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いつかの日  作者: T2
6/22

我が家で

 朝、起きたら、妻の麻美と高校生の娘の明子が、二人でキッチンで話していた。


「明子が今日はお父さんにクッキーを作ってくれるそうよ」

 麻美は、にこやかだった。


 今日は自分の誕生日だったことに達也はすっかり忘れていた。

「あ、そうだった、今日で四十一か」

「お父さんも立派なおじさんだね」

 娘が笑いながらボールに卵を割り入れた。


 娘は、反抗期らしいことは今までなく、穏やかな性格に育っている。

「楽しみだな、明子が作ってくれるのは」

 達也は本当に嬉しい気持ちになった。このような娘に育ててくれたのは、妻のおかげだろう。


「出来たら、教えるから見てないでね」

「分かった、出来たらメールしてくれ、駅前の喫茶店に行ってくるよ」


 達也は、喫茶店に向かった。今日は晴れていて、清々しい。


 駅前の喫茶店は達也はよく通っている。外を歩く人がよく見える席がお気に入りだ。歩く人を見て、その人の生活などを想像するのが楽しい。


 喫茶店では、いつもの席が空いていた。

 アメリカンコーヒーを飲みながら、歩いている人を見ていた。

 今日は天気が良く、たくさんの人がいた。


 ひと通り見ていると、若いカップルがいた。


 女性が泣きそうな顔をしていて、男性は悲しい顔をしている。これは、別れ話をしているのだろう。


 悲しい顔をしていた男性が、徐々に怒りの顔になってきた。女性が他に好きな人が出来たことを男性に伝えたのか。


 男性は責めるような仕草を女性に向けている。

 女性はしくしくと泣き始めた。

 男性はそれを見て、さらに責め立て、去って行った。


 女性は男性が見えなくなったら、ハンカチで丁寧に涙を拭き、笑みを浮かべながら、踵を返した。


 丁寧に拭いたのは、これから新しい男に会うためメークが落ちないように気をつけたのだろう。


 達也は、この状況を面白く見ていたが、すぐに気づいた。女性の演技力と怖さに。


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