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リレイと不思議な道具達  作者: 神島世判
価値ある宝
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地震

 翌日。それは昼の事。リレイは部屋で本を読んで過ごしていた。シャルロッテは人形のように座り込んで動いていない。ただ暇そうにじっとしているだけで、シャルロッテはただの人形みたいになるのだ。

 その日も何事も無い平穏な一日のはずだった。しかし、突如地面が揺れ始める。ゴゴゴゴという地鳴り。強い地震だった。リレイの家はぐらぐら揺れる。元がキノコなので弾力はあるが、その分内部は振動する。激しい揺れが一分以上続いた。リレイは思わずベッドに飛び込み枕を被って布団にもぐりこむ。恐ろしい横揺れが何度も世界を揺さぶる。やがて揺れはおさまった。


「あー、こわかったぁ!」


 リレイが布団の中から飛び出して安堵する。部屋の物は本棚が倒れたりしてぐちゃぐちゃになっていた。・・・・・・シャルロッテの姿が見えない。


「むぎゅうううう!」


 なにか逼迫したような声が聞こえてくる。シャルロッテは倒れた本棚の下敷きになっていたようだ。リレイが慌てて本棚を起す。


「シャルロッテ、大丈夫?」

「大丈夫じゃなかったわ! なんて大きな地震なのかしら! こちらに来てから今までこんな事は無かったわ!」

「うちはまだまだ新鮮なキノコのおうちだから平気だったけれど、他のおうちは大丈夫かな・・・・・・」


 リレイは友人達を心配した。


「気になるなら村の様子を見てきましょうよ」


 シャルロッテの提案にリレイは頷き、二人で部屋を飛び出していく。



 村の様子は中々に大変だった。木で建築された家は柱が折れて圧しつぶれたところがあり、お金を掛けたであろうレンガの家に至っては大半が瓦解している。キノコをくりぬいただけのリレイの家はよほど安全だったようだ。村のあちこちで倒壊した家から人を救出しようとしていたり、物を回収しようとする人々の姿が見られた。


「なんて大変な事に・・・・・・」


 リレイは被害のひどい人々に心を痛めた。平穏な一日を送るはずだったのに、あっという間に惨劇となっていた。

 瓦礫が散乱した道を歩きながらリレイとシャルロッテは村の様子を伺った。やがて二人はアシュリーの家の付近を通りかかる。富豪の家であるためか、頑丈な石造りの家は無事だったようだ。だが、何か騒がしい。使用人たちが慌てふためいていた。

 リレイは使用人の一人を呼び止めた。


「なにかあったのですか?」

「大変だ大変だ! アシュリーお嬢様が地下のワイン貯蔵庫に閉じ込められた! 地震で貯蔵庫の出入り口が塞がれたんだ! 完全に出入り口は土砂で埋もれてしまった。このままではお嬢様が危ない!」


 使用人はそう言うといずこかへと駆けて行った。


「どうしよう! アシュリーを助けなきゃ! シャルロッテ、何か良い方法は無いかしら!」


 リレイはひどく動揺している。しかし、何かできる手立ては無いかと模索し、シャルロッテが良い魔法の道具を所持している事に賭けたようだ。


「土砂で埋もれたって言っていたわね。土蔵ならばいい道具があるわ。それだけではどうにも出来ないかもしれないけれど・・・・・・良い使い方がなにかあれば」

「なんでもいいわ! アシュリーを助けられるならなんだっていい!」

「待っていらして」


 シャルロッテは水鏡のロープで鏡を作り、鏡扉の鍵で転移用ゲートに変える。そして飛び込んで行った。しばらくしてみすぼらしい一着の服を持ってくる。


「シャルロッテ! 服なんかでどうするの?」


 リレイはシャルロッテが目的と違った変わった事をしていると思い、ひどく混乱する。


「これがあれば大丈夫よ。これは土の中に潜る事ができるようになる服なの。これを使えば少なくとも地下の空間まではいけるわ。ただ、それでも中に出入りできるのは一人だけかしら」


 シャルロッテは服を一着しか持っていないのだ。


「あるよ! いい方法があるわ! それで十分!」


 リレイはシャルロッテから服を受け取ると、今着ている服を脱ぎ捨ててその場で着替えた。恥じらいは無い。友人を一刻も早く助けたいという思いがあるだけだ。

 そしてリレイは地面にあった水鏡のロープと鏡扉の鍵を手にしてアシュリーの家へと向かった。

 アシュリー家では青ざめた人々が右往左往していた。そこにリレイが通りかかる。


「地下の貯蔵庫はどちらですか?」


 リレイの剣幕に圧されながら使用人は家の端を指差す。リレイは即座に駆け込んでいく。そして地面の上から、潜りたいと念じたとたんにどぷんと地面へと潜りこんで行った。それはまるで水に潜るように。


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