テレビにて
⑧
「地元では、とても美味しい手作り料理を作ってくれると評判になっています。それに、おかみさんが、凄く美人だとのことです!」
レポーターが視聴者の興味を惹こうとテンションを上げて話している。
「こちらがおかみさんです」
カメラが入れ替わった。
百合だ。カメラを通して顔がアップで映っている。
テレビ越しに見る百合は、変わらず美しかった。
「おかみさん、女優か何かされてましたか?料理以上に、おかみさん目当てでのお客さんも多いでしょうね」
レポーターは、大袈裟な仕草で続けた。
達也もレポーターの言う通りだとうなづいた。
「こんにちは、今日は取材にお越しいただきありがとうございます」
丁寧にお辞儀をして百合は応えた。
その後、店内からのレポートになり、料理の紹介、レポーターが料理を食べながら褒めるよくあるシーンが続いた。
「おかみさん、最後、何かひとことありますか?あと数秒ですが」
レポーターは百合に、せかしぎみにマイクを向けた。
「このお店をこの街で開店してとても良かったことがあります。それは私のこれからの人生に大きな影響があるかもしれません。それは‥」
急にスタジオに映像が変わった。
「すみません、時間が押しちゃいました、CMに入りまーす」
MCがおどけて言い、CMになった。CM明けは、他のコーナーになった。
達也は、百合が何を言おうとしたのか、それを思うといても立ってもいられなかった。