表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
優しいだけの嘘つきは今日もラブコメを演じる ~幼馴染、義妹、婚約者、金髪碧眼、親友に迫られてます! 俺? ごくごく普通の陰キャモブですが……  作者: なつの夕凪
~第一章 天使同盟編~

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

196/259

第185羽♡ 一人カラオケ

 

 ――7月23日火曜日午後2時43分。

 

 広田や風見さんと別れ、学園を出た俺は私鉄大田急線経堂駅そばにあるカラオケ店『カラオケ来て味噌みそ』に移動していた。

 

 通称カラ味噌は関東近郊で展開されているカラオケチェーンだ。


 フードメニューは味噌入りパスタや味噌ピザ、絶品もろきゅうなど味噌メニューに力を入れており、ドリンクバーには通常のドリンクの他にシジミ、なめこ、わかめの3種のお味噌汁が常備されている。

 

 近隣には他にもカラオケチェーンはある。


 だが渋めのカラ味噌は穴場である事や、美味しいお味噌汁と学割料金プランに魅かれここを選んだ。

 

 通された部屋は最大でも4人程度しか入れないが、俺一人なので十分広い。

 冷房もよく効いており、快適空間そのもの。

 

 普段カラオケには行かない。


 今日来ているのはアイドル活動の自主練としてだ。

 なのでアイドル活動終了までは何度かお世話になるかもしれない。

 

 そもそも放課後カラオケに行くような友達がいない。

 

 世間的には一人カラオケは普通になっているようだが、高校生デビュー後の初カラオケがぼっちなのは寂しい。

 

 などと考えながら歌い始めて20分ほど経った頃に、前園から電話がかかって来た。

 

 『なぁ緒方、明日泊りに行って良い? 今日はすずすけの家に泊めてもらうから』


 「あぁ下宿先を決める件な、いいぞ、リナにも伝えておく」

 

 『ありがとう頼むよ』

 「ついでで悪いけど俺も前園にお願いがあるんだけど」

 

 『なになにっ? オレはなにをすればいい?』


 「一昨日くらいからリナが不機嫌なんだよ。明日の夜、不機嫌な理由をそれとなく聞いてくれないか?」

 

 『妹ちゃんのことか……いいけど、まさか変なことしたの?』

 「いやいやしてないから!」

 

 リナの不機嫌理由として考えられるのが、一昨日5つ買ってくるように頼まれたプリンを3つしか買って帰らなかったことくらい。

 

 食べ物の恨みは怖いと言うが、数日に渡って機嫌が悪くなるほどの理由とは思えない。だけど他に思い当たる節がない。

 

 『まぁわかった、まかせておけ! それより緒方……』

 「ん?」

 

 『オレたちホントのカップルじゃないけど今付き合っているだろ? 母さんを誤魔化すためにも、もうちょっと多めに連絡してほしいというか』


 「そうだな……悪い前園」

 

 『あと、できればこの前みたいに名前で呼んで欲しい』

 「了解、じゃあその……凜」

 

 『ありがとう霞、嬉しい……けどなんか照れくさいな』


 前園は普段からかわいい女の子だけど、名前で呼ぶと異性として必要以上に意識してしまうから恥ずかしい。


 だが前園もそれは同じみたいで……ちょっと胸がドキドキする。

 

 はたして俺達の距離は縮まり、本当のカップルとして互いを名前で呼びあう日が来るのだろうか。

 

 『そ、そういえばさ楓とは普通に名前で呼び合ってるだろ、あれいつから?』


 「恐らく楓のお母さんが再婚した頃だな、それまではまゆずみって苗字で呼んでたし、確か苗字は変わっても名前は一生変わらないからって言われたような」

  

 『……そっか、やっぱり楓には敵わないのかな』

 「ん? どうかしたか」

 

 電話越しなのでイマイチわからないが前園がしょんぼりしているように感じる。

  

 『……ううん何でもない。もしもの話だけど将来オレ達が結婚したら、霞もオレのこと前園って呼べなくなるぞ』


 「その時は宮姫みたいに()()()()()って呼ぼうかな」

 

 『――やめて、そう呼んでいいのはすずすけだけ』

 「あっ……ごめん」

 

 『すずすけにもやめろって前から言ってるんだけどさ、いつまでもお凛ちゃんのままなんだよ……それはそうと、さっきから霞の声とは別に歌声みたいのが聞こえるんだけど』

 

 「今、経堂のカラ味噌で一人カラオケしてる」

 『そうなんだ、霞はカラオケ好きだったの? 初めて聞いた気がする』

   

 「いやアイドル活動の自主練だよ。ダンス下手で、歌も怒られてばかりで」

 『へ~でも練習熱心だな』

 

 「人前で歌うから最低限の努力はしてるだけだよ、ところで凜と楓はどうなんだ?」


 俺が加恋さんと葵ちゃんとアイドルユニットを組んでるように、凜も楓と先日からアイドルデュオを組んでいる。ふたりは俺達に巻き込まれたようなものだけど。


 『オレも自主練を始めたよ、あとさくらがオレと楓をサポートしてくれることになった、霞がさくらに話してくれたの?』

 

 「さすがにアイドル活動の準備諸々を凛と楓のふたりでやるのは大変だろうと思って」


 『ありがとう、葵ちゃんには啖呵たんかを切ったけどさ、大したプランはなくて、とりあえずオレがギターで弾き語りして、楓はタンバリンを叩きながら歌って踊るで良いかなって』

 

 「それアイドルと言うよりフォーク・デュオって感じだな」

 『でも楓なら少しテンポ遅れで踊ってても十分かわいいだろ』

 

 「それは間違いないけど」

 『さてと、そろそろすずすけの家に行くよ、霞は練習頑張れよ』

 

 「あぁ、じゃあな凜」

 『……うん霞また』

 

 通話を終わらせ、カラオケのコントローラーで再び知っているメジャーアイドル曲をセレクトする。

 

 実際アイドル活動の際、歌うのはカラオケにないオリジナル曲になる。


 俺の場合、まずマイクで歌うことに慣れてないし、理想のアイドル像もでき上がっていない。まだまだ不足していることだらけだ。

 

 前園は自主練を始めた言っていたが、楓はどうしているのだろう?

 最近あまり話ができていない。


 もし空いているなら今ここに呼んで話を聞いたり、一緒に歌の練習をするのもいいかもしれない。

 

 そう思い楓に電話をすることにした。

 電話はすぐに繋がり、楓がカラ味噌に来ることとなった。

 

 親友とカラオケで歌う。

 やましい気持ちはもちろん、特別な意味は何もなかった。

 

 だが今の緒方霞は期間限定とは言え、前園凜の彼氏役だったりする。

 そして望月楓は、俺の親友であると同時に学園の誰もが認める美少女だ。


 そんな楓とふたりきりでカラオケ。

 はたから見れば、お忍びデートに見えなくもない。

 

 こうした幾つかの配慮のなさと偶然が重なり、後で大事件に繋がることとなる。

 

 だがこの時の俺は、なめこ汁を心の底から堪能しており気づいていない。


 「はぁあ~お味噌汁が沁みるぅ」


 奇しくも隣の部屋からは俺の命運を想起させるような往年のデスメタルが響いていた。


 地獄のフルコースへご招待と……

お越しいただき誠にありがとうございます。


お時間がございましたら「ブックマーク」「いいね」「評価」「誤字修正」「感想」「ご意見」など頂けましたら幸いです。


美味しいお味噌汁飲み放題のカラオケ……あったら嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
なつの夕凪の作品
新着更新順
ポイントが高い順
☆バナー作成 コロン様★
― 新着の感想 ―
 カスミは真面目ですね。というか、アイドル勝負は勝ってしまっていいのでしょうか……?  カスミはいまひとつ渦中の人物だという自覚がないのですね。未だに自分のことをモブだと思っているからか、踏み込めな…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ