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リレイと不思議な道具達  作者: ペテン師Mark
湖畔を越える恋人達
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リレイのこいばな

「えー、だってリレイは行商のジェバンニさんが好きなんでしょう? 彼、年に数回しか村に来ないじゃん!」


 デイジーがジェバンニの名を聞いたリレイがびくんとする。


「ジェバンニさん? それはジェバンニさんには会いたいよ! でも、好きというかそういう感情なのかとか、よくわからない・・・・・・」


 リレイは素直に気持ちを吐き出した。


「ジェバンニさん、いろんな地方のお話を聞かせてくれるんでしょ? リレイ、あの人に会うといつもその話をデイジー達にするよね。その時のリレイが一番幸せそう」

「ジェバンニさん、いつも持っている楽器に合わせて話をしてくれるから面白いんだよ!」


 リレイが嬉しそうにジェバンニの話をする。


「彼、行商をしながら旅芸人としてもやってらしたわね。吟遊詩人というやつかしら。カコポゴと言う弦楽器をいつも持ち歩いていらっしゃるわよね。うちを訪れてもらった時はいつも演奏をお願いしているわ。多彩な話と素敵な歌、そして心躍らせる演奏。たしかにリレイが好きになるのもわかりますわ」


 アシュリーがうんうんと頷く。


「えーっ! 好きとか、そういうのとはたぶん違うもん! たぶん」


 リレイが顔を赤くして否定する。それを見てデイジーがニヤニヤしている。


「ふっふっふ! リレイも隅に置けないなぁ! 時折訪れる外界の風を纏ったお兄さんが好みだなんて! 風とともに訪れ、そして風とともに去っていく。流離いの吟遊詩人のジェバンニさん、素敵よねー!」


 女子達が恋の話で盛り上がる。


「ジェバンニさんにはいつも会いたいけれどね。でも、お仕事がお仕事だし、仕方ないよね」


 リレイがスンっと落ち込んだ。本音ではやはりさびしいのだろう。


「そういう意味でもリレイも長距離恋愛ですわね。そういえば、この村には他にも長距離恋愛をしている方がいらっしゃいましたわね」


 アシュリーがふと思い出したように話を切り出した。


「えっ、誰、誰かしら?」


 デイジーが興味心身に話にくらい付いた。


「ほら、湖畔のほとりのスティンさんですわ。彼、恋人が湖の対岸の集落にいらっしゃるというじゃないですか」

「あー、あの人! へぇ、デイジー知らなかった!」

「スティンさん。恋人に会うまで大湖を迂回していくと、片道二日は掛かるらしいですわよ。湖を横断すれば半日もあればいけそうらしいですが船は持っていないそうですし、小さな村同士なので連絡船も出ていないから不便をしているみたいですわ」


 アシュリーがつらつらと情報を並べる。彼女はどこからそのような情報を得ているのであろうか。


「へー、恋人が遠くの人って皆苦労しているんだねぇ」


 デイジーが相槌を打っている横で、リレイがなにかを閃いたようだ。


「ねぇ、シャルロッテ。さっき水の上を歩く靴の話をしたじゃない? もしかして、あれが役に立つんじゃないのかな?」

「なにかしら。ああ、あれね。たしかにそのスティンさんって方にふさわしいアイテムね」


 リレイがシャルロッテと会話する。


「なになに、二人とも。なんの内緒話?」


 デイジーが二人の話に混ざりたがっていた。


「それがね。おうちの倉庫に、水の上を歩けるブーツがあったの。それがあったらスティンさんは湖を越えて恋人の所までいけるんじゃないかなって」

「なにそれ。まるで御伽噺じゃない! そんな物がこの世にあるわけ!?」


 デイジーはリレイから聞いた話にとても驚いている。


「そうだ。私、スティンさんに水の上を歩ける靴の話をしてみる! もしかしたら喜ぶかもしれないから!」

「彼に靴を譲るのかしら?」


 シャルロッテがリレイに問いかける。


「えぇ、家の中に置いているだけじゃ仕方ないもの! おうちの道具で人を幸せに出来るならそれが一番だわ! そうよ、そうしましょ!」


 リレイは席を立って一目散に自宅へ走って行った。シャルロッテもふわふわ浮かびながら後を追いかける。


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