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リレイと不思議な道具達  作者: 神島世判
それは希望か絶望か
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竜との契約

 リレイはシャルロッテから宝玉を受け取った。そして宝玉を天へと掲げる。


「封じられし災い、開放する!」


 リレイが叫ぶと宝玉は真っ赤な閃光を上げ始めた。暴風がリレイを中心に巻き起こる。周りのものが吹き飛ばされる。シャルロッテもゴロゴロと転がっていった。やがて宝玉から一筋の光が放たれる。光は巨大な渦となり、やがて大きな大きな竜の姿へと変わっていった。後に残されたのは白銀の竜。竜はリレイの目の前に立ち上がった。


「出られた! やっと出られたぞ! 永かった・・・・・・しかし、ようやく我は自由となったのだ!」


 白銀の竜が歓喜の咆哮を上げる。その様子に村人達は恐れおののき、散り散りに逃げ出していく。


「あ、あの・・・・・・」


 リレイはおずおずと進み出る。話しかけてよい相手なのかも良くわからずに。


「あぁ、この状況を何とかするのであったな。村まで火の手が来ないようにすればよいのであろう?」


 白銀の竜はそう言うと翼をばさっと広げて天へと飛んだ。そして天空から白銀のブレスを吐く! 閃光のブレスは手前の森の木や草を吹き飛ばして行った。そして森と村の間に何も無い更地を作った。


「こ、これならだいじょうぶなの?」


 リレイはあっという間の出来事に放心している。そうこうしている内に白銀の竜は地上に降り立った。


「これだけではまだ不安があろう。どれ、嵐を呼んで雨を降らせるか!」


 白銀の竜は天へと向かって方向をあげる。竜の体の回りに巨大な魔法陣が出現する。ドラゴンマジック。原初の力に干渉する強大な魔力が周囲に満ちた。あっという間に空に雨雲があつまり、やがて大粒の雨が降り出した。雨はとめどなく山火事の森へと降り注いでいく。


「す、すごい! これなら!」


 リレイは喜びの声を上げた。火はどんどんと弱まっていっているようだ。森の手前まで火の手が回ってきていたが、それもやがては消えていく。

 山火事は完全に鎮火された。


「どうだ我は。やるであろう!」


 白銀の竜は得意げになっているようだ。


「あ、ありがとう! あの・・・・・・あなたは一体・・・・・・」


 リレイは白銀の竜へと問いかけをする。


「我か? 我は魔神竜ヴェルダード。かつて三大陸の覇者として君臨していたドラゴンよ」

「ヴェルダードさん・・・・・・ありがとう、ヴェルダードさん!」


 リレイは感謝を述べながらヴェルダードへとひっしと抱きついた。


「リ、リレイちゃん・・・・・・そのドラゴンは一体・・・・・・」


 恐怖の表情を浮かべた村人達がリレイのそばまでやってきた。リレイがヴェルダードと接しているので、もしかしたら大丈夫な相手なのだろうかと思って近づいてきたようだ。


「ヴェルダードさんは山火事からこの村を救ってくれたの!」

「ヴェルダードって言ったら御伽噺のあの魔神竜か! あの狂える魔神竜!」


 村人達は恐怖の声を上げて後ずさる。


「ヴェルダードさんは反省しているから大丈夫だよ!」


 リレイは村人達へと怒りをあらわにした。助けてくれた恩人になんて事を言うのかと。


「我の事はヴェルダードでよい。確かに我は大昔悪さをしていた。今なんと言われようがそれは仕方あるまい。だが、我は心を入れ替えたのでな。これからはそなたの忠実なしもべよ」

「えっ、折角自由になれたのに・・・・・・」

「いや待て。まずは正式に汝の名を聞こう」


 竜は少女の前に頭を垂れた。


「私? 私はリレイ・オースティン」

「リレイか。良い名だ。さぁ、正式似契約は交わされた。リレイは宝玉を通じて我を使役する力を得たのだ」

「使役って・・・・・・どうして恩人にそんな・・・・・・」


 リレイは遠慮がちに言った。


「宝玉に封じられた我はもはや真の自由は得られぬ。契約神の力で宝玉から解き放った者へと絶対服従せねばならんのだ」

「そんな! 私はそんなことしたくない! ヴェルダードも悪い事をしたのを反省したなら、自由になっていい!」


 ヴェルダードはその一言を聞くや否や二本の足で立ち上がった。


「そうか! そなたは我に自由を与えるか! ならば我も自由意志でリレイとこの村の守護者となろう! それが我が意我が望み!」

「えっ、そうしたいと言うのなら良いと思うけれど」

「決まりだな! 我、ヴェルダードの名において宣誓する。リレイと・・・・・・ええとこの村の名は?」

「ポポカカ村だよ」

「我はリレイとポポカカ村の守護竜となろう!」


 竜が咆哮をあげた。

 周りの村人達が驚き腰を抜かした。にわかに村人たちがざわめきだす。


「えらいこっちゃ! リレイちゃんが魔神竜と主従契約を交わしおった!」

「あのリレイちゃんがヴェルダードの主に?」

「あぁ、この村の守り神様となると!」


 村人達は非常に驚いていた。竜は契約に対しては厳格な存在。その竜が少女と主従契約を交わしたというのだから。


「さて、我はあの山の頂から村を見守ろうと思う。必要ならば我を呼ぶと良い。リレイはもう既に我と心で繋がっておる。ではさらばだ!」


 ヴェルダードは翼を広げて空へと飛び上がる。そして村の側の霊峰へと向かって飛んでいくのだった。

 村を襲った災いから難を逃れ、こうして新たに村の名物が生まれた。伝承に語られる魔神竜が守り神の村、と。


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