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優しいだけの嘘つきは今日もラブコメを演じる ~幼馴染、義妹、婚約者、金髪碧眼、親友に迫られてます! 俺? ごくごく普通の陰キャモブですが……  作者: なつの夕凪
~第一章 天使同盟編~

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番外編第2羽♡ 緒方霞縞パン裁判 その1

 ※本編と違い三人称視点となっています。

  時系列としては 第121羽から数時間後のお話となります。


 (あぁ……なぜこんなことになってしまったのだろう)

 

 7月14日蒸し暑い土曜日、部活帰りの高山莉菜たかやまりなは困惑していた。


 彼女の兄、実際には親戚にあたる緒方霞おがたかすみは不在のまま、弾劾裁判に掛けられことになったのだから。

 

 裁判の審議は、莉菜を含む四人の魔女……ではなく女子高生たちで進められている。

 

 いずれも緒方霞とは友達以上恋人未満の親しい関係で、彼のことを憎からず思っている。

 

 中には素直に慣れず、彼の前ではヤンデレともツンデレとも言える微妙な反応を見せる少女もいる。だが15歳から16歳というデリケートな年頃であることから致し方ないのかもしれない。

 

 さて

 少女達に何故かモテる霞にかかる今回の嫌疑は……

 

 「皆、忙しいところごめんね。実はさっきカスミの部屋を掃除してたら、これが出てきたの」


 4人は今、SNSアプリRIME(ライム)のグループビデオ通話を使って会話している。莉菜と楓は緒方家のリビングルームにいるが、宮姫すずは自宅の自室から、前園凛は現在パリに滞在しており、海外からビデオ通話に参加している。


 なお緒方霞とは関係の深い同級生女子はもう1人いる。

 彼女にも当然連絡をしたが繋がらず、通常時の5人ではなく4人で緒方霞の弾劾を行うこととなった。


 「パンツだな……女ものの」

 「うん。そうなの……パ、パンツなの凛ちゃん!」

 

 透明なビニール袋に梱包された未開封の女性用下着はエメラルド色のストライブ模様でかわいらしい。


 縞パンを見た前園凛まえぞのりんは画面越しに怪訝な顔をする。

 

 「これが緒方君の部屋から」

 「うん」

 

 「緒方スケベだな」

 「緒方君のバカバカ! ド変態! 賞味期限切れのところてん!!」

 

 賞味期限切れのところてんの意味がよくわからないが、凜のスケベ発言の次に宮姫みやひめすずは霞を非難した。


 どうやらかなり不快に感じてるようだ。

 彼女は霞の幼馴染であり、二歳の頃から付き合いである。基本は誰にでも親切で人当たりのすずだが、霞にはなぜか厳しく塩対応がデフォルト(標準)となる。

 

 容姿はグレーとベージュの中間のような髪色にショートミディアムヘア、丸みのある大きな瞳は琥珀色と涙袋、すっきりした鼻立ちと小さな唇からなるその美貌は、同学年女子から一目を置かれる美少女であり、中学時代は同学年男子に最も告白された彼女だが、ことごとく振り少年たちを奈落の底に突き落とした。

 

 なお、霞とすずは小学校から中学まで9年間は別々となったので、ふたりが再会したのは現在在学する白花学園高等部へ入学後となる。 

 

 「そりゃ楓、ビックリしただろうけど、たかがパンツだろ」

 「凛ちゃんたかがじゃないよ。女の子のだよ!」

 

 「妹ちゃんのが何かの拍子で紛れこんだとか」

 「凛ちゃんこの縞パンだけど、わたしのじゃないよ」

 

 「へ~じゃあ誰のパンツだろう。確かに気になるな」

 

 前園凜はいたずら好きの少年のようにニヤリと笑う。


 薄いミディアムショートの金髪は日に照らされると銀色に輝き、雪のように白い肌と空のような薄い蒼の瞳が形作るその容姿は絵本のお姫様やエルフのような現実離れした雰囲気をしている。


 黙っていれば北欧系ハーフの完璧美少女だが、誰に対しても気さくに接するため近寄り難いことはない。彼女たちの通う白花学園高等部では男女問わず絶大な人気が誇る。


 霞のクラスメイトで、知り合ってまだ数か月の付き合いだが、その圧倒的なコミュニケーション能力で霞との距離をぐいぐい縮めており、他四人をヤキモキさせている。

 

 「わたしのでもないから」

 「わたしも違う……」

 

 すずと楓も縞パンが自身の下着であることを否定した。

 

 「もちろんオレも違うよ、となると……さくらか」

 

 凜がふいに5人目の名前を出す。

 

 赤城あかぎさくらはレッドブラウンの髪、切れ長の赤と黒の中間色の様な瞳と長い睫毛、スラリとしたモデル体型美少女で、超が付く大金持ちのご令嬢だ。

 

 霞の親とさくらの両親が旧知の関係であり、霞とさくらは小学生の夏休みに、毎年一週間程度一緒に過ごした。

 

 中学へ進級以降の数年間会っていなかった時期があり、再会したのは一年ほど前だが、ふたりの息はぴったりであり、いつも漫才の様な掛け合いをする。

 

 だが普段のさくらはおしとやかであり、霞とふたりで歩く時は必ず一歩後ろを歩き、彼の言うことを黙って聞いていることが常である。 

 

 その姿は慎ましく、現代においてはやや古風な女性に映るかもしれない。

 

 なお霞とさくらは親同士の言いつけで10歳の頃に婚約している。

 その事を知っているのはすずだけである。家族である莉菜を含め、楓や凜は知らない。

 

 「うーん。でもさくらの下着っぽくもないような」

 「そうだよね。イメージが違う」

 

 リナが疑問を呈すると、すぐに凜が同意する。

 大人びた雰囲気のあるさくらに縞パンはマッチしない。

  

 「じゃあ妹ちゃんの誕生日プレゼント用に買って持ってたとか」

 「凛ちゃん、わたしの誕生日はまだ半年も先だよ」

 

 「事前に用意するにはちょっと早いかな。それに妹の誕生日プレゼントに下着を渡すというのも変かも」


 「妹としてではなく()()()()にプレゼントをするのなら意外じゃないかもな」

 

 すずの疑問に対し、凜が()()()()というパワーワードを使い、より刺激的な可能性を提示したことで一同の様子が一変する。


 「わたしが兄ちゃんのカノジョ……」


 莉菜の瞳はらんらんと輝いている。

 一方、楓とすずは一気に警戒レベルを上げる。

  

 「ちょっと凛ちゃん、変なこと言わないでよ。そもそもリナちゃんとカスミは兄妹なんだし、ね!?」

 

 特に楓は動揺を隠せない。

 安心したいがために、落ち着かないまま隣に座るリナに同意を求める。


 だがこれは完全に悪手となる。

 

 「()()()()()()。でも兄ちゃんが今より近い関係になりたいというなら、わたしが断る理由はないよ」

 

 「え!?」

 

 莉菜から強烈なカウンターパンチをもらい楓は言葉を失う。

 楓とリナは普段は友人関係で、休日には一緒に買い物に行くこともある。


 莉菜は普段から兄への好意を隠さない。

 楓は霞に尽くしているものの言葉でははっきりと伝えていない。

 

 莉菜も楓も互いに譲れないものがある。

 それ故に過去に火花を散らしたことも。

 

 そしてわかっている。


 下手に遠慮をすれば大事なものを失うことを。

 だから莉菜は決して手を抜かない。

 

 楓も同様だが、どこか割り切れていないところがある。

   

 「まぁオレの見立てだと、現段階でオレ達の中で緒方のカノジョに一番近いのは楓だと思うけど」

 

 莉菜が突っ走り気味なのを見て、凜がけん制する。

 

 「「う……」」

 

 今度はすずと莉菜が同時に苦虫を嚙み潰したような顔をする。

 楓が一歩リードとは言うことは、楓の他全員の共通認識となっている。 


 すずは霞と幼馴染と言っても保育園までで、小学校以降の10年近くの間、ふたりは離れ離れになった。


 莉菜も小学校6年間は霞と一緒に暮らしていたが、中学三年間は別々に暮らしていた。

 

 一方、楓は年齢的に異性を意識する霞の中学三年間をほぼ独り占めにした。そして高校は霞とふたりで同じ学校に行くことを決めた。このアドバンテージ(優位性)はあまりにもデカい。 

  

 霞と楓がまだ付き合っていないのは、結局のところタイミングが合わなかっただけ。

 

 また楓は霞に勉強を教えてたり家事を手伝ったりと、カノジョでなくてもカノジョと同等以上のことをやっている。

 

 高校入学後の一カ月で、莉菜、さくら、前園、そしてすずが介入しなければ、ふたりはとっくに付き合っていたかもしれない。

 

 「そんなことないよ、わたしとカスミは親友だし……」

 

 楓の言う通り、緒方霞と望月楓は間違いなく親友となる。

 

 だがそれ以前に男女であり、ふたりの関係が好意を伴う特別なものとするなら、楓の言う()()という在り様は、足枷でしかなく結果として霞を巡るレースは先頭にいる楓が独走できないため、今の様な膠着状態に陥る。

 

 だが楓と霞の中が進展しないからこそ、霞を取り巻く少女たちは喧嘩する理由がなくなり、友人のままでいられる。

 

 そして今回のように霞に関する事案が発生すれば、一致団結して愚か者(かすみ)に正義の鉄槌を与えることができるのだ。

 

 ただし緒方霞縞パン疑惑は完全に無罪である。


 この場で唯一真相を知る莉菜は弾劾裁判に参加する他3人に真実を語れないままでいた。

 なぜ語れないのかというと隣にいる楓が怖いから、その一点に尽きる。

お越しいただき誠にありがとうございます。


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