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リレイと不思議な道具達  作者: 神島世判
それは希望か絶望か
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魔神竜の封印

 キッチンを出た先のリビングでシャルロッテと会った。


「あら、もう家事仕事は終わりかしら」

「うん。遊んできても良いって。だからお散歩にでも行こうかと。一緒に来る?」

「えぇ、今日はリレイが遊んでくれないから退屈だったわ!」


 シャルロッテがふわふわ浮かんでリレイの肩の辺りまで飛んできた。二人は家を出る。

 村の中もすっかり晩秋の空気で、皆が冬支度を始めようとしているようだ。どこの家も軒先に大量の薪を積んでいる。炊事と暖房に使うのだ。


「大分寒くなってきたね」


 リレイは空を見上げて呟いた。


「あたしは寒さを感じないからなんとも言えないわ」

「うーん。リビングドールってずるい!」

「おあいにくさま! ・・・・・・あら、なんだか村はずれが騒がしくないかしら」


 シャルロッテは遠方を見て呟いた。どうも人々があわただしく走っている。リレイは血相を変えている人を捕まえて尋ねた。


「あの、なにかあったんですか?」

「なにもかにも、山火事だ! 山火事が発生して火の手がこちらまで向かっている! 谷底の集落で逃げ場が無いこの村は大変な被害が広がるぞ!」


 男はそう言うとどこかへと走り去って行った。男が指差して行った方角からは確かに遠方に煙が上がっている。今はまだ遠いが。


「山火事? 枯れ葉や枯れ草があるから火の手なんてすぐにここまで来ちゃうよ!」


 リレイはおののいた。先ほどの男が慌てていた理由がわかったのだ。


「山火事では消し止める事もできないわね」

「ねぇ、シャルロッテ! 山火事を何とかできる魔法の道具は無いかしら!」


 リレイは一縷の望みをシャルロッテに託した。


「・・・・・・・・・・・・自然災害級の災いをなんとかするすべも道具も無いわ。ごめんなさい」


 やや沈黙があってからのシャルロッテの回答は、リレイが期待していたものとは違った。そこには絶望がある。どうあってもなんともできない問題はあるのだ。

 大人達が斧を持って山火事があった方角へと向かっていく。木を伐採して火が燃え移らないようにする為だ。それでも焼け石に水であろうが、何もしないわけにはいかない。村の人間総出で山火事に立ち向かおうとしていた。

 リレイ達は山火事のある方角へと向かった。そこはどこまでも森が続く場所。乾燥した葉や枝が大量にあるので、どんどん火は燃え広がっているようだった。村人たちが木を切り倒し始める。または下の枯れ草を刈り取って緩衝地帯を作り出そうと躍起になっていた。しかし火の手が回るのが早すぎるのと伐採が必要な範囲が広すぎるのとで、とても対応が間に合うとは思えなかった。


「どうしよう・・・・・・このままじゃあ村が燃えちゃう・・・・・・」


 リレイが不安な声を洩らした。慣れ親しんだ村が壊滅してしまう。たとえ人が湖の上に逃れたとしても、家が焼けてしまっては冬も越せなくなる。

 そうこうしている内に風も吹き始めた。乾いた風が更に火の手を強める。もはやなすすべも無く火に飲まれるのか。誰しもがそう思っていたことだろう。

 その時、リレイの頭の中に声が聞こえてきた。


「我を、我を解き放て」


 それは昨夜の夢に出てきた竜の幻影の声。


「えっ、どこ。どこなの?」


 リレイは声に驚いて周囲を見回した。しかし右往左往する人々ばかりで、あの幻影の姿は見えない。


「我は一時的に汝に宿った思念のかけら」

「思念? 開放すればどうなるの?」

「さすればこの窮地、回避して見せよう。我は宝玉の中に・・・・・・」


 竜の幻影の声はそれだけ告げると消えていった。


「なに、なんなの! どうすればいいの!」


 リレイはどうしたらよいかわからず硬直する。その異変にシャルロッテは気が付いた。


「急にどうしたのかしら?」

「わかんないよ! 急に声が聞こえたの! 我を解き放てって! そうすればこの状況をなんとかするって!」

「もしかして魔神竜の事かしら? でも、あれは凶暴だから封印された奴よ。だから開放しない方が良いってリキッドは言っていたわ」

「昨夜はなんだかいろいろあって反省したって言っていたよ! だから大丈夫だと思う!」


 リレイは自信を持ってそう告げた。


「それで大丈夫って、本当にそうかしら・・・・・・」

「何とか出来そうな人に頼むしかないよ! お願い、宝玉を持ってきて!」

「人じゃないと思うけれど・・・・・・いいわ。持ってくる」


 シャルロッテは腰から水鏡のロープを外して地面に輪を作り、出来上がった水鏡に鏡扉の鍵を差し込んだ。ゲートが作られる。シャルロッテはゲートへと飛び込んで行った。そしてしばらくしてから赤く光る玉を持って戻ってくる。


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