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リレイと不思議な道具達  作者: ペテン師Mark
湖畔を越える恋人達
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リレイ達のこいばな

 広場においてある年輪が刻まれし切り株のテーブル。そして人の腰下くらいまでの高さのキノコの椅子。そこは村にある数少ないレストラン、木漏れ日の輪亭。山菜パスタや湖の魚料理、ハーブをふんだんに用いた肉料理などを提供する店であり、またキノコ茶を楽しみながらどんぐりクッキーを頬張るお茶会の場でもある。

 リレイ達はデイジーやアシュリーと待ち合わせをし、店の片隅のオープンテラスの席についた。そこは文字通り木々の合間から太陽光が差し込む空間。時折吹き抜けるさわやかな風が心地よい。少女達は度々その店をおしゃべりの場に使っていた。


「ごきげんよう、シャルロッテ。新しい人形服を貰いましたのね?」


 アシュリーがシャルロッテの洋服に気が付く。倉庫から出た時の服とは異なっていたからだ。色あせたドレスとは異なり、真紅の生地の白いフリルが付いた可愛らしいドレスに身を包んでいる。装いが変われば印象も変わる。これなら亡霊系のモンスターとは思われないだろう。


「そうよ。リレイが持っていた人形の服をあたし用に作り直したみたい。埃まみれじゃない服って良いわね」


 シャルロッテはテーブルの上でしゃらりんと回転して見せた。フリルの付いた服の裾が揺れる。彼女は新しいドレスを気に入っていた。


「いいなー。デイジーもそういうお洋服着てみたーい!」


 デイジーがはしゃいで椅子に座りながら足をばたつかせる。


「この村にはお洋服屋は無いのかしら?」


 シャルロッテはまだポポカカ村の事には詳しくなかった。


「そうなのよ、シャルロッテ。私達の村から離れた少し遠くの町まで行かないと、良い仕立て屋もいないわ。可愛らしいお洋服なんて夢のまた夢なの!」


 リレイが残念そうにする。彼女も可愛い洋服屋が村にあればいいのにと思っている一人だった。


「それは大変ね。アシュリーがすごかったのね」


 シャルロッテはアシュリーの洋服を見る。たしかに彼女の服はオーダーメイドなのでよく出来ている。


「ふふふ。そうね。しかし、村に洋服屋がないというその問題は大きいですわね。わたくしには無縁の悩みでしたので、これまで気が付きませんでしたわ。お父様に進言しようかしら」


 アシュリーの親は富豪で発言力もある。あるいは村に洋服屋ができるかもしれなかった。


「アシュリーのお父さんって村長にも物申せるからすごいよねー!」


 デイジーが感心している。自分の悩みを解決しようとしてくれているアシュリーに対しても、である。


「権力者が村の為に尽力するのは当然ですもの」


 アシュリーが得意げになる。彼女はおだてに弱かった。


「着飾った姿なら、レストランのコックのアレックスも、デイジーに見とれてくれるかなぁ?」


 デイジーはまた違う男の名を出した。彼女は惚れっぽい性格をしている。度々熱を上げる相手が変わるのだ。リレイもアシュリーも、そんなデイジーのことは良く知っているので、いまさら驚かない。


「あら、今はアレックスさんにお熱なんですの?」


 アシュリーが話に食いついた。


「アレックスさんは料理が上手だからすごいよねー! 私もこんなお料理できるようになりたい!」


 リレイはテーブル上に並べられたお菓子を見てそう言った。


「アレックスは人の為に料理をする事に一生懸命なのが良いわ! 『君のために特別に作ったデザートだ。これで君を蕩かしてあげるよ』って言われてみたーい!」


 早速デイジーの中で話が盛り上がっていた。その時、シャルロッテの瞳がきらりと光った。


「とても甘いデザートはあなたの方ね」


 シャルロッテがデイジーに合いの手を入れる。


「君を食べちゃいたいって? きゃー!」


 デイジーが興奮し、最高潮に盛り上がっている。シャルロッテは何気にデイジーと相性が良いのかもしれない。


「彼は仕事に誠実なのが素晴らしいですわね。付き合うのならそういう殿方でなければ」


 アシュリーは冷静に人物評価をする。


「そういうアシュリーのお付き合いしている男性も、遠方の街のお貴族様なんでしょ?」


 リレイはアシュリーに話を振った。


「えぇ。今は文でやり取りをするのが中心ですけれど、年に何回かはお父様に連れられて相手の御屋敷にご挨拶に行ってお会いしていますの。やや長距離恋愛なのが辛いところですわね。いつでも好きな時に姿を見ることができる人がうらやましいですわ」

「すごいなー。デイジー、長距離恋愛はできなそう。だって好きな人には毎日会いたいもん」


 デイジーが椅子に座ったまま足をぶらぶらしている。


「それが普通ですわよね。わたくしもそうなんですから。でも、だからこそようやく会えた時はそれはそれはもう嬉しいのですわよ。それはリレイもわかるんじゃないかしら?」

「えっ、私? 何で急に私の話になったの!」


 リレイがどぎまぎしている。


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