまったのだろうと頭を抱える可能性が半分くらいある。


 だったら現役女子高生として目も肥えているリナに選んでもらった方が確実だ。

 楓や宮姫とよく買い物に行っているし。 

 

 フィッティングルーム横で待っていると、お店の中をクルクル動き回っていたリナがしばらくしたら戻って来た。

 

 「お待たせ、じゃあ順に全部着てみて」

 「えっ、こんなにたくさん?」


 カゴの中には何着入っているか分からないくらい沢山詰まっている。

 

 「色々着てみないとわからないのだ、お姉ちゃんの好みもあるだろうし」

 「それはそうだけど」

 

 「店員さんもどんどん試して下さいねって」

 「そう、ならいいのかな、じゃあちょっと着替えてくるね」

 

 「着方がわからないものがあったら声を掛けて」

 「うん」

 

 フィッティングルームのカーテンをかけ、持ってきてくれたカゴの中から服を取り出す。

 

 男のわたしが女性向けファッションショップで着替えている。

 何だかいけないことをしているような気がして胸がドキドキする。

 

 「あ、これかわいいかも」

 

 カゴの中で一番上に置いてあった小花柄のワンピース、ゆったりしていて肌触りも良い。

 

 でもわたしに似合うのかな。

 不安を感じつつも、とりあえず着てみる。

 

 サイズはぴったり。 

 姿鏡に映るわたしはそんなに悪くないと思う。

 

 でも他の人からどう見えるかは別なわけで、リナの判定結果が×なら残念だけど諦めるしかない。

 

 「ねぇ着替え終わった?」

 

 カーテンの向こうからリナが呼んでいる。

  

 「うん。でももうちょっとだけ待ってて」

 

 鏡に映る自分に変なところがないかチェックする。

 妹に見せるだけのことなのになぜか緊張しているわたしがいる。


 不安な心持ちを抱えたまま、覚悟を決めゆっくりとカーテンを開ける。

 リナはじっくりとわたしを見据える。


 「どう?」

 「……ふむ」

 

 緊張でごくりと息を呑む。


 「So Cute! My Sister!!」

 「えっ?」 

 

 「すごくいいと思うのだ」

 「ホントに!?」

 

 「色合いも合っているし、涼し気なお嬢さんって感じがする」

 「そう……良かった、良かったよぅうう」


 緊張が一気に解けたわたしはヘナヘナとへたり込んでしまった。


 「む? 何でそんなに疲れ切っているのだ?」

 

 「だって変って言われないか不安で」

 「全然……というかお姉ちゃんはスタイル良いし、大抵のものは似合うはず」

 

 「そんなことないから」

 「あるよ……ほら周りを見るのだ、店員さんもお姉ちゃんのことを見ているし、他のお客さんも」

 

 「えっ!?」

 

 言われてみると、あたりの視線がわたし集中している気がする。

 これどういうこと?!


 「うむっ……さすが現役アイドル様じゃ、今日はお忍びでもかわいさが駄々洩れのようで」 

 「ち、違うから!」


 急に恥ずかしくなったわたしは慌ててフィッティングルームのカーテンを閉めた。

  

 「ねぇお姉ちゃん聞こえる? もっと自信持って」

 「無理だよ、そんなの」

 

 「じゃあさっさと服を選んでお買い物を終わらせよう、じゃないと恥ずかしい時間が長く続くよ」


 「そうだね。じゃあ他のを試着したら、また声を掛けるね」

 「ほーい」


 はぁ……

 フィッティングルームの中でわたしは深呼吸する。

 

 最近、女形カスミンでいることにすっかり慣れたつもりでいた。

 でもそんなことはなかった。

 

 周りがわたしを見る視線が気になる。

 こんな弱弱な心持ちでアイドルなんて務まるのだろうか。


 アイドル道は険しく遠い。

 ……好きでやっているわけではないけど。


 その後、何着か試着を済ませ、最初に着たワンピースとマキシ丈スカートやブラウス、女性用のインナーやリナの服や、ふたりでお揃いのキャミワンピも買った。

 

 気付いたら両手が塞がる大荷物になっていたので、水族館に行く前にコインロッカーに一度預けることにした。


 ショップの会計横にあった豊胸パットがすごくすごく気になったけど、リナの前で欲しいという勇気がなく、泣く泣く買うのを断念した。


 ……わたしの意気地なし。

 いいもん、後でこっそりネット通販で買うから別に。


お越しいただき誠にありがとうございます。


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この話見ると、カスミ君女主人公と言われても、違和感ないどころか、ヒロインとして人気がとてもでそうですね。 妹さんにスポットをあてつつ、他の登場人物の魅力を引き出すのは凄いなと思いました。 そして、…
姉妹仲良くショッピング……ではなく。 すっかりカスミンなカスミ。ちょっぴり(かなり)心配になってきました。 この先もしバイトを辞めたとして。 カスミの中のカスミンの存在は抹消できるのでしょうか……? …
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