驚き
⑦
明子から、メールがきた。
『うまく出来たよ、期待値のハードル上げてね』
娘からのメールに思わずにやけてしまう。素直に嬉しい。
これは世の中の娘を持つ父の共通する感情だろう。
家の玄関を開けると、麻美と明子が二人並んでいた。
「誕生日、おめでとう!」
麻美と明子が楽しそうに声を揃えた。
作ってくれたクッキーとコーヒーを妻と娘と三人で一緒に食べた。
コーヒーは達也がいれた。
「うん、クッキーもコーヒーもビューティフル」
麻美は満足した様子だった。
「うん、クッキーもコーヒーもビューティフル」
明子も続けて言った。
「あ、それ、私が先に言ったよ」
麻美が笑い声を立て、つられて三人で大笑いした。
達也は、この家族で穏やかに過ごせていることに、心が温まった。
その後、麻美と明子と二人で買い物に出かけた。
達也はひとりになり、テレビをつけた。
特に見たいものがないが、何気なくつけた。
テレビでは、情報番組をやっていた。
グルメレポーターが、いろいろな街に行き、食レポをしていた。
よくある情報番組のグルメコーナーだ。
達也は以前、情報番組が放送したレストランに次の日に行ったら、長蛇の列であったことを思い出した。
『次は、こちらの街のこちらのお店です!』
レポーターが意気揚々に言っている。
あれ、この街見たことがある。
あ、ここは、単身赴任先の街だ。
達也はテレビに近づいた。
『おかみさんが手作りで毎日提供しているのが、売りのお店です』
レポーターは続けた。
『美人おかみがやっている評判のお店です。最近オープンしたそうです!』
達也は、もしかしてと、心臓がドキドキした。
そして、テレビは店の外観を映した。
百合の店だ!