第197羽♡ ご飯にします? お風呂にします? それともわ♡た♡し?
――何これ!?
どうやら前園はまた禄でもない事を考えているようだ。
そしてリナも。
宮姫を家まで送り、帰宅した俺はすぐに異変に気付いた。
お風呂上がりでTシャツと短パン姿の前園とリナが玄関で床に額をこすりつけて俺を出迎えたから。
「ふたりとも何しているの?」
「もちろんご主人様のお出迎えです」
「ご主人様?」
「はい、本日は家に泊めて頂き誠にありがとうございます。明日の朝まで緒方様がオレ……じゃなかったわたしのご主人様です。何なりと申し付けください」
「特にない、せっかく泊まりに来たんだしゆっくりしていけよ、リナも何やってるの?」
「緒方君への日頃の感謝を込めてご奉仕させて頂きたく存じます」
「しなくて良いから普通にして!」
「えぇ!? わたしたちにご奉仕させてくれないんですか?」
「あぁ必要ない!」
「そんなぁ……ではせめて次の四コースから好きなものを選んでくれませんか、おゲーム、お風呂、お夕食、添い寝」
「夕食は宮姫がいた時に四人でもう済ませただろ」
「食後のデザートがまだかと、ストロベリーショートケーキより甘い甘いわたしたちを残さず綺麗に食・べ・て♡」
「却下、俺一人でお風呂に入ってくる。上がったらおゲームをやろう」
「えぇ!? お風呂お一人ですか? わたしと高山のふたりで身体の隅々まで綺麗にして差し上げますが」
「間に合ってます」
「ですが昨今緒方って本当は女子なんじゃないの? カスミンが本当の姿で霞の方が設定では? と各方面から緒方霞ガチ乙女疑惑が浮上しておりまして、すぐにでも確認検証する必要がございます」
「ガチ乙女じゃなくてガチ陰キャ男子です。カスミンが設定です。とにかく俺がお風呂に入っている時は絶対に入ってくるなよ!」
「それは暗に入ってこいって言っているのですね。かしこまりました。高山、今すぐにスク水用意!」
「御意、スク水用意!」
「御意じゃなーい、本当の本当で入ってこないで!」
「そう言わずボディタオルを使わず、わたし達の身体にボディソープを付けてタオルの代わりに緒方様の身体をごしごしと洗わせてください。 その方が男子は喜ぶとネット記事にもありました」
「その記事は間違っている。信じるな!」
……いや間違っていない。
でもそんな洗い方をされたら良心も身体ももたない。
「そうですか……かしこまりました。ではわたしたちは緒方様が上るのを待っております。御用の際はすぐに申し付けください」
「あぁ」
ようやく諦めたらしいふたりを置いてたまま、俺は一人お風呂に入る。
諦めたように見せかけて、俺がお風呂に入っている間に何かしてくるかもしれない。そう思った俺は湯船に浸かることなく大急ぎでお風呂を済ませた。いつもならカスミンとして行うお風呂でのボディケアもこの日は全てキャンセルした。
しかし俺の危惧は当たらず、ふたりは本当に何もしてこなかった。
それもそのはず、最初からお風呂、お夕食、添い寝の三つは俺が選択しないことを分かっていたからだ。
本命は最初からおゲーム。
おゲームが一番安全そうだと思い選んだ結果、まんまと嵌められたのだ。
この後、二人の考案したその名も俺TUEEEゲームの恐ろしさ、えげつなさに戦慄することになる。
普通の据え置きゲームやソシャゲだったら良かった。
前園に四コースを提案された時に、もっと細かく内容を確認すれば良かった。
後悔は先に立たず……
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