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ロングハースト夫妻

「彼? おじ様、いったいだれなのですか?」


 彼がだれなのか、念のため尋ねてみた。


「バートだ。自分では、そう名乗っている。下品なレディを連れ、『おれが領主だ。戻ってきてやったぞ』とわめいて居座っている。どうやら、悪党の馬車を雇ったんだろう。散々連れまわされた挙句、有り金全部巻き上げられたらしい。とりあえず人の目に触れぬようわが家の食堂に閉じ込め、食い物を与えている」

「あぁバート、ですね」


 やはり、彼なのね。


 だけど、ちょっと待って。


 この辺りは街道に沿っているとはいえ、王都とはまったく反対に位置する。


 どこをどう連れまわされたら、この辺りに出没出来るのかしら。


 不可思議どころの騒ぎではない。


「彼には、彼がまだ幼い頃一度会ったきりだ。そのすぐあと、彼は王都に行ってそのまま一度も戻ってこなかった。ポールとダイアンからいろいろきいてはいたが……。あれは、酷いな」


 ポールとは、義父。ダイアンとは、義母である。


「あなた。『あれ』だなんて。しかも、酷いですって?」


 ローラは、呆れ返っている。


「それでは、まだまだ表現が足りていませんわ」


 彼女が呆れ返っているのは、苦言を呈したジョニーに対してではなかった。


 バートに対してだった。


 バートがここにいるときいた瞬間、高揚していた気分がいっきに下降した。


 まさかこのようなところでお目にかかることになるとは。


 予期せぬ遭遇だわ。


 しかし、ここにいるのなら仕方がない。


 覚悟を決めた。


 どうせ会うことは避けられない。


 それがほんのすこしはやくなっただけのこと。


 気持ちを落ち着けると、戦闘モードに、もとい友好かつ平和なモードに切り替える努力をした。




 ジョニーとローラの屋敷までの道中、ジョニーはさらなる情報を与えてくれた。


 バートと彼の愛するレディは、王都で街馬車を雇ったのだとか。が、その街馬車は悪党だった。悪党たちは、彼らをあちこち連れまわしつつ有り金をすべて使わせ、巻き上げ、挙句の果てに本来の目的地とは正反対の山の中で放り出したらしい。


 バートたちは、途方に暮れた。


 なんとか山を降り、近くの村に行って村の人に「領主だ。屋敷まで連れていけ」と命じたという。村の人は仕方なく、ジョニーのところに連れてきたのだとか。


 村の人にしてみれば、領主を騙る愚か者か、もともと愚か者なのかのどちらかに見えたに違いない。


 というよりか、よくもまぁ悪党たちに殺されなかったものよね。


 本来なら、金貨を全部巻き上げた時点で縁が切れてしまう。


 山や森の中で殺されるはずだったのに。


 それはともかく、とりあえずは生きてここまでたどりつけたのは運が良かったからでしょう。


 とはいえ、それもここまでのことだけど。



 そうこうしている間にジョニーとローラの屋敷に到着した。


「アミ様、いらっしゃいませ」

「アミ様、こんにちは」


 ロングハースト家のみんなが総出で出迎えてくれた。


 二人には息子が二人と娘が一人いて、いずれもすでに結婚している。


 上の息子は頭がかなりよく、学問大好きである。亡き義父母が後見人になり、子どもの頃から王都の学校の寄宿舎に入って勉強に明け暮れたらしい。それだけでなく周辺の国々に留学し、いまは外交官として王都で大活躍している。


 夫妻の跡を継ぐのは下の息子で、夫婦ともにとてもいい人たちである。


 娘は近くの町のパン屋の息子に嫁ぎ、子どもたちにも恵まれてしあわせを満喫している。


 下の息子夫妻、娘夫妻ともども家族ぐるみで仲良くしてもらっている。


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