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リレイと不思議な道具達  作者: 神島世判
幸せの幻想
56/58

魔物VS魔神竜

「魔物だー!」


 人の叫び声。どこか遠くから聞こえてきた声にリレイが目を覚ます。


「ううん・・・・・・なにかしら?」


 パジャマ姿のリレイが寝ぼけまなこをこすり起き上がる。その拍子にこてんと床に横たわっていたシャルロッテも宙に浮かび上がる。


「誰かの叫び声が聴こえたわ・・・・・・なにかしら。窓の外がぼんやり明るいわね」


 シャルロッテが言うとおり、窓の外は夜であるのにどこかから赤い光が漏れている。リレイがカーテンを開けると、なんと村の中が炎上していた。


「ええっ! これはなに!」


 リレイの家の遥か彼方の遠景で、赤い炎が立ち上っている。時折人の悲鳴が聞こえてくる。


「さっき魔物が出たとか聴こえていたわよ」


 シャルロッテも宙に浮かびながら窓の外を見る。


「大変!」


 リレイは慌てて外着に着替え始めた。そして母親の部屋へと駆け込む。

 リレイが何度かドアを叩き、しばらくしてからようやくアレイラは現われた。


「なぁに、リレイ。どうしたの。外着なんか着て」


 まだ状況がわからないアレイラを前に、リレイは両手を振って慌てた。


「お母さん! 村に魔物が出たんですって! ここまで魔物がくるかも!」

「魔物が? どうしてこの村に魔物が入れるの!」


 アレイラは信じられないような表情で驚いていた。


「私、様子を見てくる!」


 リレイはそのまま駆け出していってしまった。


「あっ、ちょっと、リレイ! 危険だから近づくのはやめなさい!」


 そう叫んだアレイラの言葉はリレイには届いていなかった。


 

 リレイは夜の村の中を駆けた。明かりなどほとんど無い中、月と星の明かりを頼りに火災が起きている方角へ向かって歩く。炎の壁の向こう側に、巨大な何かが見えた気がした。

 漆黒の塊。夜の中にあってなお黒い塊が蠢き、周囲に炎を吐いていた。

 人々は恐怖の表情で逃げ惑い、恐れおののき、泣いている。事態は混乱を極めていた。


「なぜあんな化け物がこの村に・・・・・・」


 リレイの表情も恐怖で凍りついた。

(聴こえるか、リレイ。ヴェルダードだ。騒ぎは聞き付けた。今向かっている)

 リレイの心に響いてきたのは魔神竜の声だった。


「ヴェルダード! お願い、村を守って!」


(心得ている)

 リレイの遥か上空を白銀に輝く竜が飛び越えていく。そして竜は暗黒の塊の前に降り立った。


「ぐぉおおおおおおおおおお!」


 暗黒の塊は魔神竜を見て雄たけびを上げている。


「何の魔物かは知らんが失せるが良い。この村は我が庇護下にある」


 魔神竜は村に降り立ち、人々を庇うように立ちふさがった。


「がぉぉぉぉおおおおん!」


 暗黒の塊は突如奇声を上げて魔神竜に突進する!

 あたりに響く強烈な衝突音! 魔神竜は体当たりを受けてよろめいた。


「ぐぬぅうううう! おのれ!」


 魔神竜は至近距離から白銀のブレスを魔物に吐きかける!

 超高温が暗黒の塊を直撃する! しかし暗黒の塊は半身を溶かされるも尚も健在だった。あっという間に溶けた半身は元通りになる。


「がぁぉおおおおおお!」


 暗黒の塊は叫び声を上げて魔神竜に噛み付いた。


「ぬぅぅぅぅぅ! なんと言う強靭な魔物! かくなる上は!」


 魔神竜は咆哮を上げた。瞬間、魔神竜の体を中心にして、地に、そして空に魔法陣が描かれる。


「ぐわぁぁぁぁぁぁ!」


 暗黒の塊は絶叫を上げて魔神竜から弾き飛ばされた。


「強制転移の術式を受けるが良い! 失せろ!」


 魔神竜の猛々しい咆哮。魔法陣は赤く輝き、暗黒の塊の魔物を光で包み込んでいく!


「がおぉぉぉぉぉん!」


 暗黒の塊は空へと弾かれる! その勢いで彼方へと飛ばされていくが、途中で霧の様に霧散して消えていった。


「ぬぅ・・・・・・あれは生き物ですらないのか」


 魔神竜は相手の異変を見て唸った。


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