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ワガハイは猫である

作者: Aju

 名前はある。

 ハナという。

 ここに来たのはずいぶん小さな頃だ。

 だいたい日がな1日、その辺をうろつき回ったり寝てたりするかだけで、大して重要な仕事はない。

 窓際族、とかいうのに似ているのかもしれないが、元はバリバリ働いていたのに要らなくなったからここに追いやられたというわけではない。

 元々、これが「仕事」なのだ。うろついてるか、ボールにでもじゃれるか、寝そべって腹でも見せてるか・・・。あとは寝ているか欠伸でもしていればいいのだ。気楽な仕事だ。

 我輩は必要とされているのである。


 我輩に日々の食事メシを運んでくる人間の仕事は大変そうだ。

 その人間はアヤノというメスだ。

 アヤノは我輩に食事メシを呉れるだけではなく、なにくれとなく世話をする。

 その姿が甲斐甲斐しいので、我輩は頭を擦り付けるようにして甘えてやる。それをアヤノは喜んでいる。それも、まあ仕事のうちだ。

 飼われている、といえばその通りなのだが、アヤノが我輩の召使いである、とも言える。

 我輩とアヤノは、そういう「仕事」の関係だ。イーブンな「仕事」の関係なのである。ただ、アヤノの仕事は少しばかり大変で、我輩の仕事は少々ラクである、というだけだ。

 我輩の本来の住処はこういう所ではない、などと言う者がいるようだが、それがどうした。

 我輩は小さい頃からここで生きている。此処が、我輩の住処である。


 野生?

 自由?

 誇り?


 それがどうしたね?

 キミたちは若いから、そういう言葉に憧れるのかもしれないが、そんなもので食事メシが食っていけるかな?

 人生はロマンだけでできてはいない。

 我輩と同年輩が、今どうなっているか、見てごらん。とっくに死んでいるか、みすぼらしい毛並みで飢えているだろう。

 我輩は苦労して狩りをする必要もない。食事メシはアヤノが持ってきて呉れるし、アヤノは可愛い。我輩には老後の心配もない。

 我輩はただ欠伸をして、寝たい時に寝て、時々アヤノに甘えて見せてやれば、それでアヤノは満足そうにしているのだ。

 悠々自適とはこのことではないかね?


 人間と付き合うのは疲れないかって?

 なに、アヤノ以外の人間どもは我輩のテリトリーには入って来られない。硝子の向こうに押しやられていて、入って来られないのだ。

 彼らに欠伸でもして見せてやるのが、すなわち我輩の仕事である。

 人間どもは我輩を「ライオン」と呼ぶらしいが、そんなことは知ったことではない。


 我輩はネコである。




先日、動物園に行ってライオンを見ているうちにこのタイトルを思いつきました。

(それは「思いついた」んじゃなくて、パクリだろう!)


年数が経っているので著作権的には問題ないだろう・・・・と思うのですが・・・。


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― 新着の感想 ―
[一言] ラストでびっくり。なるほどですね。もう一回読み返して納得です。 最後にこういう仕掛けがあって、作品世界の見え方が一気に変わる作品がすごく好きなので、おぉ……!となりました(´ω`*) 確かに…
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