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耽美奇譚

月を見た。本能の歯車が狂う音がした。

作者: 秋暁秋季

注意事項1

起承転結はありません。

短編詐欺に思われたら申し訳御座いません。


注意事項2

完全無欠を嫌う、気狂いの話。


月を見た。本能の歯車が、ガチっと狂う音がした。

家に着いて、私は数ヶ月掛けて作り上げて来た彫刻を手に取った。モデルとなっているのは、チェスの歩兵(ポーン)。他でも良かったけれど、台に乗った球体が気に入って、これにした。今宵、浮かぶ満月の様な形状。見ているだけ舐め上げたくなる程。

興奮を落ち着ける為に深呼吸を一つ。あと少し、あと少しで完成する。そう、ずっと前から計画を立て、満月の日に完成する様に逆算して形を整えた。後は鑢を掛けて、艶を出せば出来る。私の月はあと少し、あと少し。

部屋に並ぶ彫刻を眺めながら、歩兵を延々と手で弄ぶ。部屋にあるのは女、天使、ライオン。どれも白亜の光沢を放ち、悠然とその場に居座っている。一目見て気に入って、迷わず購入したお気に入り達。完成された生き物達。それを見ていると、良からぬ渇望が胸の中をせめぎ合う。いいえ、いいえ、耐えた方が気持ち良い。我慢した方が満たされる。

だからベランダへ。ぽっかり空いた穴のような形状の月。淡い黄色が高貴な色彩を放つ。それを眼中に入れると、遂に我慢出来なくなった。部屋に戻る。彫刻に使用する金槌を持つ。それから……。

「ふふふ……。ははは……」

思い切り振り上げて、女の顏目掛けて振り下ろした。案の定、陶器の肌が抉られ、砕け、傷を負う。今までの完成された存在はそこにはなく、今あるのは殴られた半顔のみ。その様に堪らない興奮を覚えた。

あんなに綺麗だったのに、今はこんなにも不細工。欠陥品。馬鹿みたい。もっともっと駄目にしてあげる。そして興奮のままにもう一度。今度は肩口に当たった。飛び散った破片が部屋の片隅まで飛んで行く。あぁ、あぁ、あぁ、堪らない!! 床に倒れ込む女を上から踏み付けて、粉々に砕き落としていく。

「貴方、今の方がずぅっと綺麗よ? 壊される瞬間の儚さが、御すまし顔が砕ける瞬間が、一番憐れで愛おしい!!」

やっぱり大嫌い。完全無欠なんて。多少壊れていた方が、ずっと愛おしい。

部屋の端では、不完全な歩兵が此方を眺めていた。

作者は何時だって頭おかしいですよ。


満月を長い間見ていると、気狂いになります。

自分が自分じゃ無くなる感じ。

ルナティックとはよく言ったもので。


どうにも完成されたものを見ると、壊したくなる衝動に駆られるもので。

とある小説のお言葉。『金剛石を見ると、砕きたくなる』。

正にあれです。

完膚無きまで壊して戴きました。

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