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優しいだけの嘘つきは今日もラブコメを演じる ~幼馴染、義妹、婚約者、金髪碧眼、親友に迫られてます! 俺? ごくごく普通の陰キャモブですが……  作者: なつの夕凪
~第一章 天使同盟編~

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第172羽♡ カレとカノジョの行方

 

 ――7月21日土曜日の夜。

 晩御飯を食べてしばらく経った頃、前園から電話が掛かってきた。


 『すごく疲れた』

 「どうした前園?」

 

 『行く前からさくらの家はきっと大きいだろうなとは思っていたよ。でもさ、あれは家と言うより、テーマパークだな』


 「それ、すごくわかる。庭も広過ぎて適当に歩くと迷子になるし」

 

 『部屋を見せてもらったんだけど、三ツ星ホテルのスウィートルームより凄いかも』


 「確かに……」

 

 『しかもさくらはオレが下宿する場合を想定したプレゼン資料まで用意してたよ。衣食住完備だけでなく、プール、テニスコート、道場なんかの敷地内設備は使い放題、一押しはホームセキュリティーで、ねずみ一匹の侵入も許さないって』


 「まぐれで侵入できても、赤城家の人達は武道の達人だからな、一方的に退治されるかもな」

 

 『さくらの家はちょっと豪華すぎる。六畳くらいのスペースを貰えれば十分なんだけど』


 どんな豪華設備を見せられても前園は謙虚さを失わないようだ。

 単にあの豪邸が怖いだけかもしれないけど。


 「ノーラさんはどうだった?」

 

 『オレと同じく終始驚いてたよ。下宿代1カ月300万円くらいですか? って聞いてた。タダで構わないけど、それでは気が引けると思うから月額2万円くらいでどうですか? ってさくらママが』

 

 「……赤城家の提示条件が破格過ぎないか?」

 

 『だろ? ネットで民間経営の寮費を見たけど、もっと高かったよ。さくらママはお金は気にしなくて良いから、さくらの良い競争相手になって欲しいって』

  

 なるほどな……。

 赤城さくらのライバルとして前園凛ほどの適任者はまずいない。


 期末テストで学年一位になった学力だけでなく、スポーツ、音楽、絵画など多数の特技がある。そばにいるだけで負けず嫌いなお嬢様の刺激になるだろう。


 今回、前園を赤城家に下宿できないかお願いしたのは俺だけど、それとは別に前園を欲しがっているように感じる。


 辻褄つじつまを合わせるために、そう見せているだけかもしれなけど。

   

 「しかもこの件とは別に赤城グループが今後、母さんと仕事をしたいって、そっちの条件もかなり良くってさ、母さんもすっかりその気になっていた」

 

 さくらと母親の月砂つかささんのどちらが主導したかはわからない。

 だが赤城家ペースで話を進めたように感じる。

 

 「じゃあ、下宿先はもう赤城家で決まりかな?」

 『いや……すずすけから聞いているだろ? 今のところ宮姫家と緒方家も要検討対象だよ』

 

 「ノーラさんは、何て言ってるんだ?」


 『日本に残るなら赤城家が良いんじゃないかって、一週間猶予をあげるからよく考えなさいって』

 

 ノーラさんは自分の意見を無理に押し付けるわけではなく、ちゃんと娘の意見を尊重しようとしているようだ。尤もどんなに日本に残る条件が良くても、パリに連れて行きたいのが本音だろうけど。

 

 「……緒方家ウチはもう候補から外して良いからな」

 『え~何でだよ!?』

 

 「狭いし、宮姫の家ほど学校に近くもないし、さくらの家ほど豪華でもない。何より同級生男子がいるのはマズいだろ」


 『そうか? 面白そうじゃん、クラスメイトと同棲生活してますって』

 「学園の連中にバレたら、シャレにならない」


 『その時はその時だよ。緒方の家ならご飯は美味しいし、妹ちゃんはかわいいしで、かなりの優良物件だと思うけど』

 

 「いや、訳あり物件の間違えだ」

 『どうしてそんなに嫌がるんだよ? やっぱオレと暮すのは嫌か?』

 

 「そんなことはない、前園がそばにいてくれたら嬉しいと思う」

 『そ、そか、そうなんだ……』

 

 「…………」

 『…………』

 

 ――しまった。

 柄にないことを言ってしまった。

 

 キモい(アンド)(はじ)ぃ――!

 

 余りの恥ずかしさに俺だけじゃなく前園もフリーズしてしまった。

 電話中の沈黙ほど、気まずいことはない。

 

 何か言わないといけない。

 でも上手い言葉が浮かばない。

 

 『なぁ緒方、一つ提案と言うかお願いがあるんだけど』

 「ん?」

  

 『すずすけにもお願いするけど、下宿したらどんな感じなのかを雰囲気を知っておきたくて、一晩泊まらせてくれないか?』

 

 「それは構わないけど」

 『ありがとう、妹ちゃんにも確認しておいてくれよ』

 

 「わかった聞いてみる。恐らく試合前日とかじゃなければ大丈夫だと思う」

 『無理そうならいいから』

 

 電話終了後リナに確認し、前園のお試しお泊り会は数日後に実施することになった。宮姫家のお泊り会も。


 何故か赤城家へのお泊り会だけが話に出てこなかった。 

  

 「話は変わるけど例のアイドル活動の件、大丈夫か?」

 

 『おぉアレな、今バタバタしているから何もできてないけど、片付いたら練習を始めるよ。オレはともかく楓がなぁ……』

 

 「やりたくないと言ってるのか?」

 『目立つの好きじゃないだろ、だから渋ってる。しかも対決相手が他ならぬ緒方だし』

 

 前園がガチで来たら勝てるイメージが湧かない。

 俺は毎日練習しているけど、下手で未だに基礎連をやっているくらいだ。

 

 『と言う訳だからお手柔らかに頼むよ()()()()

 「こちらこそ手心を加えてくれると助かるんだけど」


 『それは無理だな……葵ちゃんだっけ? 負けたらカスミンが奪われちゃうし』

 

 ……そう言えばそんな話だったな。

 前園に追いかけられ、葵ちゃんにも追いかけられる。


 どうやら女形おがたカスミンは罪深い男の娘のようだ。

お越しいただき誠にありがとうございます。


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 なんとか平常運転に……と思いきや。  本音かもしれませんが。誤解を招く言い方ですよね。  罪深いのはカスミも同じく、ですね。  自覚がない分罪も割り増しです。  凛がお泊まり。  何事もなく済むは…
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