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優しいだけの嘘つきは今日もラブコメを演じる ~幼馴染、義妹、婚約者、金髪碧眼、親友に迫られてます! 俺? ごくごく普通の陰キャモブですが……  作者: なつの夕凪
~第一章 天使同盟編~

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番外編第2羽♡ 緒方霞縞パン裁判 その3


 ※本編と違い三人称視点となっています。


  時系列としては 第121羽から数時間後のお話となります。


 時はさかのぼること前日7月13日金曜日。

 

 部活を終え帰宅した高山莉菜はお菓子をむさぼりつつ、兄の部屋のベッドで漫画を読んでいた。

 

 部屋の持ち主である霞からは好きな時に部屋を使って良いと言われている。

 

 この部屋はきちんと整頓されているし、エアコン完備の上、本棚にある漫画は質も量ともに充実しており大変過ごしやすい。

 

 何よりこの部屋には大好きな兄ちゃんの匂いがする。

 

 (ふ~幸せ~でも兄ちゃん早く帰ってきて……)

 

 漫画を読むのを止めベッドの上でゴロゴロしながら天井を見上げる。

 

 そう言えば、この前女子サッカー部の部室で男は都合の悪いものを大抵ベッドの下に隠すと言う話を聞いた。


 大抵はムフフな本や円盤のような都合の悪いものが多いようだが霞はどうだろうか。

 

 ベッドから下にある隙間を覗いてると、さも怪しげな段ボール箱が一つ置かれていた。

 

 (む……これはひょっとして)

 

 ベッド下から箱を取り出してみると上蓋は固定されていない。

 開けてみると怪しいものはなく、使い終わった中学の教科書などが入っていた。


 だがそれらは一番下にある秘宝を隠すためのカモフラージュにすぎなかった。

 


 奥底に眠っていたのは

 かわいらしいエメラルド色の縞パンだった。


 

 だがこの縞パンは、彼の大好きな深夜アニメ『転生したら魚肉ソーセージでした。でもでも私は幸せです!あべしっ!』こと通称『転ギョニ』の円盤シークレット特典として付いてきたものだった。

 

 開封するまで購入者は、シークレット特典が縞パンだとわからないのでどうしようもない。

 

 男子にはどう考えても無用の長物ではあるが、転ギョニの熱狂的なファンであるカスミは例え縞パンだろうとグッズをぞんざいには扱えない。

 

 秋葉原や中野などにはこうしたグッズを売買する専門ショップがあり、売ってしまうのもアリだが、如何いかんせん縞パンを高校生男子が売りに行くのはハードルが高過ぎる。

 

 こうしてエメラルド縞パンをどうするか結論を出せないまま霞はベッド下に放置していた。

 

 そして霞不在の7月13日夕方に莉菜が発見してしまう。

 

 不運はまだまだ続く。


 莉菜が縞パン発見直後、程なくして来客を告げるインターフォンが鳴ったため、霞の部屋を出て行った莉菜はベッドに縞パンを放置してしまい、しかも元に戻したと思い込んでいた。

 

 翌日、掃除機をかけるため霞の部屋に入った楓に縞パンはあっさり発見されてしまい、ドスケベ品所持疑惑の霞は弾劾裁判にかけられることになった。

 

 なお莉菜はただの縞パンがファングッズだったことを、楓が縞パンを発見する数時間前に霞本人から聞いているので嫌疑は晴れている。

 

 また裁判に参加していないさくらも事情は知っている。


 さくらと莉菜のふたりが、すぐに否定すればこんな面倒なことにはならなかったはず。

 

 それ以前に莉菜が縞パンを見つけなければ、楓が部屋掃除した際も縞パンは見つかることはなかっただろう。

 

 楓に縞パンが見つかったとしても「ただのファングッズだよ!」とリナが説明すればお終いだった。

 

 だが霞の部屋で正座したまま笑顔のまま怒りに震え、コールタールよりどす黒いオーラが溢れだす楓に真実を告げることはできなかった。

 

 幾つかの不幸な偶然と莉菜のやらかしと、気真面目過ぎる楓の思い込みがミックスされ事態は最悪の方向に進んだのだ。

 

◆ ◇ ◆ ◇ 


 ――再び7月14日土曜日、緒方霞弾劾裁判

  

 「で……どうする? 結局のところ緒方は有罪or無罪?」


 取り留めのない審議が続く中、前園凜がまとめに入る。

 

 「もちろん有罪。緒方君は少し厳しくしないとためにならない。普段から皆を見る目がその……エッチな時があるし」

 

 幼馴染の宮姫すずは変わらず霞に手厳しい。

 

 「わたしもちょっと嫌だから有罪かな」

 

 ちょっとどころか「もの凄く嫌です!」と顔に書いてある望月楓も当然のように有罪判定となった。

 

 「オレはさっき言った通り、緒方も男だから仕方ないと思うので無罪」

 

 ドスケベは許さない派のすずと楓は有罪。

 細かい事はこだわらない凜は無罪。


 これで2対1となった。

 

 「妹ちゃんはどっち?」


 莉菜が無罪を主張すれば2対2のタイに持ち込めば、まだ兄を救う手立てが残っているかもしれない。


 だがしかし隣に座る楓はダンジョン最深部のボスキャラよりも怖い。

 どうしても尻込みしてしまう。

  

 (頑張れ! 負けるなわたし……!)


 恐怖に怯えながらも愛する兄を守るために莉菜は自らを奮い立たせる。

  

 「わたしは……」

 

 「わたしは無罪で! パンツを持ってたのは何か深い事情があったんだと思う。どんな時もわたしは兄ちゃんを信じる!」

 

 莉菜は真っすぐ見据え、自分の想いを絶叫する。

 

 凛、楓、すずの三人は莉菜の迫力にただただ圧倒される。

 

 「わたしは信じる……か。妹ちゃん健気だねぇ。なぁオレ達、緒方のことちょっと疑い過ぎじゃね?」


 「う、うん。そうかも……カスミの意見も聞かないで頭ごなしに悪いって判断してた。良くないよね」

 

 「え? お凛ちゃんも楓ちゃんもそれでいいの!? はぁ……わかったよ」

 

 莉菜の想いが奇跡的に届き、凜だけでなく楓、すずも考えを改め始めた。

 

 (兄ちゃんわたし頑張ったよ……)

 

 妹の土壇場の頑張りで緒方霞は窮地を救われた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……ように見えた。


 がしかし!


 

 

 「だーめ! 有罪よ有罪!! 淑女の下着を隠し持つなんて紳士の所業じゃないわ。万死に値する!」

 

 

 今頃になってグループビデオ通話に参加してきた赤城さくらが開口一番、有罪と断罪した。

 

 「え? さくら何を言って!?」

  

 「……やっぱそうだよね。さくらちゃん!」

 

 「わたしもさくらちゃんの意見に賛成!」

 

 事態の急変を飲み込めない莉菜を残し、考えを改めようとしていたすずや楓が再び有罪判定に変わる。

 

 「緒方残念だったな……というわけで、有罪3票、無罪2票で、緒方霞は有罪、処分は追って本人に通達で」

 

 莉菜の頑張りも空しく万事休す。


 「なっ……!?」

 

 あり得ないと言う顔のまま莉菜は絶句し、口をパクパクさせる。

 

 さくらは霞の部屋にあった縞パンがただのファングッズだったことも含め、全てを知っている。その上で霞を奈落の底に突き落とした。

 

 画面の向こうには、涼しい笑顔をさくらが浮かべている。


 その顔から一切の悪意を感じない。

 

 (ヤバい……さくらマジくそヤバい……)

 

 莉菜はさくらに楓以上の恐怖を感じた。 



 ちなみにさくらが有罪とした理由はそっちの方が面白いから、ただそれだけである。

 

 こうして前代未聞の緒方霞縞パン裁判は本人不在のまま、幕を閉じた。

お越しいただき誠にありがとうございます。


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