第191羽♡ ハーレムカラオケ
参加者全員がコスプレしている狂気のカラオケ大会は着々と進んだ。
わたし、加恋さん、葵ちゃんのディ・ドリームバイトチームは、絶対エース葵ちゃんの高パフォーマンスと酔いどれ加恋さんのこぶしがきいた演歌で高得点を連発。
一方の前園、楓、宮姫のトリプルおっぱいシスターズチームも芸能人時代に歌唱レッスンを受けた経験があり、普段から楽器を嗜むなど素養の高い前園、そして何事も無難にこなす宮姫のふたりで応戦。
この四人はハイレベルな戦いを展開する。
だけどわたしと楓が双方の足を引っ張る。
わたしは音域が狭く、楓はすぐに声が裏返る。
個人戦、二人デュエット対決、三人トリオ対決など計十戦行うも五対五のタイで決着がつかず。延長戦でさらに十戦行うも、またしても決着付かずの完全膠着状態。
加恋さん達より二時間多く歌っているわたしと楓の喉が限界になり一次休戦となった。
そして一息ついたその時、わたしはようやく周囲の異変に気付いた。
「カシュミ~ここどこぉ? あれぇ? カシュミが警察官さんになってるるる? わたし逮捕されちゃうの? あっはははは」
「あぁ美しく可憐な花々が咲いている。どの子を選べば良い? いや選ぶことなんてできやしない、罪深いこのオレはどうすれば良い?」
「パパとママ、エリちゃんはどこ? う、う、うわ~ん」
いつの間にか楓、前園、宮姫の三人がぶっ壊れている?
これは一体?!
「うむ、イマイチ攻めきれない楓の背中を押したつもりだったけど、まさか前園さんと宮姫さんまで効いてしまうとは」
「白花の天使達は耐性ゼロですね、でも更に面白くなってきましたよ、ふふっ」
ディ・ドリームの二大悪魔が漆黒の翼を広げ邪悪な笑みを浮かべている。
「加恋さん、葵ちゃん何をしたの?」
「あたしゃ何もしてないよ、ここに来る途中で輸入雑貨店で買ったお菓子をテーブルに並べただけ」
「買ったチョコレートがたまたま洋酒入りだったみたいですね。わたしたち全然知りませんでしたぁ」
――しまった。
またやられた。これは勉強会の時と同じ策だ。
ふたりはコスプレに着替え終わった後、チョコレートだけでなくポテチやクッキーなどのお菓子をクリスタルテーブルに広げていた。
歌うことでカロリーを消費し小腹が空いていたのだろう。わたしは食べなかったが他の皆はパクパクと食べていた。
「知らなかった? 楓は甘いものがあると無意識のまま食べ続けるの、なくなるまで」
そんなの知らないよ!?
だから節制して運動もしてるのに全然痩せないと悩んでたんだ。
……意識が元通りになったら教えてあげないと。
「おいカシュミ」
「はい、なんでしょう楓さん」
「このジュースを飲め」
真っ赤な顔で目をとろんとさせた楓は、オレンジジュースの入ったグラスをわたしの鼻先に突きつける。
甘いものを食べながら甘いジュースまで飲んでいたようだ。
「いえ間に合ってます」
「にゃんだとぉ~わたひのジュースが飲めないと言うのかぁ?」
この一昔前の平社員とパワハラ上司の飲み会やり取りみたいなのは何?
「だって間接キスになっちゃうじゃないですか」
「別に良いだりょお、だってカシュミとわたしは……あれ? 何だったっけ?」
ここはいつもの通りわたしたちは親友だよ。と言ってあげれば良いはず。
「楓、あなたとカスミンはいつもチュウしちゃう関係よ」
一歩早く加恋さんが悪魔の囁きをする。
し、しまったぁ!
早く訂正しないと。
「そうだったっけ? じゃあカシュミ、チュウしゅる」
「楓ちょっと待って! 落ち着いて!」
「やーだ。するって言ったらするのら。そりゃわたひは凛ちゃんやすずちゃんみたいにかわいくないし、リナちゃんみたいに愛想も良くない、赤城さんほどまっすぐでもない……でもでもわたしもそれなりに頑張ってるのら、だからご褒美のチュウぅ」
「うそ? 皆の前で本当に?」
「うそもへったくれもないのら」
目を瞑り、所謂キス顔をわたしに向けてくる。
だけど目を瞑ったことで急に眠気に襲われたのか、そのまま電池切れになった。
「すや~むにゃむにゃ」
「た、助かったぁ」
楓の猛攻を耐えたわたしはそのまま椅子にへたり込む。
「ちっ……もう少しで楓の大勝利またはカスミンに多額の慰謝料を請求できるところだったのに」
「ちょっと加恋さん、楓に変なことさせないでくださいよ!」
「でもチュウしようとしたのは楓の意志だし」
「今の楓は正気じゃないでしょ」
「かーくんがえっちなかっこうのおんなのひととへんなことしてる、いけないんだ」
アリスコスの宮姫が冷たい目でじーっとわたしを見つめている。
「すーちゃん違うよ、楓お姉ちゃんはちょっと疲れてただけ」
「かーくんはそうやっていつもうそをつく、ほいくえんでもほかのおんなのことなかよくしてた」
そうだった?
わたしの記憶では、すーちゃんと楓以外の子と遊んだ記憶がない。
「わたしの一番はすーちゃんだよ」
「ほんとうに?」
「うん」
「じゃあおよめさんにして」
「ええっ!?」
「ダメなの?」
「ダメじゃないけど、もうちょっと大人になってから考えよう、ねっ?」
「パパもママもかーくんもそうやっていつもごまかす」
「ごまかしてないよ」
「じゃあせいいをみせて」
「す、すーちゃん難しい言葉を使うね。わかった……ちょっとだけ待って」
今の宮姫は正気じゃない。
何を言っても明日には忘れているはず。
この場をやり過ごすだけなら、お嫁さんにしますだろうが専属メイドになりますだろうが何を言ってもアリだ。
だけどすーちゃんには適当なことを言いたくない。
この場にはわたしとすーちゃんだけでなく大悪魔二人と前園がいるし。
さて……どう切り抜けよう?
わたしの考えがまとまる前にすーちゃんは更にとんでもない事を言う。
「かーくんおしっこ」
「え?」
「はやくつれてって、でちゃう」
「えぇ――!?」
それお嫁に貰うより大問題だよぉ!?
わたしとおしっこは絶対ダメぇーー!
※洋酒入りチョコは未成年が食べても問題ないらしいです。
月明かりの天使
望月楓所持スキル:炊事洗濯万能
かわいい
勉強が得意
天然
怪力
時速80キロで歩く
無意識で甘いものを食べる ←★new
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