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リレイと不思議な道具達  作者: 神島世判
廻る太陽と月の円環
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意味深な二人

 太陽が輝く時、月もまた輝く。月の光は太陽の光。太陽無しでは輝けない光。ならば月とは何であるのか。己の力では輝けない寂しい星。


 リレイ達は原っぱで玉蹴り遊びに興じていた。ゴムで作られた西瓜よりも大きな赤い玉をみんなで蹴り転がす。ボールは勢い良く弾みながら草の上を転がっている。それを取り囲んだ子供達が交互交互に蹴っている。

 ぼんと言う音とともに勢い良く蹴られた玉が宙を舞う。アシュリーが強烈なシュートを放ったようだ。リレイが後ろを確認しながらボールを追いかけ走る。しかし間に合わず、ボールはてんてんと地に落ち転がっていった。アシュリーがボールを強く蹴りすぎたようだ。


「アシュリーは手加減しないんだから! みんな行くよー?」


 ボールに追いついたリレイがボールを足で止めてから後ろに下がる。そして助走をつけて走り出してボールを蹴り飛ばした。

 ぼむっという音とともにボールは高く上がる。空を飛ぶボールは放物線を描きながら、どんどんと高度を落としていく。

ボールの下にはヘクターがいた。だが、彼はデイジーを見つめてぼーっとしている。やがてボールは彼のところへと落ちて行き・・・・・・ぼがっ! ボールがヘクターの頭に直撃した。


「ぐあっ!」


 ヘクターがもんどりうって地面に転がった。地面から抉れた草が舞い上がる。


「ごっめーん! でも今のって私が悪いー?」


 リレイが謝りながらヘクターに駆け寄った。アシュリーとデイジーも駆けつける。


「いたたた・・・・・・」


 倒れていたヘクターが上半身を起して頭をさすった。


「あんた何やってんのよ・・・・・・」


 デイジーが呆れた様子で倒れたヘクターを見下ろす。


「えっ、あっ、あっ・・・・・・」


 ヘクターがデイジーを前にしてうろたえている。明らかに様子がおかしい。


「ちょっとヘクター。あなたどうしたの? 打ち所が悪かったのかしら?」


 アシュリーがヘクターを心配する。しかしヘクターはどこかよそよそしくしているばかりだ。・・・・・・どうも明らかにデイジーを意識しているみたいであった。


「いや、なんでもない・・・・・・」


 ヘクターは立ち上がり、服に付いたほこりを叩き落とす。


「なんでもないようには見えないけれど・・・・・・ヘクター。デイジーと何かあったの?」


 流石のリレイもこの二人に何かあったのだと感づく。


「あっ。いえ、何でもないの! こらっ、ヘクター! あんたしゃきっとしてなさいよ!」


 デイジーがヘクターの膝の裏をげしげしと蹴り飛ばす。


「痛い痛い! ちょっ、やめてくれよ!」


 ヘクターが慌ててデイジーから離れて逃げる。どうも二人の様子が変なのだけはリレイとアシュリーにも伝わった。

 何の事は無い。ヘクターはデイジーにキスされて以来、彼女を意識しすぎるあまりに直視できなくなっているだけなのだ。


「ねぇ、本当に何かあったの?」


 リレイは何かあった事を確信する。そして聞いてよい話なのかどうなのかを迷っている。


「ごめん。僕はもう帰るよ」


 ヘクターはその場に居辛くなって去って行った。その後姿を見送る三人。


「ねぇ、デイジー。わたくし達、友達ですわよね?」


 アシュリーがデイジーに詰め寄った。


「そうだけれど、何かしら?」


 デイジーはアシュリーから視線をそらした。


「お言いなさい。何がありましたの?」


 アシュリーはデイジーの肩を掴んで。きつい視線で見つめる。


「ちょっと喧嘩が行き過ぎただけですわよ。おほほほほほ・・・・・・・・」


 デイジーは答え辛そうに話をはぐらかしている。目が泳いでいるのでごまかしきれていない。普段の彼女は誰それに恋しているとおおっぴらに吹聴していたが、ヘクターとの事になった途端に秘密主義者になっていた。


「わかりました。どうあっても話せないと言うのならばしかたありませんね。今はそういう事にしておきましょう」


 アシュリーはデイジーを問い詰める事を諦めたようだ。だが、とてつもなくデイジー達のことが気になっているようだ。アシュリーもリレイも直感的に何かただ事なら無いことが二人の間にあったことはわかっていた。だからそれを知りたいと言う好奇心を抑えることをできずにいる。それでもデイジーは頑なに口を割らない。


「そうだよね。言いたくなったらきっと教えてくれるよね?」


 と、リレイもその場は諦めざるを得なくなっている。


「そ、そうなの! いまはまだ話せないの! ごめん。用事を思い出しちゃった! またね!」


 デイジーは逃げるようにしてその場を去っていく。彼女の姿はあっという間に見えなくなっていった。


「うーん。これは確かに何かがあったみたいだね!」


 リレイはその何かが確実に面白い出来事なのでは無いかと感じている。


「ねぇ、リレイ。デイジー達の喧嘩なんていつものことでしょう? それでも今日みたいにどこかよそよそしい雰囲気になった事はありませんでしたわよ?」

「いまは静かに見守ろうよ! 話せるときになったらきっと話してくれると思うし。なんだか自慢げに話してくれる時が来るような気がする」

「それもそうですわね。あのデイジーですし、隠し事をしたままでいるなんてありえませんわね」


 リレイとアシュリーは納得しあって、その日は解散となった。ボールはアシュリーが回収していく。彼女の持ち物なのだ。


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