The story ccontinues, it's only the bigininng.
ーーー『愛の繭症候群』調査記録ーーー
この六双市では、「まるで繭に包まれている蚕のように体を丸めて眠ったまま目覚めない」という症例が少しずつ増えてきている。
共通点として『愛の繭』という歌を聞いている。というのが挙げられたが真意は定かではない。
発症者は常に眠そうにしており、だんだんと傾眠がみられる模様。
この『愛の繭』はネットにも掲載はされておらず口伝でのみ伝わる歌で、歌の内容は発症した者にしか知らない為、調査不可能。
___冷たい
ここはどこだろう
目を開けて辺りを見渡すと、どうやら遺跡跡のような場所らしい。
なぜ僕はこんな所に、しかも大きな水溜まりの中で寝ていたんだ?
考えようとするが、頭がぼーっとする。凄く綺麗で澄み切った空気に疑問が吸い込まれて行くようだった。
僕は水溜まりの真ん中で周りを見渡す。
『おいで』
突然声がした。
靄かすみがかっていた僕の意識が突然冴えるほど、ハッキリと澄んだ声。
振り向くと遺跡の瓦礫がれきに少女が座っている。
肌も白く、ふわりとなびく真っ白な髪は膝まである。目を奪われる。光と水の反射で髪がキラキラ輝いていた。しかし顔がはっきり見えない。
『____おいで』
また呼ばれた。 君は誰?どうして僕達はこんな所に?そう聞こうにも声が出ない。 ただ、口をパクパクと動かしただけだ。
戸惑っている僕を見ていた彼女は、歌い始める。
子守唄のような、まるで彼女に抱まれているかのような心地だった。
急に意識が遠のく。
………体が重い。
彼女は歌を止めてまた僕を見た。
見つめ合っていると
『___またおいで』
彼女が言う。また?またっていつなんだ? 君の名前も知らない、待って!
そう言いたいがやはり声は出ない。
今度は目の前が霧がかかってきた。
真っ白な彼女は直ぐに霧に溶け込んでしまう。
彼女の歌声だけが響く。
最後に彼女が何か言っていた気がしたが、分からなかった。
「…い…起き……」
誰かが僕を呼んでいる
「…やく……きろって…!」
まだ、彼女の名前を聞いてないんだ。
戻らないと…。
「ほう?どこに戻ると言うんだ?」
また違う人の声だった。しかし、とてつもなく聞き覚えのある声。
「やぁ、おはよう。睦希くん。」
顔を上げると世界史の不知火先生…、常に無表情で高身長、更に声にも圧力を感じる故に女子生徒から怖がられている。
隣の席を見ると、友人の霧也が顔を覆っている。
「さて、どうしたものか、睦希くん。」
そこから授業が終わる30分ほど、僕だけに質問を投げかけてくるので、不知火と2人で授業をやっているかのようだった。
授業が終わり、隣のクラスメイトが声をかけてきた。「聞いたぜ睦希ぃ、災難だな!!」学年の中で一番遊び人な同級生だ。
「お前だっていつも寝てるって聞いたぞ…。」霧也は呆れて言う。
「俺シラちゃんの授業中寝てるのはいつもの事だからな!でも珍しいな、睦希が居眠りなんて。」
「確かにな。徹夜でもしたのか?」
「いや…特に何も。」
遊び人君は考えをフリをしてたが「ふーん…まぁいいや。『聞き手屋』やってくれるだろ?」と言って親指でベランダを指す。僕は霧也に目配せして二人でベランダに向かった。
「さて、君の経験を教えて?」
僕がそう言うと、彼は語り始める。僕はゆっくち目を瞑り、彼の言葉に耳を傾ける。
____俺、いつもみたいに放課後のベランダで校庭見てたんだ。
「何か悩み事?」
って。
後ろから声かけてきたんだよ。ショートカットで茶髪の女の子がさ。
…こんな奴うちの学年に居たっけ?って思い出してみたけど、全然思い出せなくてさ、
「お前…会ったことある?」って聞いたら
「いや?ないよ。でもあんた目立つから。」って。
まぁ確かに、ほぼ毎日あのベランダに居たら目につくよな。
でさ、
「『愛の繭』って知ってる?」
って聞いてきてさ。
あ、俺に気があるんだなって思ったんだよ。でもさ、知っての通り俺の好みってハッキリしてるじゃん?
「何ナンパ?ん~、お前じゃなぁ。」って言って、ついその子の顔からチョット視線下ろしちゃったんだよ。
あ、でも結構顔は好みだったんだぜ。スタイルも良かったし…ま、チョット足りないトコもあったけど。
んで、ため息つきながら「…で?『愛の繭』って知ってる?」ってまた聞いてくるんだよ。しつこいし、さすがに気味悪くってさ、「知るかよ。」ってきつく言っちゃたんだよ。
やべ、女の子なのにきつく当たっちゃったし気が強そうだったから怒られるかなーと思ったんだけど、「そっか。」って言ってどっか行っちゃったんだよ。
「____それだけ。ワケ分かんねぇよな。」
僕は目を開けて「ありがとう」とだけ言った。
「じゃあ今度は俺の番。…そうだな。最近女の子たちに人気の店ってどこ?もしくはアクセブランド!」
彼は自分が話してた時よりも乗り出し気味で聞いてきた。
僕は記憶を遡る。
「うーん…最近聞いたのは、C区にある喫茶店かな?通販で売ってるそこのハンドメイドアクセサリーを気に入って買ってる子も居たよ。それに、店頭販売しかしてない商品もあるみたい。あと、バス停より距離があるからお店に行く子はまだ少ないかな。」
「なるほど、じゃあ今が狙い時ってワケだ…幸い俺にはバイクがある…。学年でバイクを持ってるのは俺だけ…!」
くぐもった笑いを上げる彼は何かを企んでいるようだ。…いや、何かなんて想像するまでもない。
タイミングよくチャイムが鳴る。
「…楽しんで。さ、戻ろう。」
その後別の子から聞いたけど、その日一日中彼は不敵な笑みを浮かべていたらしい。
おいで おいで 愛しい人よ
私の胸に 貴方の繭に
貴方の想いを私に教えて
アナタ アナタ 愛しいアナタ
僕らの間の 壁は失くそう
共に包まれ眠りましょう
俺だ 俺だ お前のモノだ
お前を迎え 共に連れ行く
俺は手で惹き導こう
『愛の繭』ーーー冒頭ーーー
私が夢見た朝。
私は気づいた、なんの変哲もない「時間」だったと。
6つの欲を出した者、夢の世界へに真夢が誘う 。
夢の世界は願えば叶う、欲は闇への案内人、欲しがる者は闇へと潜る、気付いた時には繭の中。
彼らが望めば、私は歌い、誘う。ここはThenidre
この物語はまた。いずれ。