人の心のすれ違い
そのおしゃべり会からの帰り道。リレイとシャルロッテは村唯一の学校前を通り過ぎる。普段は年少者や年長者組みがいるので賑やかだ。しかし、その日は年長者組みの女子の集まりがなんだかいつもより騒がしい。
一人の女子が赤毛の女の子を突き飛ばした。周囲の女の子達が、突き飛ばされた女の子を囲むように立っている。
「サティア。あんたまだレスティの側をうろついているの? ちょっとやめてもらいたいのだけれど」
サティアと呼ばれた女の子が困り顔をする。
「レスティは友達だから・・・・・・」
サティアはぽそぽそっとしゃべった。
「友達友達って、あんたレスティとはご近所なだけじゃないの! いつもべたべたくっついてめざわりなんですけど!」
サティアを責める女の子は、サティアが友達という言葉を発した途端にとても不機嫌そうな表情をした。
「だ、だって本当の事だから」
サティアが食い下がると、相手の女の子は益々険悪な表情に変わっていった。
「邪魔だって言っているのよ!」
女の子がサティアの頬を平手打ちした。パァンという音が鳴る。サティアはよろめいて地面に座り込んだ。
「わ、わたしは何も悪くないのに・・・・・・」
「あんたは存在自体が罪なの! なぁに、その焼けたような赤い髪の色! みっともないったらありゃしないじゃないの!」
周囲の女の子達もやいのやいのと囃し立てる。
それを見ていたリレイは険しい表情をした。
「いじめだ・・・・・・」
「あらあら。やぁねぇ。人間って。でも誰かを嫌うっていうのはとてもエネルギーを必要とする事よ。何かしらの利害関係での衝突でもあったのかしら。そうでなければ、人はあそこまで苛烈にならないわ」
シャルロッテは冷静に状況分析をしていた。サティアと呼ばれた子と、いじめの先方に立っている女の子の関係性に着目しているようだった。
「理由なんて関係ない。止めなきゃ!」
リレイはいても立ってもいられず、女の子達の輪の中へと飛び込んで行こうとする。すると、
「待ちたまえ、君たち。何をやっている!」
男の子の声が響き渡る。少年が駆け込んできて、サティアといじめっ子の女の子の間に割って入った。
「レ、レスティ。違うんですのよ! ちょっとサティアさんと意見の食い違いがありまして、議論に熱中しすぎたんですの!」
いじめっ子が慌てて取り繕いだした。
「リズ君、一体どうしたんだと言うのかね。周りの子達も! さぁ、サティア、立てるかい?」
レスティと呼ばれた少年がサティアを立ち上がらせる。
いじめっ子の名はリズと言うようだった。そのリズが気まずそうにしている。
「いえ、もう用件は済みましたので結構です。そうですわね、サティアさん?」
リズはサティアをぎろりと睨んだ。
「えっ、あっ、はい・・・・・・」
サティアはおずおずと同意する。どうも気の弱い女の子のようだった。
「ではごきげんよう。皆さん、行きますわよ」
リズは取り巻きの女の子達を引き連れて去って行った。
「サティア。大丈夫だったか?」
レスティがサティアを気遣う。
「えぇ、わたしは大丈夫。だから気にしないで・・・・・・」
サティアはレスティから離れた。下手に近くにいては、またいじめにあうからだ。
「・・・・・・・・・・・・そうかい」
あまり大丈夫そうではなかったようだが、当の本人が大丈夫と言う以上はレスティもそれ以上は何も言えなかった。彼はサティアを気にかけながらもその場を立ち去った。




