錬金術のアクセサリー作り
リレイが自室でレジンアクセサリー作りをしている。複数の液剤を混ぜて作る二液性レジンである。溶液を容れる型に樹脂を流し込んでいく。後は時間を掛けて硬化するのを待つだけだ。様々な形の型に様々な色の液体が満たされている。型には紐を通す穴もかたどられており、後から加工する必要が無い作りとなっていた。
「何をしているのかしら?」
シャルロッテが興味深そうにリレイのやっている事を覗き込む。
「ペンダントに使う飾りを樹脂で作ってるの」
「あら、変わった道具を使うのね。この村にそんな物を売っているお店があったかしら?」
シャルロッテは頬に指を当てて不思議そうにした。彼女の言うとおり、そんな手の込んだ道具を売っていそうな店はない。
「えぇ、無いわ。ステラおばさんの雑貨屋にもね。これはジェバンニさんが売ってくれたの」
「ジェバンニさん? あぁ、リレイが好きな男の人ね?」
「今はそういう話じゃないから! ほら、ジェバンニさんは行商で、遠くの地の変わった物を取り扱っているの。これもその一つ。錬金国家で作られた装飾品をハンドメイドする物なんですって!」
「それはすごいわね。色とりどりで綺麗。あたしも欲しいわ!」
「出来たら一個あげる! 色は自分で付けたんだよ。これは自分の欲しいアクセサリーを自分で作るって言う素敵なアイテムなの! 出来たら一つあげるね!」
シャルロッテがもろ手を挙げて喜ぶ。顔の表情は笑顔なので違和感は無い。
「やったわ! あたしもペンダントが欲しい!」
「はいはい。固まるまでもう少し待ってね」
リレイは型を机の端に置いて蓋をする。
「世の中には面白い物があるのね。良いわね。自分を飾る綺麗な何かを自ら作るって。欲しい形、欲しい色合い。なんでもできるじゃない」
「私もジェバンニさんの商品の中にこれを見つけて、これだこれしかない! 買わなきゃ! って思ったの」
「よその国にはもっといろんな物があるみたいね。あたしもそのジェバンニさんやリキッドみたいに冒険してみたいわ」
二人できゃっきゃとしていると、そこに階下から母親の声が聞こえてきた。
「リレイー? ちょっとお使いに行ってきて頂戴」
「はーい、お母さん。・・・・・・ちょっと出かけてくるね」
リレイはぱたぱたと階段を下りていった。
「はいこれ。ステラおばさんのお店で、この紙に書かれた物を買ってきて頂戴」
アレイラがリレイに代金とメモを渡す。
「お買い物をするのに少し代金が多いよ?」
リレイが受け取った代金を数えてメモと見比べている。
「あぁ、それはね。余った分はお小遣いにしていいから」
「やったぁ!」
リレイは喜び家を駆け出していく。彼女が向かうのは村の中央にある雑貨屋。その雑貨屋は巨大な木の虚に作られていた。大きな枝に「ステラの雑貨屋」と木の板の看板がぶら下がっている。
お使いに来た少女が店の扉を開けると、からんころんと鳴子が鳴る。その音に店の中にいた年老いた女性と、二十歳前後の男が振り返る。
「あら、いらっしゃい。・・・・・・ヨーゼフ。お客様が来たから話は後よ!」
女性は男性に声をかけた。
「はんっ! こんなしけた店をいくら続けていたって何も変わりやしねぇよ!」
ヨーゼフが悪態をつく。
「なんて事を言うんだいっ!」
「本当の事を言ったまでだ! 俺は村を出て金山で一発当ててやる!」
「なぁにが一発当ててやるだい! お前みたいなのはごまんといるよ! どうせ現実を知って帰ってくるだけさね!」
女性は拳を振り上げた。
「このくそババア! 俺は絶対成功する! 成功してみせる! わかってくれだなんて誰が言うかよ!」
ヨーゼフは店を駆け出して出て行く。




