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リレイと不思議な道具達  作者: ペテン師Mark
麗しき人形のシャルロッテ
5/58

ヘクター

 と、遠くから男の子の声が聞こえる。


「おーい、三人とも!」


 遠くから声をかけて近づいてくる銀縁眼鏡をかけた男の子。


「あら、ヘクターじゃない」


 リレイが男の子の名を呼んだ。


「三人とも仲良くおしゃべりかい? 僕も混ぜておくれよ!」


 ヘクターはリレイ達と同年代の男の子だった。リレイと同い年の子供はデイジー、アシュリー、ヘクターの三人だけである。だから彼らは仲良しだった。


「なんだ、ヘクターかぁ。つまんないの。たくましい体を持つ漁師のガルドが来てくれればよかったのに」


 デイジーはあからさまに落胆して見せた。


「あら、デイジー。今はガルドにお熱なのね。たしかに彼は働き者で頑強な体を持つ頼りになる殿方ですものね」


 アシュリーがデイジーに同意して見せた。


「でしょでしょー? 湖に船を浮かべて鋭い視線で沖を見る姿がいけてるのー!」


 デイジーが大はしゃぎをする。彼女は恋の話をするときは非常に上機嫌になるのであった。


「ガルドさんかぁ。いつもあの人の獲ってくるお魚のお世話になっているね」


 リレイもデイジーの話に混ざる。


「そうそう! いつかデイジーに『君の為にお魚を獲ってきたよ、子猫ちゃん』とかぁ、親密になってやってくれないかなぁ、かなぁ!」

「子猫だけにお魚なのですわね」


 シャルロッテが笑いどころと思い、デイジーの話に突っ込みを入れる。女子三人は「たしかにそうだねー!」と大笑いだ。ヘクターだけが話についていけない。恋ばなはできないのだ。・・・・・・ふと、ヘクターは地面の人形がしゃべったことに気が付いた。


「ん。今、この人形がしゃべったように聴こえたけど・・・・・・」


 ヘクターが屈んでシャルロッテを見た。シャルロッテはくるりとヘクターのほうを向く。


「あたしシャルロッテ。今日からみんなのお友達になったの。よろしくね、ヘクター」


 シャルロッテは裾をつまんでお優雅にお辞儀をする。


「えっ、人形が動いた。しゃべっている!」


 ヘクターは先ほどのデイジーやアシュリーと同じような反応を返す。


「リビングドールのシャルロッテさんですわ」


 アシュリーがシャルロッテを紹介すると、ヘクターは大層驚いて尻餅をついた。


「ひえええええ! 亡霊のとり付いた人形じゃないか!」

 

 ヘクターは腰を抜かしながら、一目散にその場を逃げ去って行った。


「何よ。ヘクターったら。そんなに驚かなくても良いのに!」


 リレイは怒った。シャルロッテに失礼じゃないかと怒っているのだ。


「臆病なヘクターだもの。仕方ないわ!」


 デイジーがヘクターを小ばかにする。彼女はよく年上男性達とヘクターを比較しては馬鹿にしていた。


「彼の反応も当然といえば当然ですがね。さ、今日はもうお開きにしましょうか。日も暮れて来ましたわ」


 アシュリーが言うとおり、時刻は既に夕方となっていたのでおしゃべり会は終わりとなった。

 リレイとシャルロッテは自宅である赤いかさのきのこの家に帰る。扉を開けると夕餉の匂いがした。アレイラは既に帰っていたようだ。


「お母さん。ただいまー!」


 リレイが元気に声をかけると、アレイラはキッチンから振り返る。


「おかえりなさい、リレイ。あら、その子は確か・・・・・・」


 アレイラは宙に浮かぶシャルロッテに気が付いた。


「お久しぶりね、アレイラ。娘さんを出産するからとしばらく安静にしていた時以来かしら」

「そうね。いままでどうしていたの?」

「リキッドに倉庫へ放り込まれて封印されていたわ! あたしを忘れるだなんて、ひどいじゃない!」


 シャルロッテは怒っているような身振りをした。顔は表情が変わらないのでわからない。


「あら、ごめんなさい! リキッドは何も言っていかなかったから、てっきり一緒についていったのだとばかり!」

「お母さん。シャルロッテとお友達になったのよ!」

「それは良いわね!・・・・・・ところで開かずの間にいたと言っていたけれど、それはリレイが開かずの間をあけたということかしら?」


 アレイラは娘の所業を見逃さない。


「あっ・・・・・・」

「めっ! ダメって言ったじゃないの! これからはあの扉を開けてはいけませんからね!」


 アレイラはきつくリレイを叱った。リレイはしょんぼりする。


「はーい、おかあさん」

「アレイラ、あの扉を開けなければいいのね?」


 シャルロッテが確認をした。


「ええ。あそこには何があるのかわからないもの。リキッドが帰ってくるまでは封印の札をしたままにしないと」

「ふふふ、わかったわ。その約束、あたしがリレイに守らせるから安心して! 封印札をはがして立ち入らなければいいんでしょ?」


 シャルロッテは不敵に笑った。なにかを企んでいるようだった。


「さ、それではお夕飯にしましょ。今日から賑やかになりそうね!」


 アレイラはもう切り替えたようだ。どんぐりをペーストして作ったパンをもってくる。賑やかな晩餐が開かれるのだった。あたらしい家族が増え、昨日よりも明るい雰囲気となるのだった。




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全十三話構成にてお送りいたします。

お気に召していただけましたならば、是非ポイント評価、ブクマ、ご感想などよろしくお願いいたします!

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