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リレイと不思議な道具達  作者: ペテン師Mark
湖畔を越える恋人達
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リレイの父親

 ある日、リレイは自室で机の前に座って暇そうにしている。

机の上にはリビングドールのシャルロッテがちょこんと座っていた。人形の目の前には本が広げられている。本を読んでいるようだ。彼女はリレイの本を借りて読むのが好きだった。退屈な倉庫暮らしから一転、刺激に満ち溢れた外での生活を満喫している。


「ねぇ、シャルロッテ。この間聞いた倉庫のアイテムの事なんだけれど・・・・・・」

「なぁに? あそこにはとても役立つ物がいっぱいあるわ。きっとリレイの役にも立つはずよ」


 人形はぱらりと本のページをめくった。


「そうそう。お父さんがどんな冒険をして、どんな秘宝を手に入れたのか知りたいわ!」


 リレイは目を輝かせた。彼女は自分の父親の事は知らないのだ。だからとても興味があった。どんな性格なのか。何をしているのか。母親からは冒険家だとしか聞かされていない。それ以上は何を聞いても彼はロマンを追い求めている男なの、で終わるのだ。


「そうねぇ。リキッドは遺跡探索を得意としていたわ。そこで先史文明に作られた高度なマジックアイテムを収集していたの。遺跡解読の為、彼は古代語を解析できる能力があったわ。それを用いて数々の遺跡を踏破しているの」


 シャルロッテは紐綴じをして本を閉じた。そしてリレイと向き合う。


「ふーん。遺跡を調べて何が面白いんだろう」

「高度な魔法技術がありながら彼らは滅んだ。その理由を知りたがっていたわ。リキッドは考古学者でもあるのよ。それでね。遥か東方の機械仕掛けの大回廊とか、北方の夢幻の霧の理想郷とか、大海原の果てにある雲まで至る大樹の孤島など、いろんなところの遺跡を最深部まで至ったの。そこらで取得した財宝をこの家の倉庫の中に放り込んであるのよ」


 シャルロッテはすらすらとリキッドの話を述べていく。身振り手振りで話を演出しながら話すので、彼女はとてもおしゃべりが好きなのかもしれない。


「そう。そこなの! 不思議なのは! また冒険に出るのなら、それら財宝を持って行けばいいじゃない! どうしてお父さんは財宝を家に置いたままにしているの?」

「あら、気になるの? リキッドはね、財宝の力で遺跡を踏破するのは誰にでも出来てしまう。そんなのはつまらないから置いていくって言っていたわ。この家を出て行った時はなにやら世界でまずい事が起こっているらしく、リキッドの力を求められて急遽出て行ったみたいだけど」

「私が生まれてこの方一度も家に戻った事がないの。一度くらいは顔を見たいな・・・・・・」


 リレイはしんみりと寂しそうにした。彼女が生まれる頃には既にいなかったのだから。姿絵も何も無いので想像すらできないのだ。だが、その時シャルロッテは意外な事を言った。


「そうね。リキッドの姿を見るだけならできるわよ。ええと、どこだったかしら」


 シャルロッテは水鏡のロープで鏡を作り、鏡扉の鍵でゲートを作り出した。そして中へと入っていく。

 リレイは身を乗り出して水鏡の中を覗き込んだ。シャルロッテが何かを探している。


「何? なにがあるの?」


 しばらくするとシャルロッテが鏡の境界から出てきた。手には壁掛けの鏡を持っている。


「はい、これ。遠見の壁鏡。これに知りたい相手を念じると、鏡にその人の姿が映るのよ」


 シャルロッテはドンと鏡を床に置く。はらはらと埃が落ちた。


「えっ。これに?」


 リレイは信じられないような目で鏡を見ている。そもそもマジックアイテムだと言われても、一見すると本当にそんな力を持った道具なのかが信じられないのだ。ただの古ぼけた鏡なのだから。


「物は試しよ。やってごらんなさいな」


 シャルロッテは鏡を壁に立てかけた。


「うーん。お父さんのことが知りたい・・・・・・鏡よ鏡よ鏡さん。私のお父さんの姿を映して!」


 リレイが願うと鏡は石を投げ打った水面のように揺れた。さざなみが立つ。やがて鏡はどこか遠くの光景を映し出す。そこにあるのは羽根つきの皮帽子を被った精悍な顔つきの男。

 リレイは映し出された光景に目を奪われる。男の人が遺跡の石壁の文字を解読していた。


「これがリキッドよ。大分ふけたわねぇ」

「これが・・・・・・お父さん」


 やがて鏡は再びさざなみが立ち、遠方の光景ではなくリレイの部屋の中を映すように戻った。


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